丁寧に洗われた苺をゴミ箱に捨てた日

今も、元バイト先で、私が急にやめたことをみんなが話しているのではないかと、考える。
自意識過剰だと思われるかもしれませんが、元バイト先は、数年前に辞めたひとの悪口で盛り上がっていたので、全然ありうる。

本当に誰かの悪口ってつまらない。
偽善ではない。悪口って、結論が出ているのに延々とみんな話すから嫌い。

「あいつは性格が悪い」「仕事が遅い」「気持ち悪い」それはいいんだけど、進展がない。そこに結論は出ない。言いっぱなし。
あいつは仕事が遅い、じゃあどうしようか、とかはない。

私は、誰かが嫌いでも、明確に敵意を表すことはない。
それが面倒なことだとわかっているから。
だから周りにあいつが嫌いだという意思表示もしない。
本当に嫌いな奴はずっと誰にも言えないし、秘密にしておく。

だから、たいして嫌いではないやつの悪口の話題になったとき、どうしたらいいかわからなかった。
そいつのことを嫌いなふりをして、みんなに同調するのが正解だと思った。
思ってもない悪口をいうのは簡単だった。
本当に思っていることを吐き出すよりも、めちゃくちゃ簡単だった。

そいつが昼休憩にみんなに真っ赤なイチゴを配った日。
みんな受け取っておきながら、イチゴを食べようとせず、男性社員に、別のチームの先輩に、ほかの部署の人間に押し付ける。
大きなイチゴ2つを目の前にして、私は食べるかどうか迷った。

同調圧力に負けた。
他人から生のイチゴをもらっても食べる気が起こらなかった。
そういう想像ができないそいつの愚かさに悲しくなった。
だからこういう扱いを受けるんだと思った。
すべてに振り回されることにうんざりした。
2つの大きなイチゴを、紙ナプキンに包んでゴミ箱に捨てた。

これから、仕事をするときに、ずっとそういう気持ちにならないといけないのだとしたら。
私はもう集団で生きていけない人間でもいい。こんな思いはもうしたくない。

何も気にせず、あの時「生のイチゴなんて渡さないでくださいよ。私こんなに熟れ切ったイチゴは嫌いなんです。もったいないから食べますけどね。」と、口に放り込める自分なら。

ごめんなさい。


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