今日を生きるための光|HIKARU UTADA SCIENCE FICTION TOUR 2024
台風予報の8月31日、Kアリーナ横浜で宇多田ヒカルのライブを観てきた。
天候の心配は勿論のこと、ここ一週間ほどずっと体調が優れず、果たして当日ライブに行けるのかが心配になっていた。
仕事も料理も、日課になっていたnoteでの日記でさえも手につかず、終わらない頭痛と共に生きてきた日々だった。
しかし「手術前に宇多田ヒカルのライブに足を運びたい」という気持ちが勝り、天候にも体調にも負けず、無事当日を迎えることができた。
ライブまでの道のり
乱れたダイヤの中、なんとか新横浜駅に辿り着きカフェで休憩。湿度が高く蒸し暑い空気をくぐり抜けてきたせいか、喉がカラカラだった。念のため開場の15時くらいには新高島駅につけるように電車に乗った。
乗り換えで横浜駅に着いた時点で、宇多田ヒカルのライブTシャツを着た人たちにすれ違う。CDジャケットデザインやクマちゃん柄のTシャツを身につけている人が多く、我々夫婦と同じデザインを買っている人はあまり見かけなかった。
人混みで夫も私もすでに余裕がなくなっていたが、グッズのタオルも買いたいし記念撮影もしたいしで、早めに会場入りすることにした。
煽るようなアンパンマンミュージアムの壁画を横目に歩き進め、Kアリーナに到着。意外とグッズの待機列は少なく、スムーズにタオルを購入してから記念撮影をした。
気になっていた宇多田ヒカルのファン層は、50代くらいの夫婦もいれば20代のカップルや友達同士などもおり、性別と年齢のボリュームゾーンというものが存在しなかった。それだけ彼女の歌が国民、ひいては世界中から愛されているということなのだろう。
女性が多すぎなかったお陰かトイレも全然並ぶことなく、余裕を持って席に着けた。席は一番上の7階席であったが通路側であったため圧迫感がなく、個人的にはいい席だったように思う。
歌詞が響いたライブ前半
大きな重低音と共に、いよいよライブの幕が開ける。
最初の曲はまさかの『time will tell』。
元々好きな曲だったが「時間がたてばわかる だからそんなに焦らなくたっていい」という歌詞の時に映し出された宇多田ヒカルの顔が晴れやかで、慰められている気持ちになった。
その後、立て続けに『Letters』『Wait & see』などが披露される。このあたりの曲は普段あまり聴いていなかったが、「占いなんて信じたりしないで」の歌詞にドキッとした。不安になるとすぐ占いを信じるので。
途中、MCを聞いて驚いたのが、友達にさっき見たことを話すテンションで大勢の客に語りかけていること。「さっき会場の一番上の階まで見に行ってみたんだ〜」とか「コンタクトを6年ぶりに変えたら医者に怒られた」など、いちいち話が面白い。
前半で特にテンションが上がったのは『光』と『DISTANCE』。
2024年再収録バージョンの『光』は、原曲よりもポップな感じでノリノリになりながらも、テレビを消して見つめ合う私と君の世界観は崩れていない。
そしてこれまでは『DISTANCE』よりも『FINAL DISTANCE』の方が好きだなと思っていたけど、アップテンポで赤色に点滅するステージで歌う宇多田ヒカルを見ていたら、『DISTANCE』の良さに気付かされた。
「無理はしない主義でも 君とならしてみてもいいよ」という歌詞が好きすぎて、いつか愛って何ですかと人に問われた際の回答にしようと思っている。
印象に残ったMC
中盤、宇多田ヒカルがMCでデビューからの25年間を振り返っていた時の言葉が心に響いた。
「この25年間、いいことも悪いことも、希望通りでなかったことも沢山あったと思うけど、その全てが今日という日に繋がっているよ。」
「これからの25年間も、とりあえず頑張って生きていこう!」
私は現在26歳なので、宇多田ヒカルがデビューしてから今日までがほとんど人生の長さと一緒である。
いいことも悪いことも、沢山あった。希望通りにならないことは、大人になればなるほど思い知った。
それでも大学時代に孤独に宇多田ヒカルを聞いていたあの日が、今の夫と同じアーティストが好きだと発覚したあの日が、私を今日に連れてきてくれたのだと思うことができた。
宇多田ヒカルの良いところは、生きるということに"とりあえず”をつけてくれるところだ。生きることには別に気合を入れなくても、『BADモード』の歌詞のようにパジャマのままでネトフリでも観る日があってもいい。
だからとりあえず、とりあえずでいいから、また一日を積み重ねて行けたら。
MCの後、視界が暗転したと思ったら、なんと次は『First Love』だった。
ステージの先で一人ポツンと歌う彼女の声に圧倒されて、涙がボロボロ出てきた。何回も聴いている曲なのに、心が震えた瞬間だった。
その後は『Beautiful Word』。エヴァにハマって宇多田ヒカルの魅力に気付いた身からするとたまらなかった。演出のライトも紫色になっており、初号機の概念(?)を感じることができた。
途中『ぼくはくま』などの癒し曲を挟みつつ、『Keep Tryin'』を歌ってくれてテンションが上がった。改めて聴いてみると、宇多田ヒカルは日常に根ざした歌を作っているなと思う。我々が日々に彩りを感じていないだけで、疲れて帰ってきた日もうんざりする世の中も、歌になる価値はあるのだ。
終盤、夫と「ライブで歌わなそうだけど聴きたい曲」として挙げていた『誰かの願いが叶うころ』のイントロが流れた瞬間、二人して目を合わせた。とても暗い曲だけど「誰かの願いが叶うころ あの子が泣いてるよ」という歌詞は、恋愛にだって戦争にだって当てはめることのできる真実だと思う。
「この曲が最後です」と宇多田ヒカルが言った時、流れてきたのは『君に夢中』だった。私がライブで一番聴きたかった曲で、夫と付き合う前に彼からメッセージが来た瞬間に脳内再生された思い出の曲だ。
ドラマ『最愛』との親和性も高く、途中で聞こえるサイレンや物語によって「誰の、何に対する愛なのか」が変化して聞こえるあたり、宇多田ヒカルはドラマ主題歌を作る天才でもあると思う。
アンコールの余韻とライブ後の晩餐
あっという間に公演が終了し、お次はアンコール。
宇宙人みたいな格好をした人が二人現れて、「椎名林檎?!二時間だけのバカンス?」と興奮していたら、ダンサーの方だった(早とちり)。
部屋着みたいな格好の宇多田ヒカルが後から登場して、『Electricity』と『Automatic』をリズミカルに歌ってくれた。
アンコールだけ撮影可能だったので、星空みたいな客席と眩しいステージを少しだけ撮った。アンコール前、宇多田ヒカルが「撮影なしだとみんなの顔がよく見えて嬉しい!今を楽しもうね。」と言っていて、なんでもかんでも写真を撮るのではなく、今を噛み締めることがライブの醍醐味だよなと思えた。
高揚した気分で終わったライブ。夫と二人で感想を言い合いながら、横浜駅で意味わからないくらいパンチの効いた夜ご飯を食べて一日を締め括った。
入院生活、そしてこれからに向けて
いよいよ数日後から8日間の入院生活が始まる。
宇多田ヒカルから沢山パワーをもらったから、きっと大丈夫だ。
人生初めてのことで緊張しているけど、この手術が自分にとっていい方向になることを願っている。
不安な私の心の支えになるようにと、今朝夫が妻をテーマにした記事を書いてくれた。ちょっと恥ずかしいけど、彼はとてもうつくしい言葉を書くので是非読んでみてほしい。
手術が終わって、順調に回復したらやりたいことがいくつかある。
noteで自己紹介記事を書くこと
スマホ時間を1日1時間にすること
11月くらいに簿記の試験を受けること
ポッドキャストの公開イベントに行くこと
瀬戸内海の静かな島でゆっくりすること
韓国旅行にチャレンジすること
そしていつか、宇多田ヒカルが再びライブをする時はまた夫と足を運びたいと思う。