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【インタビュー】佐藤大樹(法政大)がFC町田ゼルビア入りを決断した理由

近年、大学サッカー出身選手の
Jリーグでの活躍は枚挙にいとまがないが、
2022年に新入団を予定される
現大学4年もその例に漏れず
プロ初年度から活躍が見込まれる逸材が揃う。

中でも金の卵が揃う
関東大学サッカーリーグの中で
現在得点ランキング1位に
立っている男の存在を御存知だろうか?

佐藤大樹・22歳

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現在、リーグ戦で首位を走る
法政大学4年のエースFWだ。

早さ・強さ・献身性を併せ持つ
左利きのストライカー

そんな佐藤にはJ1クラブを含む
複数チームが獲得に興味を示したが、
4月末、J2のFC町田ゼルビア入りへの加入を発表。

佐藤大樹が下した決断の背景
これまでお世話になった方々への思い
そして、プロ入りに懸ける断固たる覚悟に迫った。

佐藤大樹のこれまでの歩み

幼稚園でサッカーを始め、地元・札幌の
クラブフィールズで競技を本格的にスタートさせた佐藤。

小学卒業時にはオファーを貰った
コンサドーレ札幌U-15へ入団。

その後、学生サッカーのトップカテゴリー・
プレミアイーストに所属していたコンサドーレ札幌U-18に
昇格する事にも、なんら迷いは無かった。

特に同じポジションで同じ利き足だった一学年上の
菅大輝に大きな刺激を貰いながら、練習に励む日々。

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「ユースの頃に少しサイドハーフもやりましたけど、
基本的にはこれまでずっとFWをやっています。
高1の時は中々試合に絡めなかったですけど、
それでも菅選手などから学んだ物は大きかったですね」

2年生になると、その成長した姿をピッチ上で示した。

前年にプレミアイーストからプリンスリーグに
降格してしまった悔しさを晴らすかの如く、
11ゴールを挙げ大会得点王を獲得。

高校卒業後のトップ昇格に向けてこのまま
アピールを続けたい所だったが、
10月のJユースで佐藤に悪夢が襲った。

試合中に右膝の半月板を負傷
全治8ヶ月

「高2高3で活躍をして、トップチームに昇格するという事を
イメージしていたのに、本当にこれから!という時期に
怪我をしてしまって。。。自分の将来とかも不安になって
悔しくて悔しくて。泣いてしまいましたね」

しかし、家族・チームメートやスタッフを
中心とした数えきれない程の支えもあって、
2017年の6月に佐藤はピッチ上に戻ると
すぐにゴールラッシュ!

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プリンスリーグで計14ゴールをあげるなど
チームの連覇に導くと共に
個人としても2年連続大会得点王にも輝いた。

しかし、、、
トップ昇格という吉報は届かなかった。

「クラブユース明けにこれが〝最後の機会〟と言われて、トップの練習に
参加させて貰って、その期間が終わった後にユースの監督から
『昇格出来なかった』という電話を貰いました」
「同期からプロに上がった選手(藤村怜)がいた事は嬉しくもある一方、
悔しさの方が大きかったですね。ずっとそこを目標にやってきたので、
本当に本当に悔しかったです。同時に絶対、大学に行ってプロになってやるという気持ちが芽生えたので、すぐに切り替えました」

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大学卒業時のプロ入りを見据えて
佐藤が進学先に選んだのは
関東大学サッカー1部リーグに所属する
強豪・法政大学だった。

「正直に言うと、高校卒業後にプロですぐに通用する自信は無かったです。
でもレベルの高い環境で自分の成長に繋げて、上手くなって試合に
出るという気持ちでいたので、高卒でプロにいきたかった。」

「入学当時、大学の事はあまり知らなかったので、プロより低い
レベルなんだろうだと思っていたので、最初そのレベルの高さに触れて、
驚きました。」

当時の法政大のFWは
ディサロ 燦 シルヴァーノ(清水エスパルス)
上田綺世(鹿島アントラーズ)

などが揃って在籍する
ストライカー・佐藤大樹にとって最高の環境であった。

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「自分にはない味方への要求の質であったり、守備の仕方や動き出しなど
レレ君や綺世君のプレーや振る舞いを身近で感じられたのは僕の財産です。絶対にここで成長できる!頑張ろうと思いました」

特に1学年先輩に当たった上田綺世には
公私に渡って目を掛けられた。

「ピッチ外でも綺世君は特に可愛がってくれて、ご飯によく連れて行って貰って、自分のプレーと綺世君のプレーを比較して色々と教えてくれました。特にポストプレーの時の身体のぶつけ方や駆け引きの仕方などは自分の中でも大きく変わった部分だと思います」

そんな憧れの先輩の背番号20
大学2年の時に佐藤は引き継ぐ事になる。

「背番号を決める時に『大樹、何番にするの?』と聞かれたので、『綺世君の付けていた20が欲しいです』と言ったら、『お前が20をつけろ!」と
言われて20番を選びました。正直、狙ってたんでめっちゃ嬉しかったです」

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20番を引き継いだ佐藤は大学2年でトップチームに定着し、
リーグ戦ではチームトップとなる5ゴールを記録。

「綺世君や他の先輩方からの助言を吸収して、少しずつ結果に繋げられた
年になった」と手応えを感じていた。

一方、この年の夏、懇意にしていた上田綺世は
法政大学サッカー部を退部し、入団が内定していた
鹿島アントラーズへ前倒しで加入する運びに。

その際にも佐藤へ上田から期待の言葉が掛けられた。

「これからはお前がチームを勝たせるんだ」

「綺世君は身近にいながら、憧れでもあり、大きな存在。
そういう存在がいたからこそ、自分の成長に繋げられました。
でもいつか追い越したい存在ですね」

だが、憧れの先輩との約束を果たし、
プロ入りに向けても勝負の年と誓った
2020年は未曾有の年となってしまう。

コロナの影響で法政大学も2020年のうち、
計4ヶ月近くもチーム練習を休止。

多くの大会が中止や延期されると共に
佐藤も予定していたプロチームへ
練習参加する機会を失った。

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「試合でアピールする機会が無くなって、自分の将来を考えても厳しい状況だなという焦りは当然ありました。でも試合が開催される見込みという事が分かってからは、とにかくいつ試合が来ても活躍する為の準備を毎日、欠かさずやりました」

だが、待ちに待って再開された大学3年時のリーグ戦。
チームも個人もその思いとプレーが中々噛み合わない

「前期は各々の方向がバラバラでチームにまとまりが無かった。
でもコロナの影響で再度、活動停止した後からは
チームがまとまって来て、自分も結果を残す事が出来たと思う。」

中断明けのラスト9試合で5ゴールをあげるなど、
佐藤は得点を伸ばし2020年のリーグ戦は計8ゴールを挙げた。

「正直、二桁得点は取りたかったので8得点という数字は
満足出来ないですけど、サッカー以外の面でも
大きな事を学べたシーズンでした。
法政のコンセプトに〝謙虚に〟〝粘り強く〟というワードがあって、
上手くいかない時の振る舞いであったり、その後の行動は
改めて大事だなと今、本当に実感しています」
「高校の時は投げやりというか‥全国大会で負けていた時なんかはチームの事を考えられず、自分の事しか考えられない事もあったんですけど、、、
大学で色々な選手・考え方・学びを経験して、今、チームの為に何が出来るか?周りへの配慮だとかそういう面では大きく成長出来ていると思います」

高卒の時点ではプロで活躍する自信は無かったという佐藤だが、
「今はその自信があるか?」聞いてみると
間髪入れずに力強い言葉が帰ってきた。

自信はあります。大学の環境でずっとプロで通用する選手をイメージして取り組んできたので。今はプロでやっていく自信はあります

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ゼルビア入りを決めた理由

そして、冒頭に記した通り
佐藤は今年の4月末に
4年越しとなるプロ入りを
遂に内定させた。


プロ入りを決めて、今の率直な想いは?

佐藤に質問すると、実にその返答は
幼少期からFWという生業で
生き残って来た男らしさが
溢れるものだった。

「ホッとしているという気持ちがありますが、これはスタートラインです。
自分はFWなので、数字に拘って、自分の存在価値というのを
皆に知って貰えるように頑張りたいですし、
大学4年の今年から試合に出て、結果を残すつもりです。

FC町田ゼルビアは佐藤大樹というストライカーの能力を
一番評価したクラブだったのかもしれない。

1月下旬、いの一番に佐藤の練習参加を要請し実現させると、
そこでのプレーも高く評価したクラブからは
正式な獲得オファーが追って届いたという。

「ゼルビアは練習参加の時から本当に高い評価をしてくれました。
僕自身、練習試合でも得点を取れたり、自分の持ち味である左足や
ヘディングを出せましたし、素晴らしいチームだなと思いました」


ゼルビアの熱意は充分過ぎる程、伝わってきた。
自身を高く評価し、球際や切り替えを大事にする
ゼルビアのサッカーは自身の特徴ともフィットすると感じた。

だが、佐藤はオファーを貰った後も
入団の即断をせず、
法政の同期が次々と入団内定を決めていく中でも、
じっくりじっくりと進路先を吟味した。

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サッカー選手として、どのクラブに進むのがベストなのか?
考えに考え抜き、4月末に佐藤はゼルビア入りの決断を下す。

同時期にはJ1のクラブからも声が掛かっていたが、
佐藤大樹がプロキャリアを歩み出すクラブは
FC町田ゼルビアしかない。
そう判断したのだ。

「ゼルビアには長らくお待たせしてしまいました。
すぐには決断できなかったんですが、今考えてみても
一番早いタイミングで声を掛けて下さったクラブに加入できた事は
本当に幸せな事だと思います。
自分のストロングポイントをゼルビアはしっかり評価してくれて、
活躍する上でゼルビアがベストだと思ったのが
入団を決断をした最大の理由
です」

「ストライカーは特殊なポジションです。
結果を残し続けないと、この世界で生き残っていけない。
試合に出ない事には自分の価値も上げれないんです。
そういう事も考慮して、ゼルビアさんにお世話になると決めました。

考えに考えての決断なので、この決断には自信を持っていますし、
自分の価値を上げていく為にも、ゼルビアの昇格の為にも
試合に出て、得点を取っていきたいと思います」

その決断を地元・札幌の両親や中学・高校年代を過ごした
コンサドーレ関係者に伝えた所、みんなが背中を押してくれたという。

「親もゼルビア入りを本当に喜んでくれました。高校の時は昇格出来ませんでしたし、みんな次のステージに進めて、ホッとしている感じでもありましたね。今は離れていますけど、試合も見に来れる状況なら絶対に行く!
と楽しみにしてくれていました。」

「札幌スカウトの智樹さんからも電話を頂いて、自分の決断を後押ししてくれました。「これからも大樹のプレーを見ているよ」という言葉も貰って
非常に嬉しかったです。コンサドーレが故郷の心のクラブという
事実は僕にとってずっと変わらないので。」

ゼルビアで点を取るイメージは出来ている

Jリーグでも数多の経験を積む
ランコ ポポヴィッチ監督が率いるFC町田ゼルビア。

ハイプレス・ハードワークを基調に
現在、J2で6位と快調なシーズンの船出となっている。

基本システムは442。

縦関係がベースの2トップには
レジェンド・中島裕希と長谷川アーリアジャスールという
経験豊富な2選手が現在の基本陣容となっている。

「ゼルビアの試合はよく見ていますね。
切り替えの所は本当に大事にしているチームです。
攻撃から守備に切り替わった時の速さだとか、守備から攻撃に出ていく
ランニングの量とか質とかというのは本当に意識していて、
そういった所は今の法政でも凄く大事にしているので、
自分もそういったチームコンセプトには合っていると思います。

攻撃のところはみんな技術が高くて、1タッチの質とかクロスの質とか見ていても、こういうボールが来たら自分もゴール前でゴールを取れるなという
イメージは出来ていています。

中島選手を始め、前には実力のある偉大な先輩FWの方が沢山います。
本当に盗める所も沢山ありますし、自分が成長出来る環境だと思います。
1年目から、積極的にコミュニケーションをとって学んでいきたいなと。

でもやっぱり、一番上の1トップがやりたいですね。負けないように頑張ります。」

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大手IT企業の株式サイバーエージェントが
経営権を取得したゼルビア。

今季は鄭大世、長谷川アーリアジャスール、高橋祥平、ドゥドゥ
など充実の戦力補強を遂行する一方、
クラブハウスとトレーニング施設も
今年中には完成予定。
ソフト・ハード両面が急ピッチでJ1仕様に整備されている。

実際に佐藤もゼルビア加入の一因に
環境面の整備があったと語る。

「スカウトの方もゼルビアのビジョンを色々と話してくれました。
グラウンドもクラブハウスも新しくなっていたりして、
環境面が素晴らしいなと思っていて、そういう環境があるのも
自分の決断の一つの理由でもあります。今後自分の成長も楽しみですけど、クラブの成長というのも楽しみにしています」

果たして佐藤大樹はFC町田ゼルビアで
どれほどの活躍が出来るのだろうか?

今後のクラブへの帯同はゼルビアと大学との調整をしながらに
なりそうだが、見据えるのは今シーズンのプロデビュー弾だ。

「やっぱり、一日でも早く試合に出て、デビュー戦で
ゴールを決める
ことをまず強く意識しながら
トレーニングしたいと思います。
僕は今年から必要とされる選手になりたいと思っているんです。
その為に自分の武器である、左足のシュート・ヘディング・前からの
迫力ある守備だったりというのをアピールしてメンバーに食い込みたいなと。今年は、大学に在学しながら登録される特別強化指定にはなりますが、
本気で今年からメンバーに絡んで結果を残すつもりです」

4年越しに叶ったプロの舞台での背番号には29番を選択した。
高校1年生、大学1年でも付けていた佐藤にとって
節目節目で身に着けた始まりの番号だ。

一体、彼はどんなプロサッカー選手になりたいのだろうか?

「法政の選手間でもよく話すんですけど、影響力のある選手になりたいんです。ピッチ内外の僕を見て、周囲からこういう選手になりたいと思って貰えるような選手になりたいですね。法政に入って学べた事というのは本当に大きくて、人間性の所では大きく成長できたのかなと思います。特に同期の田部井涼(法大4年・横浜FC内定)が本当に凄いと思っていて。
身の回りの悪いことをしっかりと指摘出来て、サッカーでもチームの為に走れて細かい所まで指示出来たり、身近にこういう選手がいることに誇りを感じていますし、彼や偉大な先輩方と共にプレーした財産を今後のサッカー
人生に活かしていかないといけません。」

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関東大学サッカーリーグは現在5試合を終え、
法政大学は首位。
佐藤の他にも田部井涼(横浜FC内定)、松井蓮之(川崎F内定)、
蓑田広大(湘南内定)など実力者が多く揃っているだけに
1979年以来となるリーグ優勝を本気で見据えている。

また、佐藤個人としてもここまで5ゴールを上げており、
現在、リーグ得点ランクトップ。

プロデビュー弾を狙うと共に
大学ラストイヤーも華々しく飾るつもりだ。

「法政大学では4年生としてサッカーに注力し、
目標である「五冠」を達成できるように全力を尽くします。
得点王も強く意識していています。今の5得点では
すぐに抜かれると思うので毎試合リーグ戦で
得点を取る気持ちで。そしてチームを優勝に導けるように
頑張りたいなと思います」

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そして、最後に長年、育った地元クラブのコンサドーレサポーターと
これからプロキャリアを共に歩むゼルビアサポーターに向けて
メッセージを貰った。

コンサドーレサポーターの皆さん

札幌のアカデミーでプレーしていた時から、
色々な方々のサポートだったり応援があってこそ
僕はここまで来れたと本気で思っています。

応援して下さった皆さんを笑顔に出来るように
自分のゴールで恩返しをしたいと思います。

来年からプロ1年目の始まりになるわけですけど、
僕は今年から試合に出て自分の価値を上げて、
もっと色々な方々に応援されるような
選手になれたらと思うのでこれからも宜しくお願い致します!

Twitterなどでもコンササポーターの方々が
応援して下さって嬉しかったです。いい結果を届けます」
ゼルビアサポーターの皆さん

プロ1年目という所で慣れない点もあると思うんですけど、
ピッチの上に立ったら貪欲にゴールを狙い続けて、
ゼルビアの勝利に貢献できるように
泥臭く頑張っていきたいと思ってます。

左足のシュートとゴール前の迫力。ヘディングのシュート。
前からの迫力あるチェイス。なんかに特に注目して欲しいです。

目標のJ1昇格に貢献出来るような活躍をするとともに、
個人的には影響力のある選手になりたいと思うので色々な方々に
この選手凄いなとか、応援したいとか思って貰えるように
頑張っていきたいなと思います。

応援の程宜しくお願い致します!


最後に聞いてみた。

J1でゼルビアとコンサドーレが
戦う未来も近くに来るかもしれないね。

するとニヤリと笑って
佐藤大樹は答えた。

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「その時は全力でぶっ倒したいですね!」

そんな未来が来るのも悪くない。

また別の可能性もあるかもしれない。

その道を切り開ける実力と覚悟を
持っている選手だと思う。

ただ、どんなプロ生活になるにせよ
充実した旅路となることを
切に願いたい。

両サポーターの皆さん

佐藤大樹の応援を引き続き
宜しくお願い致します!

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