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金子拓郎のクロアチア・ディナモ・ザグレブ 移籍決断に思う事

遂にこの時が来た。そんな思いだ。

2023サポーターズデーで金子拓郎のNKディナモ・ザグレブより正式なレターが届き、交渉締結に向けてクラブも進める方針を発表した。欧州CL(チャンピオンズリーグ)出場の可能性もあるクロアチアの名門クラブだ。

思い返せば、日本大学で異彩を放つ男のプレーに一瞬で心を掴まれた。

そんな彼がコンサドーレに加入する事に胸が躍り、必ずやコンサドーレの誇りとなる選手になると確信めいた思いに。

一部では同年に獲得に乗り出していた左利きのドリブラー紺野和也の代役として、獲得したという認識があるようだが、それは違う。
2018年のデンソーカップで見せたプレー振りからクラブはマークを続けていた。
そして、日本大学在学中に訪れた北海道合宿で見せた金子のプレー振りにクラブは再度、惚れ込み、帰京予定だった彼を引き留め、トレーニングに呼び、獲得の方針を固めた。

「札幌に拾って貰った」と本人は挨拶で謙遜していたが、当時から、光り輝く原石のような選手だった。

ちなみに日本大学の恒例となっていた、北海道合宿はコロナ禍を経た、現在行われていない。あの年、北海道合宿が無ければ違った未来になっていたかもしれないが、これもコンサドーレと金子拓郎のきっと運命だったのだろう。

そんな金子がプロ入り後、他クラブから食指を伸ばされたのも一度や二度ではない。在籍2年目の夏に、年俸が2倍以上に及ぶビックオファーが届いたとの報が伝わって来た際、新たなチャレンジを選択しても致し方ないとも感じた。

その後も、国内の複数メガクラブが、複数のタイミングに渡り、彼の獲得を望んだと聞く。

だが、彼は赤黒のユニフォームを見に纏う事を選択し続けた。

途中出場が続いたシーズン序盤を経て、自身の存在価値を徐々に示し、クラブでの立ち位置を確立した1年目。

ドリブル数でリーグNo.1を記録するなど、リーグ屈指のドリブラーとの声が囁かれ出した2年目。

〝金子包囲網〟が強まる中、飛躍に向けた溜め込みの年にもなった3年目。膝の痛みとも付き合いながらピッチで奮闘し続けてくれた。

そして、4年目の今シーズン。チームの象徴的な選手として、クラブ内外に認知されるように。得意のドリブルの使い分けの判断がより整理され、得点に関与するシーンが激増。最早、チームを背負って立つような存在だ。

そんな彼のプレーや振る舞いは間違いなくサポーターの心にも届いている。

印象的だったのは2023ホーム開幕戦となったVS神戸戦。

完敗を喫した札幌ゴール裏からは「金子!お前がチームを引っ張っるんだぞ!」

苦しむチームを引っ張るのはきっとこの漢になるとの思いがゴール裏から、生の言葉として金子に発せられた。

そして、あの敗戦から約1ヶ月。背番号9を背負う男へサポーターから応援歌がお披露目された。コロナ禍を経て満を持して作られたとも言える。

歌詞の一部には、俺らの金子拓郎という言葉が入っている。

札幌の応援は、言葉を大切に大切に紡ぐカルチャーがある。一言一句に、吟味を重ねた想いがある。

砂川誠や宮澤裕樹など、クラブの象徴的な選手にしか用いられていない、
俺らの〟という言葉がチョイスされた事に自分は胸が震えた。

4年前に記した記事の通り、俺たちの誇りとなるような選手になってくれたんだ。そう感じられた気がしたのだ。

出来れば、直近のリーグ戦も勝利し、綺麗な形で送り出せたらという想いもあるし、本人もそのような想いなはずだ。

ただ、特別強化指定も含めた、この5シーズン。金子拓郎という男がコンサドーレで築いたキャリアは、前記の歌詞や今日のサポーターからの反応からも一目瞭然だろう。後ろめたくなる要素など一切ない。

プロキャリアを札幌一筋で貫いた選手が、直接ヨーロッパの1部クラブにチャレンジするのは初めての事例だ。決して遅すぎる挑戦でないことは、過去の欧州挑戦の事例からも自明だ。

目の前に何人ものライバルがいようが、華麗にごぼう抜きするのが、金子拓郎の十八番でもある。

ここから、クロアチアリーグ。ヨーロッパチャンピオンズリーグ。そして、日の丸を背負って、ワールドカップ出場。

そんな未来絵図が叶う事を心より応援していきたい。

サポーターズデーの最後に金子はこう語った。

「もっともっと大きくなって、日本代表を目指して頑張りたい。いつか“金子拓郎は札幌が育てた”とみなさんが胸を張って言えるような選手になります」

今でも、十分過ぎるほど、胸を張って送り出せる選手だろう。ただ、これからもっともっと多くの人々が金子拓郎という名前を知っていく事になるはずだ。

その時は改めて、「金子拓郎は札幌が育てたんだ!」
と世界のフットボールファンに北海道から鼻高々に語ろうではないか!

俺らの金子拓郎なら、必ずや一層、上のステージへ行ける。

この5シーズン、金子拓郎のプレーを見続けられた事を誇りに思う。

そして、ここからは世界を舞台にその実力を証明して欲しい。

そのドリブルは誰にも止められないはずだ。

5シーズン本当にありがとう。いってらっしゃい!

※写真提供 中隊長さん


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