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【本】他者からの基準で判断しないー美容は自尊心の筋トレ

美容本をほとんど読んだことがない。
もともと、化粧品自体にあまりいいイメージを持っていなくて、莫大な広告費が上乗せされている商品価格に、原価割合を考えてしまうから。
当然、長年の研究費や商品価値を高めるブランド化にお金がかかることは分かっている。それでも、私、なんのためにお金を払っているんだっけ?と、あまりそこに価値を感じてこなかったからだ。

そして、一番根源的な部分は、「誰かにどう見られるか、誰かと比べるために化粧をする」という刷り込みのイメージが、好きではなかったから。
美容雑誌やファッション誌に、「モテメイク」や「老け顔に見られない」などのコピーが踊り狂っているのを見ると、読む気になれなかった。
電車広告でも「毛をなくせ」「痩せろ」「美白しろ」とすべてが
そうでなくてはあなたに価値はない、と言われるがごとくの圧迫感。

そういうものに、馴染めなかった。

だけど、ほとんど裸足になることはないのに、足の爪にネイルアートを施してみたりするのは好きだった。
そうか、深い利害関係(他者や企業に対して)を気にせずに、自分の気分が上がる、楽しい、その基準でいいんだ。

美容関係に疎かったこともあり、長田杏奈さんの文章を初めて意識して読んだ。めちゃくちゃおもしろいし、深い知見がある。
そもそも、これは方法論としての美容本ではない。美容に潜む意識や、社会の当たり前を疑う本だ。

気にしなくていいよ、と人に言われたって、コンプレックスはなくならない。自分の気持とうまく付き合うための美容。
サボってるからだめ、女として終わってる、って誰から見た誰のための言葉なのか。
役割やステレオタイプの押し付けで、時短・ちゃんと見え、などの「お母さんだから美容にかける時間なんかないでしょ?」の圧力。
美容業界における多様性の時代変革。
などなど、、、すべての章に対して美容に対する違和感を言語化して、一元的でない見方を提示してくれる。

美容を「女が男に好かれるためのもの」と固定観念で嫌悪感を抱いていたのは、社会がそういうアプローチをしていたからとはいえ、そのまま受け取っていた私のほうかもしれない。

この本を読んで、この間話題になってタイムフリーで聴いた、フォーリンラブのバービーさんのラジオの回を思い出した。

武田砂鉄さんがやっている、TBSラジオのACTION内で、ゲスト出演したバービーさんが、今まで芸人として語ってこなかった、自分の美意識を自然に貫いている部分と、自虐のものさしを発信しないこと。
男社会に消費される芸ではなく、「パンツを出しているのは、私の意思」というのもかっこよかったし、それを誰か他の芸人に押し付けているわけではなく時代とともに新しい価値観が芸人界の中に根付いてきている、ということもめちゃくちゃかっこいいなと思った。

基準を作ってそこより劣っているからいじっていい、自虐していいって、それは個人の感覚なのに、それを社会に適用して同じような他の誰かを卑下する空気感を作っていること、実は自分もやっちゃってるのかもしれない。

いい、悪いを押し付けずに、自分の中に認められる部分をたくさん作って、認められないところは美容に力を借りよう。

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