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夫の怪我

春馬さんのtouristの円盤化の情報が流れてきて、気分は最高になったまさにその時。

仕事中にも関わらず単身赴任中の夫からの着信が。
夫は、むやみやたらに電話してこないのだけどなあ…
今は出られないとLINEで返した。

すると。なんと
腰を骨折したと。
LINEで済むということは、命に別状はない、LINEできる状況だと判断した。
緊急事態ならば、他人様から連絡が来るだろう。

ロードバイクが最近の趣味であったので、きっとそれが原因か。と思いながらもLINEで詳しく聞いてみる。でも、なかなか思っているほどすみやかに返信がこない。
(今になって思えば、一人ぼっちだし、事の重大さをひしひしと感じ、とってもブルーで、冷静なメールなどできない状況だったのだろう。しかも右肩を痛めたので、右利きの彼には厳しい状況だったに違いない)

返信がこないことに、とてつもなく不安になり、折をみて電話をした。

今は赴任先の住居に帰ってきている。
自分で病院に行く事ができた。
自転車は内部で真っ二つ。(表面上はなんともないらしい)
自損事故。(目を離した隙にタイヤが側溝に触れて、バランスを崩した)
骨折以外に多少の擦過傷がある。
入院と手術の日が決まり、入院の日には私に来てほしい。

ここまでわかった。そして。
でも、腰の骨って…

なんと私の早とちりで、肩と腰を見間違っていたのだ。読み返したら間違いなかった。
骨折したのは、鎖骨だった。

良かったー。命に別状はなかったー。
しかも、怪我も割とひどくないみたい。
被害者もいない。
少しホッとしたのもつかの間。
でも、さてどうしようか。入院の日は私にとって、仕事が月で一番忙しい日なのだ。

それからは、頭の中は段取りの変更で、さらに忙しくなり、水曜日定休なのだが、休みを入れ替えるか否かもしくはそれまでに終えるか… 
とりあえず目先の仕事をこなすことを優先した結果、なんとか火曜日で仕事の段取りを終えることができたので、夫のところにも行く計画をたてることができた。

入院前日から夫の住居に泊まり込み、入院の準備をはじめ、炊事掃除洗濯に勤しんだ。
夫といえば、肩を動かすと痛いため、手を前で組んだ状態で、慎ましやかに過ごしていた。忙しなく、アクティビティな夫にはかなり苦痛だと思う。シャワーもなんとか自分で入り、私が行くまでは食事(私が作った冷凍品)をスプーンで左手で食べたり、簡単にフライパン調理をしていたらしい。
痛いながらも、自分でできることはやっていたらしかった。そして、私がいても、決して自分でできることは私にはお願いしなかった。 

私は密かに彼を尊敬している。

私は夫が怪我をする前なら、これやって!あれやって!とすぐに夫に頼っていたし、私が逆の立場だったら、自分でできることも、絶対夫にお願いしていたと思う。これは自信がある。

夫は意外に繊細でデリケートな部分もある為、きっと一人で心細かったに違いなかった。突発的な事故とはいえ、どうにもならない後悔の念だとか手術が怖いだとか、同じことを何回も話してきた。

その夜は、私は疲れた自分を癒やすため、直親さまを観ようと円盤を持参していた。DVDのデバイスに入れたのだが、その度に排出。そこで初めて、持ち込んだのが、Blu-rayだと気付いたという、お粗末な失態をしでかした。いつものポンコツな私。
もう、悔しすぎて寝るしかない。

入院当日。
朝から夫は、ため息ばかりついていた。病院についても、足取が重い。手術が怖い、麻酔が怖い、妄想ばかりして落ち込んでいる。折れた鎖骨を上から鉄板で固定し、ボルトで留めていく。ちょっとした突貫工事だが、全身麻酔の為術後はおむつになるらしい。尿道カテーテルだとかおむつだとか、初めての体験ばかりに、だんだん声は沈んでいく…

それでも一通り先生から話を聞いたら、「もう帰ればいいよ、ありがとう」と高速で二時間弱かかることをわかっている夫は、私に気遣いをみせてくれた。
手術の日には来られないけれど、退院の日には迎えに来るからと病院を後にした。

本当は一緒にいてあげたいよ。
わかってくれてるかな…

夕方家につくと、夫からLINEが入っていた。
「私を離さないで」の原作本。丁度入院のタイミングだったため、私が読む前に先に夫が読み始めたのだ。読み進めて行くうちに辛くなってきたらしい。
「辛いのに、更に辛いの読んで、ますます辛くならんかなあ」

「大丈夫。絶望のあとには愛と希望があるらしいよ。そこまで読み解けたらすごいことだと思う!」

なんて、まるで読んだかのように返したけど、夫の求めた答えになっていたかしら…

初体験づくしの出来事。
無事に退院したときの第一声は、なんていうだろう。

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