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ふがいない黒川壮一郎(高橋一生)の極上の愛おしさ 「わたしに運命の恋なんてありえないって思ってた」

莉子、やっぱお前最高だわ
 (いやいや、そういうあなたが最高です) 

ちょっと時季外れになってしまったが、クリスマスになると、観たくなるドラマがある。2016年末に、スペシャルドラマとしてフジテレビ系で放送されたラブコメ、「わたしに運命の恋なんてありえないって思ってた」だ。

高橋一生さんには珍しい恋愛ものだが、いつもの通り、癖強めの役だ。相手役は多部未華子さんで、こちらもなかなか癖のある役どころになっている。

舞台になるのはITベンチャー企業。社長の黒川壮一郎が高橋一生さん、そこにやってくるゲームプランナー・白野莉子が多部未華子さんだ。舞台となるITベンチャー企業の社員として、大政絢さんや志尊淳さん、黒川壮一郎行きつけのカフェのマスターとして、田中要次さんが登場する。

このnoteでは、高橋一生さん演じる黒川壮一郎のふがいなさを、心ゆくまで愛でることにする。

恋愛自家栽培女子・白野莉子

恋愛シミュレーションゲームのプランナー、白野莉子はゲームのキャラクターを作りこむために、日々街角のカップルを観察している。王子様系、俺様系、年下系・・・様々な現実の男をじっくり観察している莉子には、現実の男がいずれも、ふがいなく見えている。

自分の理想の恋愛相手を投影した、ゲームのキャラクターを様々なタイプに分けて想像することで、いわば恋愛を「自家栽培」している。現実の男性との恋愛に入り込めない、夢見がちな女性である。

一方で自分の仕事にはきちんとプライドを持っており、黒川に仕事をけなされたときは、毅然と反論する強さも持ち合わせている。

女心の分からない男・黒川壮一郎

ITベンチャー社長、黒川壮一郎は中学生のころプログラミングに目覚め、当時作ったソフトウェアで父の仕事の効率化に成功。父が喜んでくれたことが忘れられず、現在の会社を立ち上げて大きくした。

仕事はできるし、社員には厳しく優しい。しかし、恋愛においては女心が致命的にわからないため、そこそこモテているもののいつも女性から振られてしまう。

黒川壮一郎の恋

そんな黒川が想いを寄せるのが、同じ会社で働く社員・桃瀬(大政絢さん)。

恋愛シミュレーションゲームの開発チームをランチに誘ったり、差し入れをしたりするものの、チーム内で本当に届けたい人である桃瀬には、「お弁当持って来てるので」、「わたし、生クリームダメなんです」とつれない返事をされる。

そのたびにわかりやすく落ち込む黒川に、莉子が気づく。
いい歳した社長が、人前でこうもあからさまでわかりやすく、気持ちを表すものかと思ってしまうが、高橋一生さんが演じると「あるかも」と思ってしまうのだから、不思議だ。

こうして、恋愛音痴の黒川壮一郎に、恋愛自家栽培女子の莉子が恋愛アドバイスするという、何ともおかしな関係が始まった。

愛おしさ、てんこ盛りの黒川

黒川は莉子にアドバイスをもらいながら、桃瀬の前で王子様系キャラになったり、俺様系キャラになって壁ドン(一生さんの壁ドンなんて、もう2度と見られないのでは?)してみたりと、女性受けするゲームキャラクターを懸命に演じ、涙ぐましい努力を見せる。その姿が何とも愛おしい。観ている方には、「高橋一生・モテキャラ七変化」が堪能できるし、滅多に恋愛ものに出ない(そしてこれからも多分無い)、一生さんとの妄想デートも楽しめる。

肝心の黒川の努力の成果はというと「白野さん、最近社長、情緒不安定みたいなんですけど…」と桃瀬に言われてしまい、報われない。報われなくても再び、莉子と恋愛ドラマを観て研究したりと、振り向いてもらう努力をし続ける。もう、愛おしさがどんどん増していくじゃないか。どうしてくれるんだ、黒川社長よ。

莉子の苦い思い出・リリック白野

そんな風に、涙なくして語れない努力を黒川が重ねている時、莉子に同窓会の知らせが舞い込む。気乗りしない様子の莉子は、黒川に切り出し始める。

思いを寄せる男子に、ちょいちょい陳腐な英語の挟まる、変なメールを毎日送っていた事(ここまで聞いた黒川の、ニコニコ顔で莉子を見るその眼差しが最高だ)、そして文化祭でそれをネタにしたラップ「リリック白野・Love forever」を披露されてしまった事。だから、恋する気持ちは仕事で表現する、と。

隣にいたのが同年代の友人男性だったら、きっと爆笑して茶化すことだろう。しかしニコニコしながら話を聞いていた、黒川の返しは、こうだ。
「そうやって、すぐ分析するんだな。それは、傷つきたくないから?」
「行くんだろ、同窓会。」「ケリ、つけてこいよ」

女性として意識はしていないものの、この時点で黒川はすでに、莉子の良き理解者となっていることが感じられる、ぐっと来るシーンだ。

しかし、ヤマはこの後やってくる。
この後、同窓会に出席した莉子の前で、文化祭で披露したラップを、アホな男子がまた演奏してしまうのである。

莉子の脳裏に、「ケリ、つけてこいよ」という黒川の言葉がよみがえる。

そしてこの場で、莉子は即興で同級生男子を糾弾するラップを披露するのである。

「お前、彼氏いないだろ」という同級生男子に、言葉を返せない莉子。

そこに黒川があらわれて、彼女の肩を抱きながら放つのが、冒頭のセリフだ。

莉子、お前やっぱ最高だわ

そのあと、続く言葉はたった一言。「行こう」。
何故か「ちょ、待てよ」とキムタクのごとく追いかけて、莉子の腕を握る男の手を、汚いものでもつかむかのように、不愉快そうに引き剥がし、黒川はこう言う。

「俺の女に触ってんじゃねえ」

黒川にしてみれば、「先生」である莉子に、今までの努力の成果を見せに来たわけで、彼にそれ以上の意識はきっとない。けれども莉子の方は居心地悪い空間から救い出してくれる、俺様の入った王子様に見えてキュンとしてしまう、そういう場面だ。

ゲームキャラを再現してる黒川を演じる、一生さんの破壊力がすごい。ものすごくベタなシチュエーションなのだが、莉子でなくてもドキドキしてしまう。

そしてこのあと、黒川の秘密の場所、釣り堀で「リリック白野」に匹敵する恥ずかしエピソードとして、黒川が「サーモン黒川」の話をし始める。

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好きな女の子に書いたラブレター。「鮭が命がけで、子孫を残すために川を遡ってくる」事を引き合いに、必死に好きな気持ちを綴った黒川少年に、翌日からついたあだ名が「サーモン黒川」だと言う。

秘密裏に告白された、みっともない昔の恋愛エピソードに、笑いあう2人。とても心地よいカップルの空気を感じて、桃瀬よりよっぽど莉子の方がお似合いに感じられる。

下剋上(どっかで見た気がする)

社員の緑谷(志尊淳さん)に、取締役会で社長解任動議を出され、会社を追われる黒川。桃瀬(大政絢さん)が追いかけて来て、少しゆっくりしましょうという。「リッチマン・プアウーマン」(同じくフジ系。IT社長が小栗旬、参謀は井浦新、ヒロインは石原さとみ)みたいなシチュエーションである。そこに莉子からメールが入る。

黒川は、何かを思いついたように、パソコンに向かい何かを作り始める。

桃瀬と付き合えることになったは良いが、相談に乗ってもらうために、散々莉子と一緒に通ったカフェで、甘党の莉子と同じものを桃瀬に頼んでしまう黒川。彼女は生クリームが嫌いで、コーヒーはブラック。目の前にいるのが誰か、黒川には全然見えていない。

そんなこんなで、振られてしまう黒川。ここに至るまで自分の気持ちに気づかない、めっぽう鈍い黒川も、愛おしくてたまらない。

ハッピーエンド

黒川がパソコンで作っていたのは期間限定SNS「Bocchi de Christmas」。クリスマスイブの夜に、黒川と莉子は再び繋がる。

黒川なりの言葉で、莉子なりの言葉で、想いを伝え合う。

「今だって、女の子の気持ち全然わかってないくせに」という莉子に、「いや、分かってる。俺の学習能力を舐めるな」という黒川が取り出したのは、指輪。左手の薬指にはめようとするが、サイズが小さすぎて入らない。

嗚呼、最後までふがいない黒川壮一郎。私の黒川に対する愛おしさが、最大値を記録する。

当然、莉子に「いきなりプロポーズとか、バカじゃないの?他にすることあるでしょ?」と言われてしまう。

最後は2人の幸せなシーンで終了。ごちそうさまです。

おまけ:後日談の妄想

モノづくりにこだわりのある黒川は、また会社を興すのだろう。自分のアイデアを形にすることで、喜ぶ人の顔を想像しながら、いいものを作り続けるに違いない。ただ、仕事する上で信頼のおける右腕は必要だよと、誰か教えてあげてほしいとは思う。

恋愛音痴だけれど、惚れたら一途だし彼女のための努力を欠かさない黒川のことだから、きっと莉子は幸せになれる。そんな気がするのだった。

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