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第九幕:試練の秋4 ミュージカル研究会の頃-汗と涙の青春ストーリー-

先輩たちは全体にダメ出しをしてくれるのだが、それから後に個別にダメ出しをしてくれる。坂上さんもきてくれていて、”もっと練習しないとだめだよ”とストレートに言われたが、僕の出来は正直悪かった。

結局、一週間後には公演時間が伸びてしまうということもあり、全体的にもとの脚本に戻されてしまった。当然、僕は一言マスターに逆戻りである。
僕は仕方ない、当たり前だなという思いと、やはりがっかりした思いも強かった。

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おりしも、秋が深まり、夜が長くなる時期だった。
昼間などは暑さも和らぎ、涼しげな風に木々の紅葉も揺れて、おもむき深い季節。
文学部キャンパス、練習前の待機している昼下がりに、普段あまり話さない同期の芽衣などと、とりとめもない話をしたこともあった。

このように季節は快適な時を迎えていたが、猫グループでは大変なことになっていた。
一時的に増えた猫のセリフが減ったため、不平不満が爆発したのだ。練習時間なのに、話し合いと称して、雑談するなんていうぐらいモチベーションが下がった時期もあった。これはミュー研ではあまり考えられないことである。

さらに、なんで”美也子は猫をみにこないんだ!”と不平が渦巻た。”ネズミと象は、頻繁に見ているのに!”なんていう意見だ。現実、脚が遠のいていたのは確かだった。
でも、これはやっかみ含まれていたのは間違いないだろう。真相はわからないが、とにかく不満が爆発したのだ。

そして、”見にこないんだから、自由にやればいいんだ!”と開き直るような空気が生まれていった。実際、アドリブをおのおのかなりいれるようになった。
まじめで、ミュー研随一の良心として知られる中人の若林さんでさえ自暴自棄になり、バーのシーンでDJの動きをしてディスクを回すという意味不明なキャラになっていた。

つづく…(続きを見たい方は、ハルカナル屋根裏部屋へ!)

第一幕:未知なる舞台へ!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/第一幕:未知なる舞台へ!

第二幕:衝撃! 初役はみんなが大嫌いなあれ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act2

第三幕:最初の公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act3

第四幕:夏の発表会
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act4

第五幕:脚本会議、夏の陣
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act5

第六幕:夏休みも大変!? 音響スタッフで出陣!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act6

第七幕:夏合宿
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act7

第八幕:猫たちが大騒ぎ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act8

第九幕:試練の秋
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act9

第十幕:冬の本公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act10

登場人物

-新人-
僕:元帰宅部。歌、ダンス、芝居、3拍子そろわない珍しい新人。しかも、入部したのが2年生の時だったため、振り返るとかなり浮いた存在だった。
岩尾…親友。2浪しているフリーターながら、ミュージカル研究会に入る。
鉄郎:某都内に通う高校時代、伝説となった男。野性的で、繊細で、躍動的で、とても頭がよく、次元の違う存在感を放っていた。どこを行くのも裸足で歩いていた。
冴子(NEW)…高校時代は声楽をやっており、作曲ができた。才能にあふれており、同期で最初に頭角を現した存在だった。彼女の作る曲は作品にしっかり寄り添いながらも、さらに作品を高めるような、素晴らしい曲が多かった。のちにNHKのみんなの歌に曲を提供した。
優有:歌と芝居が大好きで他の女子大学からミュー研に通っている。穏やかで性格が良く、みんなから好かれており、脚本家の坂上さん、美也子さんらに気に入られ、たびたび彼らの作品に主役で出演することになる。
芽衣…大阪出身でのりやよく、ダンスが好きだった。若くして亡くなってしまい、この作品を書くきっかけになった存在の1人。

-中人(2年目)-
美也子さん:容姿は少しボーイッシュで、性格は物静かで控えめ。宮沢賢治を愛しており、彼女が生み出す脚本は、独特で素晴らしい世界観だった。
江夏さん:新人の時はぺけをつけられていた僕や岩尾とかなり距離があり、あまり話す機会はなかった。坂上さんとおなじ愛知出身で、師匠と弟子のような間柄だった。普段はちゃらんぽらん、三枚目だが、ミュー研への思い入れが人一倍強く、男子では歌、ダンス、芝居が一番うまかった。とても個性があり、 後に百萬男 – フジテレビに出演した。
時子さん: 歌・ダンス・芝居、すべてのレベルがトップクラスの先輩だが、怒ると鬼より怖く、男子全員に恐れられていた。
松田さん:初対面の時に「俺、次の舞台で主役とっちゃうよ!」と言ってのけた自信家。実際は繊細で神経質な一面もある。一方でできの悪い後輩を気にかけ、面倒見の良い一面もあった。
夕実さん:松田さんの彼女。小柄でかわいらしく、親切な先輩。


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