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三浦春馬と私 その4

三浦春馬と私 その3の続きです。

公開された作品の時系列に沿って、ミュージカル「キンキー・ブーツ」の話をしようとしていましたが、もう少しかかりそうです。今日は彼の著書「日本製」について書こうと思います。

外国の方と仕事であれプライベートであれ、コミュニケーションをきちんと取りたいと外国語を学んだ経験がある方は、たくさんいらっしゃると思います。その時に「言葉を話すスキルはあがったけど、話す内容がなにもない」と感じる人は少なくないのではないでしょうか。英会話本に出てくる、ビジネス会話、買い物の時の会話などの範囲で事足りる間は良いのです。でも、それでだけはパーティーで仲良くなってもっと関係を深めたい人に、趣味の話や自国がどんなところかを伝えることはできません。

外国の方はけっこう、お国自慢が好きだったりします。母国の素晴らしさを日本語で語れないのに、外国語で語ることは出来ないでしょう。三浦春馬さんにもきっとそんな経験があって、この本を出すための取り組みにつながったのだろうなと思います。

しかし、彼が素晴らしいのは「実際に4年をかけて忙しい中47都道府県を訪れて、製造業などの地場産業を実際に見てきている」ということです。外国の方に日本を紹介するネタがないな、という実感を抱いた日本人はたくさんいるでしょうが、大半はネタを仕入れるためにググったり、本を数冊読んだりしたらおしまいです。実際に47都道府県を回る人なんて殆どいないはず。でも、Wikipediaを見る限りでもわかる大変な仕事が目白押しのなか、彼はそれをやりきった。もちろん雑誌とのタイアップ企画ですから、訪問先の選定について意見は出したでしょうが基本的にお任せしたでしょうし、内容をまとめるのもライターさんでしょう。でも、写真が載っています。実際に行って、話を丁寧に聞いているのです。

しかもこの「日本製」、分厚いです。私自身が「なるべくゆっくり読みたいので、少しずつしか読み進めていない」というのもあるのですが相当なボリューム。彼のまっすぐさと日本を愛する気持ちが伝わります。


いつか、自分がブロードウェイの舞台に立った時には、英訳した自書「Made in Japan」を共演者に手渡すつもりだったのかもしれません。


彼のこのような仕事を知ったあと、以下の記事を読みました。三浦春馬さんが自らの携わるエンタメ業界について「この産業は…」と語ったこと。彼の目で見て、感じた各地域の「日本製」への敬意と、コロナ禍で公演中の舞台が中止になる中での、自分の仕事への思い。



単なる個人的な感想ですが、本日読了した原田マハさんの「楽園のカンヴァス」に出てくる画家アンリ・ルソーに、三浦春馬さんと重なる部分があるように思えました。いつの時代も、どんな世界でも、天才の周りには好意と悪意、敬意と軽蔑のような相反する2つの感情が、背中合わせにあるのかもしれません。アンリ・ルソーがそうであったように、彼個人が有し、ただひたすらに磨き続けた芸術性と、それを売る側の人間の目利きのアンマッチが、悲劇的な状況を生み出したような気がしています。彼には、ルソーにとってのピカソのような理解者はいたのでしょうか。もしもいたなら、少しは救われるかもしれないと妄想しています。


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