Something related to triangle 2
先日投稿した記事 Something related to triangle1 の続きです。区切り線より下から本文です。よろしければお付き合いのほどを。
夜という時間に安らぎを覚えるようになったのはいつからだろう。
足早に過ぎてゆく車のヘッドライト
帰り道を頭上から照らす街灯のオレンジ
行儀良く並ぶ戸建や積み木のようにも見えるマンション
その窓からもれる光たち
それらに安堵する自分
スイッチのオンオフで灯るそれらが熱を持つことは無い。熱など無いのに 何故暖かいと思うのか― きっと それは―
* * *
「ドライブしようよ、彼女」
見て分からない?レポート作成真っ最中なんだけど、私。
「だってそれ、もう出来てるんでしょ?だったらさー」
日付、もうすぐ変わるんだけど。この真夜中にどこに行くってのよ。
「夏は海が一番でしょ、やっぱり」
人様のアパートに押しかけた挙句のこの台詞。不法侵入罪で訴えてやろうか、本当に。溜息まじりに、侵入者達に声を掛けた。
「椚くん。奥さんの躾、間違ってない?」
「面目ない。こいつ、言い出したら聞かないからさ……って、奥さんて……。
勘弁してくれよ、藤枝。怒ってるのか?」
「……呆れてるだけ」
"そんな事どうでもいいからさ~。和弥、亜里沙、早く行こうよ"
微妙にかみ合わない空気を作った犯人のテンションは下がることを知らない。あきらめと、心浮き立つ思い。矛盾する自分の思いに苦笑いしつつ、私はノートを閉じた。
途中で寄り道したコンビニで、夏海が花火を買った。
"夏の海にはやっぱり花火だよ"
相変わらず子供っぽいと思ったけれど、止めはしなかった。確かに、それは悪くない。楽しめるだろう、きっと。
手持ち花火に火を点ける。軽く振り回すと、光が輪を描く。
真闇の中のネオンサインのようだ― そんなとりとめも無いことを思う。とりとめ無く思い巡らす内に、光の輪は闇に溶けた。
「ほら、次」
「あ、ありがと。今日は私にも優しいんだ。どしたの?」
「別に今日だけって訳でもないだろ。要らないのかよ」
ぶきらっぽうに渡される2本目の花火を、笑いながら受け取る。
「なお、あんまり振り回しすぎるなよ、火傷するぞ」
「大丈夫だって。和弥は心配性だよね。それに、この方が綺麗じゃない、ねぇ亜里沙」
「……そうね。綺麗だわ」
夜空から降りそそぐ星の光
そこへと昇るように散る火の花
闇に溶け 波の音だけが聞こえる水面
素直な気持ちで その全てを綺麗だと思った。来年からは違う形で迎えるだろう夏をこうして3人で過ごせることを嬉しいと思った。夏が終わらなければいいと、少しだけ思った。
そんな どこにでもありそうな 最初で最後の夏の終わりに―
2023/07/23、続きをあげました。下記からご覧いただけます。
拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。