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ツナグ

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2012年の日本映画。一生に一度だけ死者との再会を叶えてくれる使者〈ツナグ〉。祖母からツナグの役割を引き継いだ男子高校生と、ツナグの案内によって再会する3組の人々を描いたファンタジードラマ作品です。

辻村深月の小説『ツナグ』の実写化。出演は、松坂桃李樹木希林、遠藤憲一、八千草薫、橋本愛、大野いと、佐藤隆太、桐谷美玲、ほか。

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ストーリーが素晴らしく面白い!

本作は辻村深月の小説が原作です。なので、ストーリーが抜群に面白い

ツナグ」とは、一生に一度だけ、亡くなった人との再会を叶えてくれる案内人であり〈使者〉のこと。

ツナグの存在は都市伝説のようにまことしやかに伝わっていますが、死者との再会を望んでいたとしても、ツナグを見つけられるかどうかは運しだい。

運良く見つけられたとしても、ツナグにはいくつかのルールが存在します。

○ 依頼人が死者に会えるのは、生涯に一度。相手は一人だけ。

○ ツナグが死者に交渉し、死者が了承した場合のみ会うことができる。

○ 死者の方も生者に会えるチャンスは一度だけなので、機会を有効に使うため面会を断るケースもある。

死者側からの面会依頼はできない。受け身の立場。

○ 会えるのは月の出る夜。夜明けまでの限られた時間だけ。

○ ツナグになった者は、別の誰かに力を譲るまで、自分が会いたい死者との交渉はできない。

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主人公・歩美《あゆみ》(松坂桃李)は高校2年生。いつもコム・デ・ギャルソン(※)のダッフルコートを愛用。

※ JUNYA WATANABE COMME des GARCONS MAN

歩美は過去に両親を亡くし、祖母のアイ子(樹木希林)と暮らしています。祖母は現役の使者(ツナグ)でしたが、持病で入院したことから孫の歩美にツナグの役割を譲ろうと考えます。

まずは見習いとして、祖母の手伝いを開始。歩美は、依頼人との最初の面談や、死者と依頼人を会わせるホテルでのアテンドなど、ひとつずつ実地での経験を重ねてゆくのですが――。

構成の妙♩

原作小説での章立ては、次のようになっています。

○ アイドルの心得
○ 長男の心得
○ 親友の心得
○ 待ち人の心得
○ 使者の心得

映画版の本作では「アイドルの心得」は省略されており、「長男の心得」、「親友の心得」、「待ち人の心得」、「使者の心得」の4つでストーリーが構成されています。

このうち、最初の3つ「長男の心得」、「親友の心得」、「待ち人の心得」は、歩美が受けた依頼のお話。それぞれ事情を抱えた3組が、月の出る夜、“この世の人” と “あの世の人” の再会を果たします。

最後の「使者の心得」は、歩美と祖母を中心に、不可解な死を遂げた歩美の両親についてや使者(ツナグ)の秘密が明かされてゆきます。このパートで、それまでの伏線が回収されてゆく―― という構成が見事。

○ 長男の心得

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主な登場人物
○ 畠田靖彦(遠藤憲一)/依頼人
○ 畠田ツル(八千草薫)/死者

家業を継いだ、頑固で不器用な長男(遠藤憲一)。「土地を売るための権利書のありかが分からない」との理由で、亡き母との再会を依頼してきます。

しかし、再会を望んだ本当の理由は、母の生前「癌であることを周囲に告知しなかった」自分の判断を気に病んでいるから――。

・・・

エンケンさん演じる長男が、まあ、桃李くんを怪しむ怪しむ!笑(死者と会えるなんて、普通ならちょっと信じがたい話ですから、無理もないのですが……)

最初から頭ごなしにインチキ扱いで、なんとも態度がよろしくない。可愛くないおじさんなんですよ〜!笑(最後だけ、ほんの少し優しくなります)

そんな中年の息子をも、まるで幼な子のように扱い、あたたかく包み込む優しい母親。八千草さんが役柄にぴったりで…… 泣けます。涙

わたしの場合は、息子を持つ母の立場、老いた母を持つ子の立場、ダブルでいろいろ感情移入してしまうので、なおのこと…… 泣けます。

○ 親友の心得

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主な登場人物
○ 嵐美砂(あらし・みさ)(橋本愛)/依頼人
美人でわがまま。自分が一番でないと気が済まないタイプ。
御園とは親友だが、どこか見下している面もある。
○ 御園奈津(みその・なつ)(大野いと)/死者
素直に嵐のことを慕い親友だと思っていたが、演劇部の主役をめぐって対立したまま自転車の転倒事故で死亡。

歩美と同じ高校に通う女子高生、御園。二人は演劇部に所属する親友同士でした。

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(写真左:御園/写真右:嵐)

美人で性格もキツめの嵐は演劇部で実力を誇る存在でしたが、内心見下していた親友の御園が主役に抜擢され、嫉妬を感じます。ある日、御園がほかの友人たちに話していた言葉を聞き間違えて誤解してしまい、ますますダークサイドに落ちる嵐――。

嵐や御園たちが、通学時に自転車で通る坂道。道沿いの一軒の家には道路に面した水道があります。その水道を閉め忘れると、冬は坂に流れた水が凍ってしまうので「危ないね」と話していた矢先…… 御園が自転車の転倒事故で死亡。

実は前日、危険だと知りながら、嵐が故意に水道を出しっ放しにしていたのです。淡い殺意を胸に……!!!

・・・

いやぁー、わたしはこのエピソードが一番印象に残っています! すごかったー!!

死の間際に御園が残した
嵐、どうして?」という言葉。

思春期の女の子が感じる、優越感と劣等感。

友人と同じ男の子を密かに好きになって “抜けがけ” する感じ。

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このパートでは、歩美が着ている「ギャルソンのコート」が重要なカギになってきます。

嵐が「御園に会いたい」と、ツナグである歩美に依頼してきた動機が…… また……!!

それを動機にしますかー!
作者、すごいっ!

物語の組み立ての素晴らしさ。観ていて思わず身悶えしてしまう程です。くぅぅーー!!笑

そしてついに、嵐と御園の再会。

ネタバレしたくないので多くは語りませんが、二人の間で交わされる会話表情、すごくいいです! 脚本も、二人の女優さんの演技も素晴らしい♩

再会の終了後に、御園が歩美に託した嵐への伝言」とは――?!
(きゃー!! ドンドンドン!!)
(↑興奮のあまり地団駄。笑)

このエピソードは、観客がどのようにも解釈できるようなつくりになっていて、そこも良く練られているなぁと思いました。

わたしは本作を観た後、速攻でいろんな人の考察サイトを読みまくりましたよー!笑

そんな鑑賞後の楽しみも、良い映画の醍醐味ですよね♡

○ 待ち人の心得

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主な登場人物
○ 土谷功一(佐藤隆太)/依頼人
○ 日向キラリ(桐谷美玲)/死者

プロポーズ後の婚約者が「友達と旅行に行く」と言ったきり失踪。以来7年間ずっと待ち続けているサラリーマンからの依頼。

ツナグに依頼して相手に会うということは、その人を “死者” だと認めることになります。彼女の帰りを信じて待っていた彼にとって、それはつらい選択。

7年ぶりに再会した婚約者(桐谷美玲)から語られる真実とは――?

○ 使者の心得

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主な登場人物
○ 渋谷歩美(松坂桃李)
○ 渋谷アイ子(樹木希林)

祖母と孫、アイ子と歩美のお話。「ツナグ」とはどういう能力なのか? 一家の中でどのように受け継がれてきたのか? 歩美の両親の死因について責任を感じ、後悔を抱え続けてきた祖母――。

・・・

全体の締めにあたるこのエピソードは、観客が「はぁ~、なるほど!」と納得できるような終わり方で、上手くまとまっているなぁと思います。

泣いたーーーー。
赦しの映画だなって思った。

と感想ツイートにも書いたように、全編を通して、どのお話も泣きどころがいっぱい。

「許し」ではなく「赦し」と書いたのは、どの登場人物も “心の澱”(おり)が洗い流されて浄化されるというか、重く苦しい鎖に縛られている状態から解放されてゆくことがテーマの物語だから。

あ、でも「親友の心得」だけは、全体の中ではちょっと異色かも。ピリリとスパイスが効いています。

ぜひ、もう一度観たい作品です!
特に「親友の心得」をじっくり再検証してみたい~♩

ホテルニューグランド

作中、依頼人と死者との面会場所としてツナグがいつも指定するホテル。廊下やロビーなど、歴史を感じさせるクラシックな雰囲気がとても素敵♩

ホテルに泊まったり、ホテルでお茶したりするのが大好きなわたしは、観ていてすぐに “ピーン!” ときましたよ〜。

こちらのロケ地は、横浜の山下町にあるホテルニューグランドです。(目の前には山下公園)

ホテルの公式サイトでも紹介されているように、その歴史ある外観や内装から、数々の映画やドラマ、CMなどで使用されています。

わたしがお散歩に訪れた時の写真は、こちら。

ね♡ とっても素敵でしょう?

ニューグランドと聞くと、わたしの場合、すぐに永ちゃん(矢沢永吉)のあの歌を口ずさんでしまいますね〜。

ニューグラ〜ンド♩ ホ〜テル♩

本作をご覧になる時は、ホテルの登場シーンにもぜひ注目してみてくださいね。


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