「なんとなく」手に取った本が、自分好みだった話…「スペードの女王・ベールキン物語」

プーシキン「スペードの女王・ベールキン物語」神西清訳

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内容                    簡潔明快な文章と構成で、現実と幻想の交錯を完璧に描いてみせた『スペードの女王』。             5篇の多彩な短篇から成り、ロシア散文小説の出発点となった『ベールキン物語』。本書は、名訳者と謳われた神西清(1903-1957)の訳筆に成る、プーシキン傑作短篇集である。        (カバーの文より)

 訳者あとがきによると、「スペードの女王」は、

「プーシキン後期の円熟した筆力が見事に発揮された作品」

であり、

「ホフマンにも相通ずる趣のある幻想ものがたり」

だという。

 また、

「平民出身の平凡人の反抗と敗北を主題としている」。

 しかし、そんな予備知識もなく、何となく題名に惹かれて手に取った作品だった。

著者:アレクサンドル・セルゲーエヴィッチ・プーシキン(Aleksandr Sergeevich Pushkin )(1799-1837)                           西洋文学を貪欲に摂取し、自家薬籠中のものとして、近代ロシア文学の基礎をうち立てた〈ロシアの国民詩人〉(カバーの文より)。

 それに、ロシアにも興味があったので、読みたいと思った。

感想

 どの物語も、私好みだった。

 私からしたら異国的な雰囲気が良かったし、訳も良かった。

 騒々しさと日常性と静謐な悲しみと。

 それが混在して、不思議で幻想的な色を見せている。

 内容としては、ベールキン物語の、(吹雪)と(百姓令嬢)にある恋物語が心を捉えた。

 何故かは分からないけれど、何ていうんだろう、懐かしさを感じる。

 懐かしさ、と表現するのが正しいのか、分からないけれど。

  日本語訳としては、少し古めかしい言い回しや漢字の使い方が、すごく好きだった。

 普段とは少し異なる言葉遣いに、違和感よりもときめきと親しみを感じる。

 物語の筋と、日本語訳と。それは、私の好きな雰囲気を持っていた。

 思いがけず、良い出会いをした。

 こんな風に、なんとなく手に取った本が予想よりも自分好みだった時の嬉しさは忘れられない。

 それをまた味わいたくて、「なんとなく」気になった本を、私は今日も手に取るのだろう。

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