2022年 印象に残った作品たち
2022年も残りあとわずか。
今年観た舞台、映画、テレビドラマの中から印象に残った作品をピックアップして書き残しておく。
舞台
『笑う男』
以前書いた感想noteへのリンクを載せておく。役者・浦井健治に驚かされた作品。
『The Parlor』
演出の小林香さんの手腕が冴えた、現代的な作品。観られて良かった。
『RENT』
ずっと観たくて、やっと劇場で観られた作品。音楽の持つパワーが、直接心臓を掴んで揺さぶるような作品だった。
『Q 〜A Night at Kabuki』
初演はWOWOWの放送で観た。2022年、再演を東京芸術劇場で観た。ロミジュリと源平合戦という面白い組み合わせ。野田秀樹の頭の中はいったいどうなっているのだろう。
ロミジュリの終わりは「めでたし、めでたし」だが、争いが終わったあとというのは本当にそんなにすんなりおさまるものだろうか。そんな疑問を凝縮したセリフ、「戦争が終わった日に、戦争は終わらない」が、今も頭から離れない。
広瀬すずさんと志尊淳さんの若さゆえの煌めきと残酷さ、松たか子さんと上川隆也さんの諦念と未練。
舞台で自由に躍動する松たか子さんは、やはり素晴らしかった。
映画
『MEMORIA』
とにかくものすごい作品だった。何がすごいって、もう言葉にならないほどの衝撃で、映画館のシートから立ち上がれなかった程にすごかった。
ティルダ・スウィントンという女優無しには成り立たない世界観。脳内に言葉が見つからないので、とにかく観てとしか言えない。
『オードリー・ヘプバーン』
わたしの知らない等身大の大女優が、そこにいた。飾りたてなどしなくとも、美しいものは美しいのだと思い知らされた。
『わたしは最悪』
ノルウェーの映画。主演のレナーテ・レインスヴェはこれが映画初主演だというから驚き。能力があるのにやりたいことが見つからず、恋人には妻を求められてモヤモヤするユリヤ。女性なら誰でも、こういう経験があると思う。美しいオスロの景色や街並みが楽しめるところも良いけれど、個人的にはユリヤが妄想のなかで恋人と暮らすアパートを抜け出し、坂を一気に駆け降りてアイヴィンのもとへ行くシーンが好き。
なりたい自分と、ままならない現実の自分のはざまでもがくユリヤの姿はヒリヒリと痛い。けれどもがき続けて欲しいなと思いながら、映画を観おえた覚えがある。
『百花』
認知症がゆっくり進んでいくピアノ教室を営む母(原田美枝子さん)と、息子(菅田将暉さん)の物語。
ワンシーンワンカットにこだわった作品で、映像も音も良かった。震災後の街を彷徨い、遠くを見つめる原田美枝子さんの表情が忘れられない。
母の認知症の進行になすすべはない。「勝手に忘れられちゃ困るんだよ」という息子の心の叫びが、残滓として耳に残っている。
テレビドラマ
『恋せぬふたり』
恋愛で紡がない二人の結びつきがとても新鮮だった。
夫婦でも、親子でも、恋人でもない二人が家族になろうとする。
岸井ゆきのさんと高橋一生さん、ぜひまた違う作品で共演してほしい。
『あなたのブツが、ここに』
NHKよるドラは、朝ドラに対抗するように15分の放送。
だいたい30話分ぐらいなので、ワンクールの連ドラと同程度のボリュームである。
この枠で秀逸だったのが『あなたのブツが、ここに』(通称:あなブツ)だ。キャバ嬢が宅配ドライバーに転身し、さまざまな困難にぶつかりながらたくましく生きていく姿を、あくまでライトにポップに描く。主人公・亜子役の仁村紗和さんは、よくお見かけする方ではあったのだがお仕事が増えそうな予感。
エンディングのダンスがキレキレなのも楽しい。
『それ忘れてくださいって言いましたけど』
Paravi限定の配信ドラマ。1話15分、8話分で紡がれる物語は軽やかで、温かくて、美味しい。
番外編
好きな俳優さんに脳が引っ張られる作品は、番外編としてこちらに置いておく。
『GUYS AND DOLLS』
井上芳雄 浦井健治 明日海りお 望海風斗
メインキャスト4人の字面が強すぎるハッピーなミュージカル作品は、残念なことに帝劇公演の約半分が公演中止となった。是非いつか、このメンバーで再演して欲しい。
『キンキーブーツ』
初演・再演でローラを演じた三浦春馬さんが演じられなくなってどうなることかと思っていたが、城田優さんが城田さんなりのローラをきっちり魅せてくれた。作品を未来につなげてくれたことに感謝したい。
『キンキーブーツ』は、日本でもぜひ上演され続けてほしい作品だから。
1年を通じて、さまざまなジャンルのエンタメを楽しんできた。まったく書ききれてはいないけれど、今年印象に残った作品のキーワードを挙げるとするなら、「等身大で生きていく」だろうか。
これまでのエンタメ作品のように、何か大きな事件を解決するとか、主人公が困難に直面して成長していくとか、定型フォーマットに則った物語ばかりではなかったように思う。
いま、わたしたちが直面してる事態。それでもなんとか息をして、ご飯を食べて、明日も起きて仕事に向かう。そんな普通の姿を、普通に描く作品が私の頭の中には強く残っている。
2023年は、どんなエンタメ作品に出会えるのだろうか。いまからワクワクしている。
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