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むき出し - 兼近大樹

今回は私の大好きな EXIT 兼近くんの書いた小説について。

昔から私はお笑いが好きだったけど、子どもが産まれてからYOUTUBEを見たり、SNSを見る時間が増えて(片手間でできるので)
EXITのファンになったのも1年ちょっと前くらい。

むき出しもちょうど1年前くらいに出版されたので、すぐ買ってすぐ読んだ。

読んだ後は色んな感情があって、一言じゃ言い表せられないのだけれど。


まず、主人公の石山。
幼き日の私の記憶にも、いた。しかも同じクラスに。

別に私は何をされたってわけではないけど、やっぱり家庭環境が複雑で、学校にあんまりきていなくて、クラスメイトと殴り合いしていた記憶がある。
母親はいたけどいつも街中を徘徊していて、息子の同級生を見つけると近寄ってきては、意味のわからないことを言ったり、泣いたり、幼い私にとっては「未知」であり、つまり「恐怖」だった。

そんな彼は、中2くらいで、どこか遠くの施設に入ることになって、幼い弟とともに引っ越して行った。(と、聞いた。実のところは知らない。)

今彼がどこで、何をしているのか、同級生の誰も知らない。
当時の私も今の私も、彼にできることは何もない。
けれど、実は20数年経った今でも、時々彼を思い出すことがある。
そしてどうか幸せに、どこかで生きていてほしいと、こっそり祈りながら眠りにつく。
(そうやって、あのとき「引いて」みてしまっていたことへの罪悪感を消そうとしているのだと思う。)


そしてもう1つ衝撃だったのが、この部分。

漢字を沢山書いてきてくださいと先生に言われていたのに忘れた。家にいる時に漢字を書くってどうやればいいんだろう。

兼近大樹著「むき出し」P18


家で漢字を書くって、どうやればいいんだろう?

これはかなり衝撃だった。
そもそも家庭が、学習する環境でない場合。
家族の誰もが、学習を支援する状況にない場合。
家で漢字を書く、ということから教えなければならないのだ。
私は教員免許を持っているけれど、教職課程を取っていてこんなことを考えたことは一度もなかった。(私だけかもしれないけれど)

この文章を皮切りに、この本の中には私の知らない感覚がたくさん書かれていた。

法律違反を犯していてもそこに正義や秩序が存在すること。
とても良い人なのに、とても悪いこと(犯罪行為)をしていること。
日本という国で、生きていくためにそうするしかない若者や子どもがいること。
そして、周りの大人が、その子たちを導いてあげられていないこと。


主人公の石山は(そして兼近くんも)周りから差し伸べられた手を掴むことができたけれど、その手を振り払ってしまう若者や、そもそも手を差し伸べられていることに気づかない子、まだ手が差し伸べられていない子もいるんだろう。

私たち大人は、この世界に責任があると思う。
この世界に生きているんだから、発信し、手を差し伸べ続けるべきだろう。
それが多分、本当に微力だろうと構わなくて、いつかその小さな行動が、兼近くんがよく言っている「揺らぎ」となって、この世界を幸せに変えてゆくんだろうと思う。

いつかこの世界に大きな「揺らぎ」が起こることを信じて。
むき出しが重版された今月(おめでとうございます!)再読します。


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