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ちょっとお邪魔します

ふいに、自分のことを紹介される。たいていは、ちょっと違うんだけどな、と思う。思うが、ふいに紹介されるので、思うだけで思ったことを伝え(られ)ることはあまりない。

たまに、どうしても勝手が悪くて、それはね、ちょっと違うんですよ、と話してしまうこともないわけではないが、話してもたいていはポカンとされるだけなので、話してよかったと思うことは滅多にない。

話はそれで終わらない。自分が、言われる側になることもある。

違うんですよならまだよくて、あんな言い方をされて、傷ついた、とか言われたら、悪かった、と謝るしかない。

ということは、他人のことをとやかく言えない、ということになる。

しかし、誤解を「おもしろい」と思うこともある。「なにそれ。そんなふうに見えてるの?」って。

「この人はこういう人です」と言われるから、ムッとする。

「私にとっては、こうこう、こういう人です」と言われたら、そうかもしれない。と、まぁ、そういうことかもしれない(そうとは言い切れないかもしれないとも少しは思いつつ)。

昨年のある時期、ある人に、「私は、あなたではないんですよ」と激しく怒ってしまい、しばらく落ち込んでいた。その人には、ぼくの伝えたかったことはほとんど何も伝わらなかった、と感じている。でも、そこで怒らなければ、ぼくは我慢して嫌々ながらそこに居続けなければならなくなっていただろう。

私は、あなたではないし、あなたは、私ではない。──その時、怒りが沸き上がった時の「私」は1人だったが(1人ぽっちだったと言いたいくらいだが)、それを向けられた「あなた」は、向けた瞬間に1人ではなくなっていた。それがわかった時に、自分は深い溝の奥に捨てられて果てしなく落ちてゆくような気がして、その時持っていたものをアッサリ捨てたのだった。

そこで捨てなければ、その後のことも、また、なかったと言うしかない。

さて、この文章のタイトルをどうしようか、迷っていたら、息子(5歳)が「なんてかくの?」と聞いてきたので、「かんがえてるの」と言ったら「ちょっとおじゃまします」がいいよ! と言ったので、「じゃま」を漢字にして「ちょっとお邪魔します」にしよう。

(つづく)

日常を旅する雑誌『アフリカ』最新号(2019年7月号)、相変わらず発売中。在庫が少なくなってきたので、お早めに。

「道草の家・ことのは山房」のトップ・ページに置いてある"日めくりカレンダー"は、1日めくって、12月8日。今日は、「こうレンジャー」の話。

※"日めくりカレンダー"は、毎日だいたい朝(日本時間の)に更新しています。

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