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この夏休みに、特にこれといった予定があるわけではなかった。 高校の課題をこなし、栞の…
「カメラ?」 栞は私の手にしたものを見て、首をかしげた。 「そ。部屋を掃除したら出て…
何かに思い悩んだ時、私は部屋の片づけをする癖がある。 頭を空っぽにして、要るものと要…
私が姉の模造品だと感じたのは、いつくらいからだったろう。 五歳違いの姉は、いつも私の…
なぜ栞がそんな話を私にしたか? その答えは明確だったし、その話の真偽はどうあれ、とに…
水穂、この話をどう思う? なぜ私があなたにこの話をするのか? また、いつものように、…
落ちていく彼の姿は、一瞬だけれど、まるで静止画のように、私の目に焼き付いている。 彼の左手はまだ本の表紙を掴んでいたけれど、何百枚というページは風に踊らされて捲られていた。両手両足を無防備に投げ出して、でも、彼のその顔は。 驚きでも悲しみでも、ましてや恐怖でさえなく。 正解だとでも言いたげな微笑みを浮かべていた。 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 次に目が覚めた時、私は病院のベッドの上だった。 覚えていないけれど、私はカインを
ひと夏、それは日数でいえば、どのくらいのことを指すのだろう。少なくとも、この時のひと夏…
その日から、カインは私の兄になった。 その夜のうちに、彼は両親と話し合っていたようだ…
「こんにちは」 彼は窓辺から降りて、私の前まで進み、膝をついて、私の落とした本を拾った…
たん、たん、たん、とリズムをつけながら、螺旋階段を上った。両手で、胸元に赤い表紙の本を…
私は一人っ子だって、水穂は思っているでしょう? 確かに、両親が仕事で海外にいて、この…
それを栞から聞かされたのは、ある夏の日である。 いつものように、私は暇を持て余して、…