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#51「くるみ〜受け入れる覚悟〜」

中学生の頃、同学年の一人が近所のコンビニで万引きをして、警察沙汰になったことがあった。加害者となってしまった彼とは、小学生の頃はよく一緒に遊んでいたものの、中学進学してからはクラスが違うこともあって、関わる機会が少なくなっていた。当時は、同級生が犯罪を犯してしまうのかという驚きと、あいつがまさかという悲しみの感情が相まっていたのを思い出す。その後、彼との関わり方について、中学生の自分なりに考えた。犯罪を犯した人に同情をしていいのか、厳しく接しなければならないのではないか、でもやっぱりあいつがやったことを信じられなくて庇いたくなる気持ち。結局その当時から答えは出ていないけれど、今まで信じていたものにある日突然として道徳的に裏切られてしまった時の感情は、本当にもどかしい。もどかしくてやるせない。直接被害や加害に関与していたわけではなくても、当事者が自分に関わりがあったという事実だけで、私はいたたまれない感情に苛まれた。

昨夜、あの頃と似たような出来事が起こったことを知ってしまった。LINEを通して事実を知ったものの、起きた出来事と加害者の彼の名前が分かった時、心を鷲掴みされたような大きな衝撃が身体中を走り回った。ここ最近生きてきた中で一番の衝撃で、かつしぶとく身体を蝕む感覚。蛇の毒が身体中を蝕むようで、一日経った今も心臓を縛り続けていて胸が痛む。

まさか彼が、いやでも心当たりがあったかもしれない。自分の中で彼との会話や思い出がフラッシュバックされてきて、勝手に詮索を始めてしまう。彼はいつから変わってしまったのか。そもそもそういった感情を常に抱えていたのか。私に何か出来ることはなかったのか。たった一つの事実に対して、無理矢理にでも勝手に結論を導き出そうとしてしまう自分もまた嫌いだ。

犯罪を犯してしまった彼を擁護することは到底できない。一つ思うことは、彼はきっとものすごく恵まれた人生を過ごしてきたのではないだろうか。過去に私のように友人が犯罪を犯し、第三者である人も心苦しくなることを知っていれば、自身が同じようなことを犯してはいけないと学ぶことができる。もちろん彼にも事情はあったのかもしれない。それでも、自分の無責任な行動がどれだけ周りの人に悲しみを与えてしまうのか、彼はその経験がなかったんだと思う。彼のことを人として尊敬していたからこそそう思いたいのかもしれないけれど、彼との思い出を振り返ると、どうしてもその答えに結びつけようとする自分がいるのだ。

人生には、受け入れたくなくても受け入れなければいけないことがある。今はまだ受け入れられないけれど、この事実と向き合い、一歩ずつでいいから受け入れ、前に進んでいこうと思う。

希望の数だけ失望は増える
それでも明日に胸は震える
引き返しちゃいけないよね
進もう 君のいない道の上

Mr.Children「くるみ」

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