見出し画像

【本紹介】ころんで学ぶ心理療法③


遠藤裕乃 著

面接に慣れたと思ったら


面接が生き詰まったと思ったら
「今この場で何が起こっているのだろう?今の状況はどうなっているのだろう?」自問自答して客観的に分析すること

慣れたころにやってきた落とし穴

事例
CL B(17)女子高校生
主訴:自分に自信がなく落ち込んでしまう。周りと比べて何事もできないのではないか、ダメな人間なのではないか。
来談経緯:学校の養護教諭からの紹介
内容:成績がよく性格の明るいbroとsisはMoのお気に入り。Clは「取り柄のない子」とMoは言う。Faは単身赴任で家にいないことが多く、「いい家族」と認識していたため相談しずらい環境だった。先生がFaの役割を担っているように感じている。
イニシャルケースのAとの違い:面接に対する動機付けがはっきりしている。積極的に経過を語ってくれたのでThがClの求めるものをとらえやすかった。対人緊張が初回で割と解けたので変化しやすい印象をThに与えた。Thの言葉に対して話を展開することができたため、Thの介入への望ましい反応が見られた。自分の家族力動と問題を関連させて考えるだけの力があると考えられた。
経過:友達と遊びに行くなどの娯楽を楽しむ余裕が生まれ、Faに悩みを打ち明けることができるようになった。Thは自己理解を肯定する形で向き合った。
→しばらくすると、症状がぶり返した。
Thの対応:「また極端な考えに走っていないかしら。」と指摘したり、解釈をしたりした。

その後:Thの転職のため、Bに終結か引継ぎの相談を持ち掛けると、Bは終結を選んだ。3ヶ月後にThに感謝して終結

終結後:成功例と呼ぶには違和感を感じ、事例検討会で発表することにした。

わかったこと:
Bは「よい子」を演じていたのではないか。Bの根本的な問題は、「無意識のうちによい子になってしまうこと」でありその根本が見過ごされている。日常と面接室でのギャップに気づいてもらうような促しや指摘が必要だったのではないか
Thもまた「よいセラピスト」を演じていたのではないか。

事例から読み取れる問題点

セラピストが面接の心地よさに酔ってしまっていた
→自分が有能なセラピストであるかのような気分になってしまうハネムーン状態だった

=自己愛的動機に支配されていた
それによってBの症状のぶり返しも楽観的にとらえて取り上げようとしなかった
ふたりの心地よい関係を終わらせたくないという気持ちが話し合うことを阻害した

順調な時ほど用心を

「よい子」を見逃さないためのチェックポイント
①毎回の面接を楽しみにしている
②面接終了後に「今日もいい面接だった」と達成感を味わっている
③クライエントがセラピストの介入を素直に受け入れどんどん洞察を進める
④「このクライエントのようにほかのクライエントもスムーズに治ってくれると大助かりなのに」と思うことがある
⑤2人の間で陰性感情が沸き起こることがほとんどない
⑥「自分は有能なセラピストだ」と感じて気分がよくなることがある
⑦クライエントのことを「なんてよい人なのだろう」と思う
⑧クライエントが明らかにセラピストのふるまいをまねることがある
⑨クライエントの話に大いに興味がそそられる
⑩クライエントが「先生のおかげでよくなりました」などと感謝の言葉を繰り返し述べる
⑪症状は目に見えて改善するが、ぶり返しも頻繁である
⑫症状がぶり返したとき、セラピストが介入すれば速やかに改善する
⑬面接にやりがいや張り合いを強く感じる
⑭クライエントに会うと無性に元気がでる

境界例の心理療法と逆転移

境界例のクライエントとはどんな特徴を持っているのか?

症状を客観的に語る力が極めて乏しい


→自分自身が何に困っているのかはっきりとわからないから訴えが散漫になったりする
→ほかの人になぜここを勧められているのかわからない
→困って当然のことに「困っていることはなにもありません」というなど自らの問題に違和感を感じにくい

境界例のクライエントは自我が部分的に脆弱なため、自分を第3者の目で見ることが難しい
→境界例のクライエントに出会ったら、まずはクライエントが自分の問題を自分でつかめるよう働きかけることから始めるのが◎

時間軸や対象の境目の消失

感情的に混乱すると、過去と現在のことが混合してしまって過去に体験した怒りなどをセラピストにぶつけてくる
また、対象の境目がわからなくなりセラピストと怒りを感じている対象を同一人物かのように感じる

→Thは混乱した体験を整理する手がかりを提供していくと◎
「過去は過去、今は今」「ThはTh、他人は他人」

病的な投影同一化

自我境界が不明瞭になり、自分の中の悩みを他人に押し付けてくることがある
この関係はThとの間にも生じうる。結果Thは「濡れ衣を着せられた」と思うこともある

クライエントのなかで葛藤が生じ、それを抱えきれないとそれを他人に投影して「他人のせいに自分はいま苦しんでいるのだ」と自我防衛をする
→Thはクライエントが葛藤に耐えられる自我の強さを育てることがひとつの目標となる

分裂

物事を極端に白か黒か分ける認知のこと

対象を理想化したり脱価値化したりする
これは境界例のクライエントの自我の弱さ故、あいまいで不確かな状況にともなう不安に耐えられないところから生じる。周囲に「お前のせいだ」と攻撃することで不安を発散させる

→Thはクライエントに対して「白か黒かではなくグレーの世界もある」ということを根気強くさし示すと◎

何人ものセラピストを転々としている

前任者に対しても分裂が生じていることが多く、「理想的な先生」「最低な先生」というように言ってくる

また前任者の「悪い部分」を後任者に投影してくることもある

→Thはまず前任者に対して劣等感や競争意識を感じやすい。その解消のためには前任者から詳細を引き継ぐこと、そして前任者の最後の面接に後任者も同席して面接方針を3人で確認すること


Thは
クライエントの「病理」とクライエントという「人」を分けて眺めることが重要



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?