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あるちいさな雑誌〜『アフリカ』をめぐる"セッション"の今

今年(2020年)は、毎週・月曜に更新することにしているnoteの道草のススメ(タイトルに深い意味はありません、ないはずです)、先週までは3週連続で、ある特定の本をじっくり読んで書く、というのをやりました。

まずは、犬飼愛生精選詩集『百年たっても僕らをこんな気持ちにさせるなんてすごいな』(書肆ブン)のこと。

それから、戸田昌子監修『われわれはいま、どんな時代に生きているのか 岡村昭彦の言葉と写真』(赤々舎)のことは、2週に渡って書きました。

このまま、その調子で毎週、何か1冊を取り上げて、読み込んで、書くということを続けたら、それはそれで面白いだろうなあ(書いている自分も勉強になる)と思います。が、そのためにはそれなりに準備が必要なので、ずっとそればっかり続けていたらもたない。けっこう力、つかいますからね。

たまには疲れるようなこともしっかりやりたいですけど(心地よい疲れなんですよ)、そればっかり続けたら倒れてしまうような気がする。だから今週はちょっとひと休み。

──とはいえ深く読むという力は、この1週間は、アフリカに送られてくる原稿に向けていたので、休んではいませんでした。

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とくに今回(次号)は、強烈な動機の波が訪れて、書かずにはおられない、その大波にのって書かされたような力作が次々と届いており、編集者の私はびっくりしつつ、たいへん嬉しいんですが、同時に手強くもあり、読むことに時間をかけています。

それにはやっぱり、"コロナ禍"の影響も、かなりあるんじゃないかと思っています。直接、そのことを書いているわけではなくても。たとえ、昔のことを書いていても。

ところで、『アフリカ』では、書く人に対して字数制限を設けていません。内容の指定も大抵はない(例外はあります、このことを書いてほしいというのがたまにはあり、でもあまりないです)。いま書きたいと思うことなら何でもいいんです。書き手任せ。そのことはとても大切にしています。

原稿が届いたら、編集者(私)はくり返し読んで、感想も、意見も、リクエストも伝えて、多くの場合、もう少し推敲、加筆したいとなります。

これを仲間うちでは"セッション"と呼んでいます。

先週までの3週間、noteで書いたようなことを、書き手1人に対して、その作品の(おそらく)ファースト・リーダー(最初の読者)として、何を受け取ったか、どう感じたか、もっと書けること、手を入れられるところはないか、技術的に考えられることにはどんなことがあるか、etc. 念入りに読んでチェックしつつ、伝えるんです。

その作業は、時に、うまくいかない場合もある。何もしない方がよい原稿に対して、何か少し言ってしまったりして。逆に、もっといろいろと話した方がよい原稿に対して、あまり言えなかったり。──そんなこともありますが、まあ、失敗をおそれていてもしょうがない。直観的に伝えたかったら伝えよう、という気持ちでやっています。

書いた人の思惑通りの読みには、おそらく、ならない。それなら(どう読んだかを)書く意味もあまりないような気がするし、書いて発表したものは、書いた本人の手からも離れて、読者のものになってゆくというふうにも思っています。編集者としての私は、その、書き手と読者の間で、揺れているような存在です。

さて、『アフリカ』では、私は編集者でもあり、書き手でもあります。いわばプレイング・マネージャー。スポーツで言うところの、選手兼監督ですね。そう言うと、たいへん難しい役割だというふうにも思えます。実際にそれを長く続けるのは難しいことなのかもしれない。

でもずっとそうやってきましたから。営み方にかんしては誰かに任せて、自分は創作に専念したいと考えたことはない。

そもそも、書かなければ、とは思っていないし、本を(雑誌を)つくらなければ、とも思っていない。止めたくなったら、いつでも止めます。でも、書きたいから書き、つくりたいからつくっているんです。そのパッションは、まだ全然、消えていない。それどころか、強まってきているような気すらしています。

自分自身が、誰よりもまず『アフリカ』を読みたいと思っているからかもしれません。私のコントロール下にもない。私はいつもこの雑誌のゆくえに驚き、共鳴し、そしてその旅が続けられるように奉仕している者です。

守安2020-06-20_3

今回は、音を聴くひと』(アフリカキカク)が出た直後なので、その著者である自分自身へのインタビュー原稿があり、さあ、それを編集者である方の自分がまとめて載せたいと言っている。

そんなふうに言うとちょっと複雑ですけど、何やら面白いことを語っているようでもあり(他人事?)、いわば、"語ることによるエッセイ"というつもりで、まとめようとしています。

ではまた来週まで、ごきげんよう。

(つづく)

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