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#わたしの本棚〜今日の一冊〜


タイトル『わたしのぼうし』 
       佐野 洋子(絵・文)
発行 ポプラ社  ジャンル 絵本

 幼い頃から持ち物への『こだわり』が強い方だった、と思う。
 例えば、お出掛けの時の持ち物など
あらかじめ決めていたものでないと気が済まず、近くに見当たらないと、準備そっちのけで家中を探し回る様な子だった。
親から『もう、何でもいいでしょ⁈』と
半ば呆れ顔で急く様に代わりのものを渡され『…何でもいい訳じゃないのにな。』と
口の中でもごもごしながら、自分の気持ちを上手く伝えられずにモヤモヤしていた。

 そんな頃、小学校の学級文庫の本棚の中にこの本を見つけた。
 読みながら思わず『わかる、わかるよ
その気持ち!』と何度も頷いた。
 これまで周りに伝え切れなくて渦巻いていた想いが、素直に表現されていた!
 どれでも一緒じゃないし、拗ねてるなんて言わないで。
 これは本当の〈わたしのぼうし〉じゃないんだから!…幼い頃のそんな想い。

 新しい帽子が〈わたしのぼうし〉になるには、共に過ごした時間と物語の積み重ねが大切な事を、どうかわかって欲しい。
…そんなふうに思っていた。
 あまり周囲に理解してもらえない心の中のくすぶりは、佐野さんの優しい柔らかいタッチの絵が消し去ってくれた。
 進級するまで何度も繰り返し読んだ。
 そらで覚えるくらい読んで、一層大好きになった。

 大人になり、行きつけの書店で見かけた時に迷わず買った。
 佐野さんの作品は、どれも優しく素敵な内容で、心癒される作品ばかりなので
小さなお子様はもちろん、大人が読んでも充分楽しめると思う。

 ちょうちょがとまった新しいぼうし
 それを被っているわたしに、どんな素敵な明日が待っているのだろう?

 今でも帽子を被る度、何となくわくわくしてしまう〈わたし〉がいる。
 
 

 


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