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【インタビュー】「北海道から4年でJ1へ!」新プロサッカークラブ BTOPサンクくりやま~矢野社長と西野総監督の描くビジョンとは~

1993年に10クラブでスタートしたJリーグ。現在は、計58クラブがJの舞台でしのぎを削り、昇格を夢見て奮闘する下部リーグのクラブ数も年々増加している。

また、神奈川県の6クラブや静岡県の4クラブを始め、同都道府県内に2つ以上のJクラブが存在するケースは珍しくない。

だが、北海道に目を向けると、コンサドーレがJリーグ入りしてから25年が経過した今なお、道内2つ目のJクラブは未誕状態が続く。

現在、その実現の最短距離にいるのが北海道十勝スカイアースだろう。

Jリーグ入りの登竜門となる全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(以下、地域CL)に5年連続で北海道代表として出場し、一昨年には決勝ラウンドに進出した実績がある。

だが、2022年。新たなクラブがその本命に踊り出るかもしれない。

プロサッカークラブ「BTOPサンクくりやま

〝北海道から第2のJリーグクラブを!〟を合言葉に2022年度から北海道リーグに昇格した「サンクFCくりやま」を母体に再編し、今季から本格始動する。

・最速4年でJ1リーグ入り
・社長に元道産子Jリーガー
・全国最年少監督
・Jリーグ経験がある実力派選手を多数獲得

始動早々、多くのトピックをもたらすクラブの正体と彼らが描くビジョンとは?

今回、BTOPのキーマンともいえる、矢野哲也社長西野虎太郎総監督にインタビューを実施し、その胸の内を聞かせて貰った。

「BTOPサンクくりやま」
彼らが歩む、旅路の第一歩をここに記そうと思う。

〝北海道ダービー〟

いつの日かJ1の舞台でバチバチに盛り上がるキッカケの1年になるかもしれない。

彼らの今後の歩みに是非、注目してみたい。

BTOP誕生の経緯

株式会社BTOP(ビートップ)が、北海道・栗山町を本拠地として活動した社会人チーム、「サンクFCくりやま」の運営を引き継ぎ、プロ化し、誕生したのが「BTOPサンクくりやま

クラブの社長を務めるのは北海高校で市村篤司さん(札幌、熊本などに所属)ともプレーし、その後、柏や愛媛にも所属した元Jリーガーの矢野哲也さん。

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そして、現場の指揮を執るのが西野虎太郎さん。全国最年少監督と言われる24歳の新鋭監督は北海道コンサドーレ札幌に所属する西野奨太選手の実兄でもある。

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北海道から、四半世紀ぶりのJリーグ参入を実現するべく7社の団体協力で設立した〝BTOP構想〟
そのプロジェクトの始まりは、いつ頃だったのか?

西野総監督
「確定したものでは無かったですけど、今回のプロジェクトについて、最初に聞いたのは5・6年前の僕が大学1年の頃でしたね。それが昨年から一気に具体化して、動き出しました。」

矢野社長
北海道でなんかやりたい!という経営者の方々の集まりがありまして、サッカーで出来たら、面白そうだなという構想がありました。それにプラスして、西野虎太郎がJリーグチームを北海道で作りたいという強い思いを持っていた事も合わさり、本格稼働させてやっていこうと。」

昨年末から本格的に動き出したプロジェクト。その最前線に身を置く矢野社長と西野総監督だが、その挑戦に迷いはなかったのだろうか?

矢野社長
「僕自身、プロジェクトメンバーの方々から「実際Jリーグにいくのは難しいの?」など色々と相談を受ける機会があったんですが、その都度、「そんなに簡単に行けるわけないです」と偉そうに言っていたんです(笑)

ただ、昨年末にサンクくりやまが、我々の考えているプランに共感して下さったという話になり、年明けに「代表になってくれないか?」という正式打診を受けまして。ずっと、北海道とサッカー界に恩返しをしたいとの気持ちだったので、この上ない機会だと、二つ返事でやらせて頂くとお答えしました。それが、もし仮に他の地域のチームだったら、即お断りしていましたね。絶対に北海道に2つ目のJリーグチームを作る。腹をくくってやろうと決意しました。」

西野総監督
「自分はマネジメントやフットボールの戦術的な側面も含め、一つのチームを構築して、集団を勝たせることができます。

自分ができると思う事と今回のプロジェクトが求める事が一致していたので、最高の機会だなと思いましたし、会社としての今後のポテンシャルを見せて貰った時に、これはいけるのではないかな?と決断しました。

弟の奨太に、監督になることを話したら、「最高じゃん!遂に来たね!」と言っていましたね(笑)」

「4年でJ1を目指す!」その本気度とは?

ここでBTOP発足に当たっての決意表明を見てみたい。

最短最速でJ1リーグに到達して
北海道を熱狂の渦で包み、感動を巻き起こします
世界を変える一歩をここから始めることを誓います。

最速で4年でのJ1入り。
2022(1年目)北海道リーグ優勝→全国CLでJFL昇格
2023(2年目)JFLからJ3昇格
2024(3年目)J3からJ2昇格
2025(4年目)J2からJ1昇格

にわかには信じがたい、その声明を出した意図とは何なのか?

矢野社長
「無謀だと思われる方は多いと思います。ただ、目的地の無い舟に追い風は吹かないので。4年でJ1に行くにあたってやらなきゃいけないことが結果以外の部分でもごまんとありますが、一つ一つ潰していきます。その辺りも選手だけでなく関わるスタッフ含めて全力でやるという決意表明です。

当然、補強もしないとダメですし、スタジアム問題もあります。専用の練習場だとかクラブハウスだとか、その辺りも解決していかないといけません。

本拠地に関しては栗山と札幌。両方で活動させて頂きます。今季に関してはチームの管轄は空知サッカー協会になるんですけど、やりたいことは空知で、札幌で、ということではなく、北海道全体を巻き込んで、Jリーグを目指していきたいと思っているので、そういう意味では栗山と札幌を中心にどんどんその輪を北海道中に広げていければと考えています。」

専用練習場やスタジアム建設について具体的な動きはあるのか?そう質問してみると下記返答が矢野社長より返ってきた。

「戦略的な部分もあるので、具体的には現時点でお伝えできないですが、夢は沢山あります。例えば、専用スタジアムで、コンサドーレとダービーをやることもそうです。これだけ広くて、人口がいる北海道で、サッカーチームが1個しかないというのは凄く寂しいことだと思うんです。

北海道ダービーをぜひ実現して、その週の学校だとか、職場だとかでその話で盛り上がってくれたらすごく幸せだなと。それは僕の夢ではあります。

その為にも、まずはBTOPを知って貰い、注目して頂くことも非常に重要なことなので、今後も、色々と仕掛けを打ちながら、随時発表していきたいと思います。」

2022年のチーム編成について

今季のBTOPチーム編成に目を移してみよう。


新体制で契約を結んだ24名に加え、昨年までサンクFCくりやまに所属していた選手も5-6名残り、30名前後で戦う算段だという。

新加入のメンバーには昨年までJ2のツエーゲン金沢で活躍していた本塚聖也を始め、榎本滉大・越智亮介・熊川翔・石渡旭・枝本雄一郎・志村駿太・伊藤研太・佐藤隼・平岡将豪ら北海道リーグでは異例とも言えるような実績を持つメンバーを多数揃える陣容だ。Jリーグ経験者はのべ10人にものぼる。

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そのメンバーを集めるのに奔走したのが西野総監督だと矢野社長は明かす。

「選手を集めたのは全て、西野虎太郎総監督になります。元々の繋がりがある選手もいれば、全く繋がりの無い選手も含めておよそ150名くらいリストアップした中から、本人が描くサッカーをできる選手をピックアップ。そして、ビジョンやチームのやりたいことなどを伝えて、有難いことにこれだけのメンバーが初年度から集まってくれました。

西野総監督は1年中、サッカーを見ていて、同じ選手でも1・2回ではなく、継続的に見ているので。そういう熱意が伝わって、来てくれた選手がいるというのも聞いています。」

チーム編成やピッチ上での指揮も担い、BTOPオンザピッチの最大のキーマンとも呼べる西野虎太郎総監督。

元Jリーガーの矢野社長を持ってして「西野総監督の表現やサッカーのビジョンには敵わないです。相当、勉強もしていて、自分なりの哲学を持っていて本当に凄いですよ」と全幅の信頼を寄せる存在だが、指揮官自身は今季のメンバーに手ごたえを持っているのだろうか?

西野総監督
「自分が指揮する上で最も重視しているのが知性・インテリジェンスです。勿論、今のフットボールはアスリートレベルも高くないといけないですし、パーソナリティも重要ですが、インテリジェンスというのは集団として戦い、勝利を手にする上では欠かせない要素だと思ってます。

今季のチーム編成に関しては、まずはクラブのビジョンの共感だとか。僕の考えへの共感が前提にあった上で、〝可能性〟ということを重視しました。

僕がフットボールの中で大事にしないといけないと思う要素をトレーニングを経て、ピッチ上で表現できる可能性を感じさせてくれた選手たち。あるいは現状でそれを表現できる選手たちで構成できたと思っています。

実際にトレーニングが始まって、本当に刺激的ですし、短期間でもチームが一日一日ブラッシュアップされているんで、間違いじゃなかったなと。手ごたえは非常にあります。」

ちなみに西野総監督の監督業をサポートするのが、コンサドーレのアカデミー組織で育ち、U17日本代表にも選ばれた経験がある杉山雄太監督。
信頼を寄せあう24歳の若き両指揮官がどんなチームを構築するのか?BTOPの見どころの一つといえるだろう。

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また、チーム編成を強化する上で切り離せないのは予算の確保だが、今年の状況は順調だと矢野社長は語る。

「今年に関しては設定予算を問題なく達成できる算段はたっています。ただ、来年・再来年というのも見据えて、今から動いていかないといけないので、そういう意味では上限なくご協力頂ける企業さんを探しています。

目標は本当に明確で、地域リーグを勝ち上がって、来季JFLで戦う。それがまず今季の一番の目標です。」

2022年のミッションはJFL昇格

2022年はJFL昇格に向けて、邁進する1年となるBTOP。

その為には、5月に始まる予定の北海道リーグで北海道十勝スカイアースやノルブリッツ北海道といった道内強豪チームとの争いを制することが大前提となる。

そして、その先。全国の強豪チームが集結する地域CLに出場し、上位2チームに入ること。2012年のノルブリッツや2020年のスカイアースが地域CLで上位進出した過去こそあれど、未だに昇格条件を突破できた道内チームはない。

〝北海道〟にとっては未知の領域となるが、矢野社長と西野総監督は揃って自信を示す。

矢野社長
「当然、自信を持って挑ませて頂きます。目的はあくまで勝つことです。そこはぶれずにやりたいなと。地域CLも本当に過酷な戦いですが、そこを踏まえての今回の選手補強だということは西野総監督も自信を持って言っているので。西野総監督を信用して、そのサポートをしていきます。

私の役割は、ハード面でもソフト面でも、選手たちがよりサッカーに集中できる環境を整えることです。来年・再来年で更に飛躍する準備を、今から、精一杯やらせて頂きます。そして、まずは北海道リーグから盛り上げていきたいと思います。」

西野総監督
「不安は一切ないです。地域CLを見続けてきて、僕は勝ち方を分かっているので。後はトレーニングの中で、選手たちに浸透させて、適切な役割を与えて、選手たちを躍動させるだけですね。

僕の仕事は、このチームを勝たせることです。」

西野総監督にBTOPはどんなサッカーを見せてくれるのか?そう問うてみた。

西野総監督
「あ!なんか他のサッカーと違うな!」というのは感じれると思いますし、一つの集団として、生き物として躍動している姿を見られるはずです。

僕はこの北海道に、コンサドーレと並んで、そしてそれを超えていくようなフットボール文化を植え付けたいと思っています。」

強気な姿勢を崩さない指揮官だが、その根底にあるのは溢れ出るサッカーへの情熱。そして、自身の哲学への自信だろうか。北海道にフットボール文化を根付かせる。その為にBTOPで推し進めることとは?

西野総監督
「まずは勝つことですね。やっぱりどれだけ他が魅力的でも勝たないチームに価値はないと思っているので、まずは競技で成果をしっかり出します。

そして、熱狂させたいんですよ。
そのためにはやっぱり表面的なフットボールの魅力では弱いと思っていて、もっとフットボールを知りたくなるし、学びたくなるように。僕はBTOPの試合を見に来てくれた子供たちの会話の質すら、変えていきたいんです。

「カッコいいな」とか「やばいシュートだね」じゃなくて、「あれどうやって得点までつながったのかな?」とか「なんで今日BTOP負けたのか?」とか。僕が思い描くサッカー文化と熱狂は、最終的にはそこに詰まっているのかなと思います。

最近、サポーターの中でも独自の目線でフットボールを捉えている人が結構いると思っていて、個人的にもすごい興味がありますし、そういう人たちにも刺さるような・届くような。あるいは一緒に作り上げている感じゃないですけど、そういった文化を一緒に作る最初の一年にしたいと思います。

まずは5月の道リーグ初戦の会場に来て頂ければ、このプロジェクトのファースト試合にふさわしいようなフットボールをお見せできると思っているので。ぜひ会場に足を運んでください。きっとBTOPの虜になってくれると思っています。」

断固たる決意で臨むのは西野総監督だけでなく、矢野社長も同じ思いだ。

矢野社長
「何としてでも、北海道に2つ目のJリーグチームを作ります。そして、BTOPというチームを通じて、地域の方々ですとか北海道の方々が少しでも楽しんで頂いたりだとか、子供たちの夢になったりだとか、何か励みになる存在になりたいんです。

その思いに共感して、目標に向けて、一緒に戦ってくださる仲間を募集中です。北海道をどんどん発信していきたいですし、世界に向けても発信していきます。

そういう意味ではBTOPとしての活動はまだまだ始まったばかりですが、応援して下さる方を沢山集めていきたいと思いますので、北海道に2つ目のJリーグチームを作るという目標の為に皆さん、一緒に戦ってください!」

2022年、新たなスタートを飾るBTOPはどんな旅路を送るのだろう。

果たして、本当に北海道から新たなムーブメントが起きるのか?

今後の行方を注視していきたい。

「BTOPサンクくりやま」
船出の一年に期待してみよう。

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