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#40 社会人編 〜生傷が絶えない〜

昔から私は

「生傷が絶えない子だねえ〜」

と言われながら過ごしてきた。

幼少の頃の記憶では、確かに危険な所にも好奇心で足を踏み入れ結果大怪我をしたり、高所恐怖症なのにもかかわらず高い所から飛び降りたりとなかなかにクレイジーなことに興じていたので、必然的に怪我も多かったと思う。

しかし、これが大人になってからでもあるのは一体どういうことなのだろう。

そもそも自分が怪我をしている、ということに気がづいていないことも多い。

仕事から帰ってきて服を着替えていると、ふと自分の着ていた服が赤く染まっている。

これが映画だったらちょっとしたホラーなのだが、実際に体のその部分から血が出ているのだから驚きだ。

またある時は、ふと足が痒いなと思ってポリポリとかいているとなんだかポロっと撮れたような感覚がある。

見てみるとそれは割と大きなかさぶたで、撮れたかさぶたの元から血が流れているのだ。

意外と大きな傷口に、

「いつこんな怪我をしたのだろう?何も気づかなかった…」

など、怪我に関する経験だけでも数多くのエピソードがある。

子供の頃であれば、つばでもつけて入れば治るといって大した治療もしないまま過ごし、後から傷口が化膿してしまう失敗をしたり、赤チンと言って昔ながらの治療薬を傷ぐちに塗って、その痛みよりも赤チンの匂いによって悶絶したりと、その対処法にも様々な思い出がある。

しかし、大人になってからの怪我というのは日常的に怪我をしない分、いざなってみると周りの反応が予想以上で、びっくりすることもある。

それこそここ数年のこどだが、その時普通に仕事をしていた私はいつもの如くどこかできっと腕を引っ掛けてしまったのだろう。

左腕を切ってしまい怪我をしてしまったのだ。

それだけならたいしたいこともない日常の風景で終わったのだが、問題はそれに私自身も気づかず過ごしていたことと、それに気づいた人が私の服に血が滲んでいるのを見たことだった。

見た途端、

「え?春先さん、腕から血が出ていますよ。なんかしたんですか病院、病院行った方がいいんじゃないですか。」

と清々しいくらいの慌てよう。

ただ、私としてはあまりにもよくある光景なので、

「ああ、いつもなんですよ。」

と何気なく答えてしまった。するとその同僚が、

「いつもそんな大怪我しているんですか?いや、それ何かおおきな病気かもしれないですよ。病院行きましょう!」

と、なんだか大ごとになってしまったのだ。

実際は、単純な私の不注意からくる生傷なのだが、同僚からすると、

「これだけの傷を作って血も流しているのに、気づかずヘラヘラしているなんて何かおかしい…病気に違いない!」

となったかどうかはわからないが、それくらいの勢いで私に語りかけてきた。

しかし、これは少しまずい状況になった。今私が正気かどうかも疑われているかもしれない。同僚に納得してもらわないと、このままでは病院まで連れて行かれてしまう…。

と焦った私は切り返しとして、

「私生傷が昔から絶えなくて…おっちょこちょいなんですよ。だからちょっと手当てすれば大丈夫です。」

と、過去の自分の黒歴史を語りつつどれだけ傷をつくってきたかを懇々と説明する羽目になった。

どうして同僚に自分の黒歴史を喋らなければならないのか疑問ではあったが、納得してもらうためには仕方がない。

こうして私は連行されずに済んだわけだが、無意識に傷をつくってしまう体質はどうにかしなければならないと、つくづく痛感した。

それから私は基本的に自分の体の痛みに少しアンテナを張っておくことを意識し始めた。

今までは意識していなかったが、注意深く観察していると意外と色々なところでぶつけたり擦ったりしていたことに気づいた。

「そうか、こんな風にして私はいつの間にか怪我をしていたのか。この年になって大発見だ!」

と、自分の長年の謎が解明されて少し気分も晴れやかだった。

しかし、その後もまた問題を抱える。

怪我を治すためにとりあえず血を止めなければ、ということでよく絆創膏を張っていたのだが、傷の多さや大きさによって、絆創膏の消費がとんでもないことになる。体の至る所に絆創膏が張ってある。

もはや現代版フランケンシュタインなのかもしれないとさえ思った。

見た目的に見て、仮にも一社会人がこんな絆創膏だらけの格好で人前に出るのはあまりにも心象が悪すぎる。

そこで、次に試したのが液体絆創膏というやつだ。

あれなら絆創膏のようにいかにも“怪我しています”感は出ない。

よしよし、これで自然な感じになるぞ。

と思っていたのだが実際つけてみると、まず何より乾くまでがめちゃくちゃ痛い。

傷口に塩でも塗られているんじゃないかと思うほど痛い。こんな苦行があるのかと思ったほどだ。

しかしこれも自然に治療をするため、我慢だ我慢!

なんとかスポ根的な感じで自分を納得させたのだが、別に問題があった。

液体絆創膏が基本的に透明なので、傷口が見えてしまうのだ。

そりゃ一つ二つならまだなんとでもなる。

しかし、私の場合色々な所に液体絆創膏を塗ることになる。そうすると結局その部分は人に見られてしまうのだ。

なかなかうまく隠すというのは難しいもので、今も怪我が多い時にどうしたら良いか、苦戦している。

しかし、様々な経験を積んだことでこれだけは言える。

「傷を作る前に自分が怪我をしないように生活するべきだ。」

と。

子供でもわかる当たり前なことだが、今まで怪我で数々の失敗をしている私にとっては、大事な教訓である。

つい最近も紙の端で指を切ってしまったので、まだ教訓は生かされていないのかもしれないが、先日箱買いした絆創膏を使う日がこないことを祈って過ごしている。

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