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だから転職はやめられない

社会という名の未知の世界に出て、早7年が経過した。
その中で、私は3回の転職活動を行い、4つの職場を経験した。

冷ややかな経歴差別

7年のうちに4つも職場が変わっていることが多いのかどうかは個々人の感じ方によると思うが、世間一般的に見るとそうやって複数回にわたって転職をしていることは、「ちょっと変わった人」場合によっては「何か欠陥のあるやばい人」もしくは、どこにも所在のないふらふらと浮遊した「自由人」場合によっては「自己中心的な人」、いずれにせよ、いい意味で捉えられることが少ないことは事実らしい。

人が私の経歴を目の当たりにしたときの、あのなんとも言えない表情をどう表現したらいいのかはいまだ検討がつかないが、結構な割合で「この人とは距離を置きたい」みたいな主張がその表情の奥にはっきりと垣間見える。

久しぶりに会った親戚、転職エージェント、選考に落ちたときの面接官、マチアプで出会ったデート相手、いずれも私の経歴が原因で、私との関係を拒絶した人間の数を挙げると枚挙にいとまがない。

けれどその代わりに私は、「誰に何を言われても気にしない」という仏のようなメンタルを手に入れることができたように思う。

最初のうちはいろいろ気にしていた時期もあったけれど、そんなことに悩む暇があるなら、それでも私と一緒にいたいと言ってくれる数少ない友人や家族、同僚といる時間を大切にしたほうが健康的だし、発展的だ。

そう思って手に入れた屈強のメンタルを奮い立たせて、毎日を強く生きている。

積みあがらないキャリア

「5年積んだエンジニアでのキャリアを生かして、転職したら年収も待遇も大幅に改善されました。」

私の転職はそんなもんじゃない。
人材紹介、自然体験インストラクター、ディレクター、セラピスト
すべて未経験転職。
しかも結構ニッチな分野の。
7年働いて、いまだに履歴書の資格欄に書いて意味のある資格は「普通自動車運転免許」のみ。
めちゃくちゃ頑張って俯瞰的に見直してみても、世間一般的に言われる「キャリア」は何も積みあがっていない。それが現実。

これだけ転職してしまうくらいならいっそフリーランスに。
そんなことを思ったこともあったけれど、何せ、人様に満足してもらえるようなサービスを提供する経験がない。キャリアがない。ちょっとはあるけどニッチすぎる。それが現実。

けれどその代わりに、さまざまな職種を転々とする中で私は、きっとこの先役に立つかわからないようなたくさんの特技を手に入れた。

・誰よりも早く受話器をとることができること。
・どんぐりを見たら何のどんぐりの木なのかわかること。
・流しそうめんの土台、竹とんぼを、そこらへんに生えている竹から作ることができること。
・通りがかったビニールハウスの中で育てられている農作物が何か当てれること。
・タイ古式マッサージという施術ができること。

ポイントは、なんか役に立ちそうな気はするけれど、、、それが具体的に何なのかはわからないという点である。
私的にこれらは、他人がなんと言おうと、自分だけが知っているみたいな特別感のある、自分の人生をちょっとだけ豊かにしてくれた大切な、誇り高き特技である。

貯まらないお金

上記のキャリアの話に重なる部分があるのだが、私の転職はいわゆる「キャリア」が積みあがったものではないため、給料だって基本的に上がらないか、もしくは下がっている。
その職場ごとに所属する年数も大したものではない(長くて3年)ため、昇給やボーナスだってないときもあった。それに、転職に伴って、何度も引っ越しを経験しているので、その度に思わぬ費用がかさんでいる。

もともと、まじめな倹約家という訳でもないので、そうなるとなかなかにお金というものが貯まらいのが悲しい事実である。

けれどその代わりに私は、「家計管理」という能力を身に着けた。

もちろん毎日丁寧に家計簿をつけるほどのテクニックはないけれど、自分が生きていくために必要な費用を検討したり、それが給与に見合っているのかどうかを見直して、手放すものを決めてみたり、新品じゃなくて中古みたいなカテゴリに詳しくなったり、生鮮品が安いスーパーのランクに詳しくなったり、自分が払っている税金は何なのかを理解するようになったり。

究極の自分に最低限かかるコスト、みたいなものを把握できるようになると、何でもできるような気がしてくる。もちろん、気がしてくるだけかもしれないが、、、。

それに、じゃあ自分が悩んだときとかつらいときに、どうやったら気分を盛り上げることができるかの最低限度のコストを発見できたことは大きな功績だった。

私の場合、古本屋に行って、古本を衝動買いすることと、プレミアムモルツを買って、家で好きなつまみを作って食べること。かかるコストは高くても5000円くらいだ。


変化する環境

先に述べたように、私は転職に伴って、何度も住む場所を変えている。
これは職歴よりもはるかに多い。すべて数えるとこの7年の間に合計6回引っ越ししていて、実家以外で5か所、自分の知らない地域に住んでいる計算になる。

一般的に見て、自分の住む環境が変わるというのは、結構なストレスが伴う。

もちろん、引っ越し費用や初期費用などを含むコスト的な面もそうだけれど、日当たりとか湿度とか、そういう住み心地の面とか、一番はアクセスの面だと私は思っている。

電車にしろバスにしろ車にしろ、乗り物酔いの激しい私にとって、かつ、歩くにしろ自転車にしろ、体力が皆無と言っていいほどない&汗っかきの私にとって、自分が欲した場所にいかに快適に早くたどり着けるかということは非常に重要な点であって、それが満たされない場合、過度なストレスを伴う。

職場へのアクセス、駅へのアクセス、生鮮品の安いスーパーへのアクセス、コンビニへのアクセス、古本屋(基本bookoff)へのアクセス、図書館へのアクセスなどなど、呑んで歩いて帰れるくらいの距離にある居酒屋へのアクセス、あと、意外にも私にとって重要だったのは、ふとした瞬間に予想だにせず食べたくなるマクドナルドへのアクセスだ。
最寄りのマクドナルドへのアクセスが車で1時間かかってしまったときは本当にストレスだった。

金銭面しかり、住み心地しかり、アクセス面しかり、住む場所を転々とするストレスは思ったより大きいし、結構身体的にも精神的にも、しんどいというのが現実だ。

けれどその代わりに私は、自分自身の地元を含め、6か所のふるさとを手に入れた。学生のときの下宿時代を含めるとすでに7か所のふるさとを手に入れている。

短い期間のものでも、約4か月間はその場所に「住んでいる」ので、もちろんストレスだけじゃなくて、その場所場所の違った風景や街並み、色合い、音やにおい、出会った人々、居心地のいいカフェ、好みの居酒屋、異なる文化を体感することができた。


「住めば都」という言葉がもはや座右の銘になりそうなくらいに、良い面も悪い面も含めて、私はその7か所のふるさとを、そこで過ごした想い出を、愛おしさとともに心に抱いて生きている。

募る老後への不安

今の世の中、定職に就いていて、結婚していて、家族を作っていて、貯金もある程度あって、そんな人でさえも、老後の不安はつきないのに、まして私みたいに、職を転々とし、結婚もせず、彼氏もおらず、子どももおらず、貯金もなくて、、、みたいな人間が、その不安をどう考えても回避できるはずがない。

そんな私にはこの先どんな悲劇が待ち受けているのだろう。ただでさえギリギリで生きているので、訪れるすべての悲劇に太刀打ちできるかみたいなネガティブモードに入って、眠れない夜を過ごすことも多々ある。

できれば長生きしたくない、ほどほどに生きて、適度なタイミングで死ぬことができるのならばそうしたい。そう思ってそれなりに不健康に生きている。(親不孝かもしれないけれど、、。)


募る不安は日に日に大きくなり、昨今の世界情勢や、世の中の変化もあいまって、まるで破裂寸前の風船みたいに、パンパンに膨れ上がる。

けれどその代わりに私は、「今を生きること」にスポットを当てることができるようになった。思えば、転職をするたびに、より未来よりも今を楽しめるようになったと振り返ることができる。
では、どんな風に今を楽しんでいるのか?

私は転職を繰り返すことで、選べるはずの職業の選択肢は確実に少なくなった。29歳になった今、パートナーとおぼしき人もいないので、結婚や出産など女性として選べる選択肢も確実にリミットは近づいてきているし、ハードルが高くなった。
などなど、複数回の転職に伴って、各段に選べる選択肢の数が減ってきた。

けれど私は今、その少ない選択肢の中で何を選ぶか、とか、どう考えても選択肢ないよね?みたいな状況の中で、どう選択肢を作り出すか、みたいなことを考えることが多くなって、たぶん、自覚はないけれど、その状況を驚くほどに楽しんでいる。つまり、そういう制限のある毎日をもって、今を楽しんでいるのだ。

その制限があると、あれこれ遠い未来のことを考えている暇はない。
長くて1年先、半年後、1か月後、ましてや明日の生きることについて、頭をフル回転させないと選択肢がない。

遠い未来のことをあれこれ憂いていたときより、今を必死になって生きているときの方が、よっぽど健康的だし、楽しい。そう思って毎日を生きている。


だいぶ最近までというか、ときどき気分が落ち込んでいるときは今も
転職してしまう自分をコンプレックスに生きてきた。

けれど、よくよく振り返ってみると、どの転職の選択も、いろいろ考えた上での決断で、全部自分自身で決めて選んだことで、だからこそ後悔はしていないのだと思う。

それに、こうやって書きだしてみると、大きなデメリットの代わりに得られたものだって結構大きい。

そして、今、私は4度目の転職をしなければならない節目に立たされている。果たして私はいつまで転職し続けるのだろうか。なんにせよ、また新しい選択肢を迎え入れる自分が楽しみだ。

そう、だから転職はやめられない。

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