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【本】自分の事として考えるために本を読む〜そろそろ「社会運動」の話をしよう

世界中で起こるデモや、環境問題に関する運動、マイノリティの権利主張、なんだか日本が(自分も含めて)とても置いていかれているような気持ちになって、社会運動に関する本をいくつか読んでいる。

中でも、とてもおもしろかったのが「そろそろ「社会運動」の話をしよう」

なぜ選挙に行かない人が多いのか、すごく疑問に思っていた。
この本の中で自身の体験を語っている学生の話で腑に落ちた。
成長過程で選んできた道や、指導されてきたことは、自ら何かを選んだわけではなく、与えられて、その方法以外の選択肢を知らなかった。自らが権利主体であるという認識はあるけれど、生きていくことは「そんなもん」で、社会が自身に何かをしてくれたという認識はなく、ニュースや出来事は自分の生活とはかけ離れている遠い世界のこと。
若い人たちに、「なぜ選挙に行かないのか」「なぜ関心がないのか」と問うのはそういう環境を作ってこなかった大人にそのまま返さなければならない。

自分自身が能動的に関わるコミュニティがどんどん狭くなってきて、同じような環境の同じような立場の人たちの中で暮らしていると、それ以外の生き方や暮らし方をしている人たちの立場や苦しみを想像できない。
その問題の一因に自分の暮らしが成り立ってることを認めたくなくて、「自己責任」という言葉で捨て去っていく。

当事者としての認識の希薄さや、他者への想像力、関係性の断絶から、社会問題は自分とはかけ離れたところにある、と感じていく。

では、どうすればいいのか。一番手っ取り早いのは本を読むこと、人と話すこと。自分以外の人の考えや暮らしを知ることで、社会と自分との関わりが少しずつ見えてくる。

個人的には、ボランティアは国家が社会福祉に予算を回さず、自助努力でなんとかして、と言っているようであまり好きではなかった。
だけど、この本の中に引用されていた、金子郁容さん「ボランティアは自己犠牲という意味ではなく、関係の発見である」という言葉で、自分の認識を改めた。
対価としての金銭よりも、他者との関係性を構築して、知らないこと知る、立場や問題を理解する、自身が当事者として関わる、ということはその事自体に価値があることではないか。

この本の中では、社会の問題を自分ごととして捉えること、その後どう行動に移していくか、実際の社会運動とはどんなものなのか、世界の流れや仕組みはどうなっているか、など、とてもわかり易い内容になっている。

社会運動というといまやデモや権利の主張で、なんとなく過激で目立つイメージだけど、そういう断片的なことだけでなく、自分が権利主体であること、社会の構成要因であることを認識し直すことだけでも、一つの社会運動への入り口なんだと感じた。

この本も、大学の社会学の授業が元になっているが、他にも若い世代向けに、わかりやすい社会運動を考える本がたくさんある。

最近読んだ本だと、
もっと自分や周りを見つめ直すきっかけになる「みんなの「わがまま」入門

具体的な行動方法が解説されている「世界の半分、女子アクティビストになる」

https://www.shobunsha.co.jp/?p=5293

日本が置いていかれている、と思っていたけど、大学英語入試試験の民営化に関して、高校生が当事者として署名を集め問題を顕在化したりして、とても勇気をもらえる出来事もある。
行動する、という大きなハードルを乗り越えなくても、まずは知ることや、社会に参加していくこと、自分が当事者であるということや周囲の人がどのような立場にいるのか、を理解することだけでも、世界は変わっていく。

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