【赤黒のエースになる男】出間思努がトップ昇格を掴むまで
2年ぶりの北海道コンサドーレ札幌U-18からのトップチーム昇格のお知らせのリリースにこぶしを握り締めながら、喜んだ事は言うまでもない。
2023年9月4日、出間思努(いずま しど)のトップチーム昇格が発表された。
昇格が決まった今の思いを本人に問うと
照れくさそうに溢れる笑みはまだまだ、18歳の顔を覗かせる。
「歴代のアカデミー育ちの選手の中でも得点感覚は非凡な物がある。そこに関してはNo.1。」
長年アカデミーに携わるスタッフは彼をそう評す。
当の本人も「俺、ストライカーやなと思います!得点王だったり、1番注目される選手になりたい。」「目立つことは好きです。大好きですね。」と語る、生粋のストライカー気質。
思努という名前の由来は、人に思いやりを持って接し、見えない努力も怠らないこと。
「しっかり、名前が自分の性格になっていると思いますね(笑)」
悪戯っぽく、はにかむ姿も何とも可愛げのある選手だ。
決して、理路整然と言語化することに長けたタイプではない。抜群のシュートセンス・無理の利く身体能力・ゴールへの嗅覚が評価される一方、感覚的にプレーしている点もまだまだ多く、粗削りな側面があるのも否めない。
ただ、クラブ待望、生え抜きのエースストライカーになり得る可能性も十分に秘めた選手だ。
今日は少しばかり、出間思努のこれまでの歩みを振り返りたいと思う。
小学生の頃から能力抜群のFW
小学3年の頃から、コンサドーレのエンブレムを背負い、そして、小学6年では全国大会で大活躍。チームを準優勝に導くなど歓喜も涙も味わった。
「小学生の頃からフィジカル能力は頭抜けたものがあった。トップ昇格は当時からいけると思っていました」と別のスタッフも語るように、札幌育ちの純ストライカーとして早くから期待を集めていた。
そして、特異な身体能力と左足のシュートセンスを武器に、小学・中学ではコンサのエースとして、順調にステップアップを果たした。
だが、高校年代で壁にぶち当たる。その期間、一貫して指導する、森下監督はこう振り返る。
そして、言葉を続ける。
苦しんだ高校2年、飛躍の高校3年
そんな出間だが、新チームが始動した高2の秋口から、飛躍的な成長を遂げた。
皆が「シドが大人になった」と口を揃える変貌ぶりはこちらにもハッキリと分かるものだった。
高校年代の序盤は、それまで武器にしていたフィジカル能力で違いを生み出せず、得点を奪えない日々にストレスを溜めた。
高2の頃には、公式戦に臨むに当たっての試合前の準備の甘さ・自覚の無さを監督から、叱咤され、メンバーに絡めない時間もあった。
だが、出間はそういった指摘を受け止め、しっかりと行動に示すことで、高校のラストイヤーで飛躍的な成長を遂げる。
別の関係者も「今年は、目に見えて日々の態度が変わりました。まず、人の目を見て話すようになった。人の助言にしっかりと耳を傾けるようになり、そして、サッカーと向き合う姿勢も変わった。」と振り返るが、出間本人は苦しんだ期間をこう懐古する。
Q 今年はシドから、最上級生としての自覚が感じられると多くの人物も語っているが?
「自覚ってなんですか?」
Q 最上級生として、チームを行動で引っ張る気持ちのようなものが感じられる。
「そうですね。自覚、出てきました!」
との返答も何とも彼らしさを感じさせるもので印象的だ。様々なアカデミー出身の選手の言葉を聞いて来たが、出間はその中でも他の人々と違った感覚や思考を持っていると感じる。
今冬にはトップチームの沖縄・熊本キャンプに帯同し、大きく評価を高め、昇格を大きく前進させた。
プロの選手の中に混じり、萎縮せずに自分らしくプレーする強心臓ぶりを発揮した出間。
「顔は見たことあるけど、この方の名前は??と名前がわからない状態から始まって…」とトップの選手の名前と顔を把握していなかったことには、同じく練習に参加していたユースの選手からも驚かれた。
ただ、他のユース選手に比べても、堂々とプレーしていた背景には、そういったある意味、無頓着な側面も大きかったのかもしれない。また、トップ昇格が決まる前から、大学進学は彼の中で選択肢に無かった。
なぜそこまで高卒でのプロ入りにこだわるのかを問うと。
トップ昇格決定のリリースでも親御さんへの感謝を真っ先にあげていたように家族の話をしている時、自然と顔が緩む出間。そんな大好きなご両親もトップ昇格の報を聞いた際には涙して喜んでいたという。
余談だが、今年の年初、フットサルで出間親子とご一緒させて頂く機会があった。何とも素敵な関係だなと当時も思ったが、その後の彼の言葉を聞いていると、そうしたことも特別ではなく、日常なんだろうと思う。
改めて、ご家族の皆様、本当におめでとうございます。
ルヴァンカップでの初ゴール!?
そんな出間の名前が、一躍、広がったのは、今年3月のルヴァンカップ・ジュビロ磐田戦でのゴール未遂(試合後、記録が別選手の得点に訂正)とその後のゴールパフォーマンスだろう。歓喜の翌日、出間はゴール裏のサポーターに向かい、膝スライディングをしながら喜びを露わにしたことに関して、こんなことを語っていた。
そんな出間の活躍もあって、ルヴァンカップのグループステージを勝ち抜いたコンサドーレ。
しかし、勝ち上がった準々決勝の横浜F・マリノス戦で敗戦を喫し、今年のタイトル奪取という可能性は現実的に無くなった。
出間は、その一戦に、大会規定のU-21選手として、出場する可能性もあったが、太ももの負傷の影響もあり、チャンスを逃してしまう形に。
コンサドーレの敗戦を画面越しで見つめるだけの状況への悔しさを隠さなかった出間。
幸い、患部は順調に回復しており、来週中に復帰できる見込みだ。
また、同じく、怪我でルヴァンカップでのチャンスを逸してしまった木戸柊摩・西野奨太も言葉を揃えて、今大会に懸けていた強い思いと悔しさを口にしてくれた。
多くの関係者や親御さんの協力も受けながら、コンサドーレのアカデミー組織が手塩にかけて育てた彼らが中心となって、クラブの歴史を創る。そんな未来がきっと、来るはずだ。
出間思努の目指す選手像
最後に今後、どんな選手になりたいのか?出間に聞いてみた。
少し、ヤンチャな一面と多くの人々に愛されるキャラクターを持つ、赤黒育ちのストライカーは、来シーズンから、プロとして新たな航海に出る。
クラブ関係者も「今年は、トップチームの練習参加する度に成長し、評価を高めた。まだまだ荒削りな側面はあるけど、クラブの中心選手になり得る選手だと思っている」とエールを送る。
彼がストライカーとして、プロの舞台で、大成した時、攻撃サッカーを標榜する札幌の未来は更に、明るいものとなっているだろう。
出間思努の今後にぜひ、注目して欲しい。
トップチームでもまた、赤黒のエースに相応しい漢へと成長してくれるはずだから。
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