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#わたしの本棚〜今日の一冊〜

タイトル『宮沢賢治のレストラン』
中野由貴(文) 出口雄大(絵)
発行・平凡社 ジャンル・エッセイ

これは、深夜にふと小腹が空いたと思った時、決して読んではいけない本である。

もうかれこれ30年程前に出版された本で、本棚の隅で静かに時を過ごしていたようだが、つい先日、たまたま冒頭の時間帯に目にし、久しぶりに手に取ってしまった…。
柔らかな色調のイラストの扉を開けると
そこはもう、宮沢賢治氏の作品に出てくる『たくさんのたべもの』を提供するレストラン=宮沢賢治のレストランなのである。
お馴染みの『注文の多い料理店』のサラドや、『グスコーブドリの伝記』のオリザ、『オツベルと象』のオツベルが食べる『六寸ぐらゐのビフテキ』など、行間から美味しそうな湯気と匂いが立ち昇ってくるようである。
トマトやハムサンドウヰッチ、チーズにバターと実在するたべものから、チューリップ酒や藁のオムレツなど架空のものまで
多種多様なメニューに溢れている。
宮沢賢治氏の作品を読みながら、作中の『たべもの』を存分に味わい、読後には爽やかな満足感に心満たされるものの、同時に食欲中枢も刺激され、どうにもお腹が空いてしまうのである。
本書はそのエッセンスを凝縮しているので、読むとたちどころに効果が顕われる。…もうダメだ。
私は静かに立ち上がり、キッチンへと向かった。
※ちなみに、私が食べてみたいたべものは
ジョバンニの姉さんがこしらえて行った
トマトの料理である。
パンと牛乳に合うだろうトマトでこしらえた『何か』に、いつも心惹かれてしまうのである。

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