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「子ども議会」

「未来の科学者たちへ」という本を読んでいたら、ふと、この話を思い出したので書いてみました。

なんか楽しそう!

「子ども議会」ってご存じですか?

その名の通り、子どもが議員になって市議会に出席し、市長と議論をするというもの。
私は、中学生の時に友人とこれに参加した。
議員体験なんて滅多にできないし、大人な感じがしてワクワクしてた。

本格的…!

研修や市議会の見学など、事前準備が数日かけて本格的に行われた。
主張したいことは決まっていた。
「この市に映画館を誘致するべきだ!」
私の市は、学生や子育て世代の若者はいるのに商業施設が充実しておらず、休日はみな電車や車で都心へ出かけていた。需要は絶対にあり、説得の材料も揃えた。
質問内容は事前に伝えておくスタイルで、「あっ、市長は質問内容を事前に知ってて答えを用意してるから、受け答えがスムーズなのか。」と納得がいった。

学校にまで!?

議会本番の少し前、市役所の職員さん方が学校にやってきた。
先生以外の大人がぞろぞろと学校に入って来て、なんだか緊張したが、私たち”子ども議員”を訪ねて来たのだと思うと、なんだか誇らしかった。

職員さんは、まだ子どもの私たちにもとても丁寧だった。
大人に近づいたみたいで嬉しくて、上機嫌で受け答えをしていた。
…途中までは。

え…?

『あなたの質問に対しての市長の返答なのですが、…です。これに対してどんな質問をしますか?』

え…?答え言っちゃうの???
しかも、その後の質問内容まで聞かれてる。
私はたまらず、「その質問は今考えるんですか?」と。

『その質問に対する返答も用意しないといけないので、今考えて頂きたいです。あと、当日はなるべく質問内容を変えないようお願いします。』

…はぁ。なんか残念だな、思ってたのと違うな、と空しくなった。

さぁ、当日です。

そうこう言ってられない、本番が来ました。
主張も質問内容も暗記済み。一言一句そのまま言える。

壇上は緊張感と圧迫感。「映画館を…」声が震えます。
市長からは、あの時聞いた返答と一言一句同じ答え。

さぁ、私の番。大丈夫、暗記してるから。深呼吸して…
全然違う質問を言ってやりました。笑

驚き顔でちょっと慌てる市長。答えになってない答えにお礼を言って、議席に戻った。
あぁ!スカッとした!最初からセリフが決められてる議論なんてつまらないじゃん?
即興の質問だったからしどろもどろだったけど、あれは、市長の答えとその場の空気、他の人との議論全部を取り込んで紡ぎ出した、気取ってない「自分の言葉」。あの時、一瞬だったけど、確かに市長の心と繋がれた。

国会もそうなのか?

国会の答弁もすごくスムーズで、次から次に統計がポンポン出てくる。
国会も事前にある程度決められてるんじゃないかと思う。だから寝てる議員もいるのかな?
何が答弁だ。何が議論だ。つまらない。

議論はアドリブだから面白い。確かに、事前にセリフが決まっていれば、筋の通った主張ができる。でもそれは、「自分の言葉」ではないと思う。
言葉が詰まったっていいじゃないか。多少辻褄が合わなくたっていいじゃないか。伝えようとする姿勢だけで十分気持ちは伝わるのになぁと思いつつ、どうしようもできない今日この頃です。




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