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夢で会えたら

今日、昔の友達に会いに行く夢を見た。

初めて行くマンションだけど迷うことなく目指す部屋へと足を進める。階段を上りきるとちょうどその部屋に入っていく見知らぬ2人組がいて、私も彼らの後に続いてドアが閉まる前に中に滑り込んだ。

部屋の中には大きなテーブルが1つあり、友達は私の知らない人たち10数人ほどと一緒にそこで楽しそうにしゃべっていた。どんなつながりなのかよく分からない、年齢も性別も雰囲気もばらばらの人たち。場違いな所へ来てしまった、と思ったけれど、意を決して一番遠い席に座っている友達に手を振って声をかける。「約束してないけど会いたくなって来ちゃった」と、現実の私なら絶対に取らない行動を夢の中の私は取っていた。

突然部屋に入ってきた私を見ると、彼女は笑顔で「来ちゃったの?」だったか「来れたんだ」だったか、何かひと言嬉しそうに言ってから隣に座るよう促してくれた。

そして、しばらく2人で楽しくしゃべった後に目が覚めた。

日が昇りきった外の明るさをカーテン越しに感じながら、ぼんやりと「久しぶりに会いたいなぁ」と思った。次の瞬間、もう会えないんだった、と思い出す。体を包んでいた夢の世界の空気感が一気に遠ざかり、現実のそれが取って代わる。

もう会えないという事実を忘れていたわけではもちろんないのに、ただふと本当にまだ会えるような気がしてしまったのだ。10年ほどたつのに、今でもたまに思い出して涙が出てきてしまうほどには身にしみて分かっていることなのに、どうしてこんな感覚になるんだろう。

暖かいベッドの中でまた少しだけ目を閉じる。夢を見ていただけだけど、現実の世界の裏側にある不思議な空間から帰ってきたような気分だった。

そんな気分で始まった今日も、いつもと変わらない普通の一日だった。彼とくだらない会話をして笑って、仕事の面倒な書類仕事を少しだけ片付けて、家族のLINEグループからはかわいい甥っ子の写真や動画がたくさん送られてきた。

こうして一日の終わりに今朝の夢のことを書き留めているのはなぜかというと、「久しぶりに彼女に会えたなぁ」という気持ちがじわじわと大きくなってきたからだ。その反動で寂しい気持ちも波のように押し寄せてくる。この寂しさは普段は凪いだ海のように静まっていても、何年たっても消えることはないんだろう。

またいつか夢で会えるだろうか。やっぱり今日は少しだけ特別な一日だったのかもしれない。

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眠れない夜に

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