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「虎に翼」は毎朝のエナジードリンク

この4月からの朝ドラ「虎に翼」がすごくいい。
 
ヒロインの子供時代はなく、初回から伊藤沙莉が登場なのだが、とにかくテンポが良い。ドンドン話が進んでいくし、全く無駄がない。
 
朝からテンポよく笑わせてくれたかと思えば、シリアスな部分はじっくりと描き、コメディとシリアスのバランス、緩急の付け方がとてもいい。
 
シリアスなお芝居にも安定感があって、コメディエンヌとしても抜群な伊藤沙莉の魅力が、遺憾なく発揮されている感じ。
 
初回に「この朝ドラは絶対面白い!」と興奮したのは、「あさが来た」以来だ。

それから、尾野真千子のナレーションもいい。
 
状況説明などの典型的なナレーションだけでなく、寅子の心の声も担当していて、伊藤沙莉の表情、お芝居と、尾野真千子によるストレートな心の(叫び)声がぴたりと合わさって、最強コラボになっている。
 
それに他のキャラクターも皆、濃い目で魅力的だ。
登場から早い段階でも、それぞれのキャラクターの個性がしっかり感じられる。
 
さらにこのドラマの登場人物には、対比とバランスの良さを感じる。
寅子は実に愛すべき主人公だが、当時の女性の一般的な考え方とは少し、いやだいぶズレている。
 
しかしそこに花江という、当時の一般的な考え方をする親友がいる。
でも彼女はけしてかわいそうな女性などではなく、たくましく、なかなかキャラ強めだったりする。
 
それから、恵まれた環境で生まれ育った寅子に対し、厳しい環境で生まれ育ち、法律は武器だと信じる男装の同級生よね。
 
よねの考える法律に対して寅子は、法律は毛布や傘のようなものだと考えた。
 
花江やよねは、寅子とは異なる環境にあったり、異なる考えを持つが、寅子もこのドラマも、決して彼女たちを否定しない。
 
彼女たちの存在により、自分とは考えや生き方が違う人を、切り捨てるのではなく、違う考えや生き方を認めよう。
そんなメッセージがこのドラマの根底にある気がする。
 
だから意識的に、または無意識に女性を傷つける男性も多々登場するが、男性陣がみんなクズとして描かれているわけではない。
 
例えば猪爪家の男性陣などは、しっかりしている女性たちとのバランスを取るかのように、皆ちょっと頼りなかったり、ズレていたりするが、彼らは寅子のよき理解者で、そしてしっかりとコメディ部分を支えてくれている。
 
それからもう1つ、主要な登場人物や物語の本筋以外でも、細部まで作りこまれているところがいい。
 
初回に出てきたエキストラにみえた女性や女の子が、オープニングにも出てきていて、何か意味がありそうだし、授業中に眠くて白目をむく同級生もいるし、職業婦人として生きる女性として思うところがあったのかしらと感じさせる、寅子の担任の先生のワンシーンもある。
 
そんな細かいところまで見ていなくても、本筋だけでも十分楽しめるのだけど、細部にも面白いところや考えさせられるところ、伏線?などがあって、なお面白い。

私にとって、一日の終わり、夜に地上波ドラマを観ることが、それを楽しみに一日を頑張る「晩酌」だとすると、いい朝ドラは、毎朝それを楽しみに目覚め、その日一日頑張れる力を与えてくれる、おいしいエナジードリンクだ。
 
いい朝ドラがあるということは、それだけで何と助かることだろう。

「虎に翼」はどうやらこれから序盤の山場のようだ。
 
いつ頃からかちょくちょく見かけていたおっちゃんが、「岡部たかし」という名だと認識したのは、「あなたのブツが、ここに」の時だった。
 
このドラマでの、憎めない運送会社の社長は、なかなかおいしい役で、初めて演者の名前が気になってクレジットを見た。
 
それからおっちゃんを見かける機会が増えた。
 
特に印象深いのは「エルピス」の、セクハラ、パワハラ満載の元報道マン、村井だ。
 
セクハラもパワハラも、それでけして帳消しになるわけではないけれど、報道マンとしての矜持、熱さを忘れてはいなかった村井さんは、かっこよくて、本当にいい味を出していた。
 
今や岡部たかしは、ドラマに欠かせないバイプレーヤーの1人、といっていいだろう。
 
そして4月から始まった「虎に翼」で、岡部たかしはヒロインの父親を演じている。
 
朝ドラは、日本のドラマにおいて今でも特別だ。
どんな大物でも、ヒロインの父親や母親には、基本1度しかならない。
 
岡部たかしは、その「ヒロインの父」を演じる1人になったのだ。
 
すごいぞ、おっちゃん!!

それにしても、寅子のお父さんが悪いことをするようには思えない。
このテンポの速さで、物語はこれから一体どんな展開を見せてくれるのか。
 
秋までは、朝のショートトリップで、毎日を乗り切っていけそうだ。
 
*この記事は俳優さんの敬称略にて失礼しました。

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