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2022年11月の記事一覧

なぜフィクションを読むのか『テヘランでロリータを読む』

なぜフィクションを読むのか『テヘランでロリータを読む』

「最良の小説はつねに、読者があたりまえと思っているものに疑いの目を向けさせます。とうてい変えられないように見える伝統や将来の見通しに疑問をつきつけます」(p.155)

『テヘランでロリータを読む』のなかでも、この文が特に好きだ。本書は英文学研究者アーザル・ナフィーシーのメモワール。彼女はイランのいくつかの大学で英文学を教えていた。取りあげた『グレート・ギャツビー』や『デイジー・ミラー』といった小

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穂村弘『図書館の外は嵐』

穂村弘『図書館の外は嵐』

タイトルがとてもいいなと思う。穂村弘のエッセイが好きでよく読む。『世界音痴』とか『鳥肌が』とか。『図書館の外は嵐』は読書日記だ。小説、歌集、マンガ、写真集、なんでもある。一つひとつはわりと短いのだが、ことばを尽くされた紹介文より想像をかき立てられて読みたくなる。歌人だからなのかなあ。短いのに、短いからこそ、そこに全部詰まっていてとてもきれいな読書日記だ。山田詠美のエッセイもそうだったけれど、ことば

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山田詠美『吉祥寺ドリーミン』と食事

山田詠美の小説は『賢者の愛』を読んだことがある。『痴人の愛』の翻案で、『賢者の愛』のナオミは男性、譲二にあたるのが女性だ。さらには復讐譚でもある。言葉と言葉から溢れる官能性にどきどきしながら読んだ。読んだ人はだいたいそうだと思う。

山田詠美のエッセイ、『吉祥寺ドリーミン』はざっくばらんで笑えて、『賢者の愛』を書いたのはこの人なんだと不思議なような、なるほどというような。津村記久子はジェーン・オー

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