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無理する
「○○先生からのお歳暮,いつもどおりちょっと頂いたから後は置いとくね」
「あぁ,全部食べちゃっていいよ。」
そのセリフを聞いて,私の胸あたりがイラっとした。
少し前,甘いものは苦手だと勇気を出して言ったのを覚えてないのだろうか。
仲良しになりたての頃,
彼が買ってきてくれるお土産はクッキーとかチョコレートとか,なぜか甘いものに偏っていて,でもその時は私のことを思ってお土産を選んでくれたことが素直に純粋に嬉しくて,もらえるものはなんでも嬉しかった。
でも,やっぱり甘いものは少し食べると満腹感でたくさん食べられないから,私の家の冷蔵庫の中は甘いものであふれていってしまった。
その冷蔵庫の中の残像があるから,甘いお土産をもらうたびに,「またいらないものが増えてしまった」って,いつしか甘いお土産が嬉しくなくなっていってしまったのだ。
そこで私は,甘いもの以外のお土産のときに思い切り喜ぶという作戦にしたが,たぶん彼自身が甘いもの好きなので,ご当地もののスイーツがあると,なにかと買ってきてくれた。
だから,仲良くなって3年目,勇気を出して言ったのだ。
「実は,甘いもの苦手なの」
テキストで伝えたから,彼の表情は見えなかったけど,なんとなく彼が傷ついたのではないか,という印象が残った。悪いなという私の罪悪感がそう思わせたのかもしれないが,とにかく,伝えたいことは伝えた。
これでもう,甘いものに今までのように苦しまなくて済むのだ!という晴れ晴れしい気持ちもあった。
彼はそれから,カレーやラーメン,お肉など,私が喜んだリアクションをとったものを買ってきてくれるようになった。私の反応を覚えていてくれたんだと思うと,愛と優しさが心に沁みてしあわせな気持ちになった。
だから,今日,
わんさか残っているMONTBLANCのクッキーやタルトを私にあげると言われたとき,彼にイラっとしてしまったのだ。
仲良しだったとき,なんでも嬉しいと思えた気持ちと
3年経って,彼に自分に本音をぶつけてもいいという無遠慮になった私の気持ちと,電車に乗りながらいろいろ考えてみたのだ。
なんでも嬉しかったのは嘘じゃない。
甘いものを食べたくないという気持ちも嘘じゃない。
3年の間,受け取り続けてきた期間,少しづつ,無理が大きくなってしまったのだ。
「本音で生きるほうがいい。」
そういうけど,この無理は,誰かを傷つけないための礼儀ある無理,必要な無理,優しさの無理なのではないかな。
付き合いが長くなって,自分に嘘がつけなくなって,無遠慮に自分を見せてしまうのは,本音ではなく,優しさが欠如してしまったということなのではないかな。
わたしは,仲良くなったらいっつもそうだ。
優しい嘘がつけなくなってしまう。
イラッとした気持ちと向き合って,彼には優しく「ありがとうね」って言ってみよう。
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