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今週の読書録

こんにちは。
今週は小説を中心に3冊を読了。
その他、こちらでも何度か紹介した『らんたん』と同じくWEBきららでbの連載作品も最近完結したので、中盤以降まとめ読みました。

草々不一

朝井まかてさんの短編集『草々不一』は、江戸時代の下級武士、浪人などの日常生活を描いた作品。

「一汁五菜」では、お城の料理人を務める主人公の日常譚と思いきや、後半には徐々にミステリーの要素が顔をのぞかせます。

「妻の一分」は、忠臣蔵で有名な大内内蔵助の飼い犬?が主人公。
どこかで見覚えが?と思っていたところ『決戦!忠臣蔵』で収録されていた作品でした。
決戦!シリーズは一つの戦場をテーマに複数の作家が書いた短編集。
最近は新刊は出ないものの楽しみにしていたシリーズです。
しかし、数年空くとうろ覚えなので、こうして別の書籍で改めて目にする機会があると再度楽しく読み進めることができました。

「蓬莱」は、思わぬ逆玉の輿で想定外の婿入りを果たした主人公とミステリアスな妻の物語。
一見、不思議に思えるミステリーかと思いきや結末を読むと微笑ましくなるようなストーリーです。

時代は変われど変わらない情や体面などを丁寧に描いた作品は、朝井まかてさん流の心理描写がいかされています。

泣ける。笑える。心がほっこり温まる。
身分としきたりに縛られた暮らしにも、喜怒哀楽、切なくも可笑しい人生の諸相があった。江戸の武家の心を綴る、傑作時代小説短編集。

朝井節、ますますの名調子。
1冊に長編8作分の人生が。


ライオンのおやつ

2020年本屋大賞で第2位を受賞し、映像化もされた作品。
今更ですが友人にすすめられて読みました。

『ライオンのおやつ』というタイトルの意味があらすじを読んだ時点では謎でしたが、ホスピス「ライオンの家」でのおやつタイムのことなのですね。
ライオンは百獣の王なので、誰にも脅かされることがない。
安心して寛いで過ごすことのできる場所がライオンの家。

人生の残りが見えた時、振り返ること、心残り。
登場人物たちの背景や歩んできたみちは様々ですが、ライオンの家で過ごす内に心を覆っていた過剰包装が徐々にはがれていくようです。

おやつはもちろん、朝食のおかゆや柑橘系をふんだんに使用した料理の描写は、香りや湯気が伝わってくるよう。
著者の他の作品も読んでみたくなる一冊でした。

人生の最後に食べたいおやつは何ですか――若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた――食べて、生きて、この世から旅立つ。すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。

時のあわいに きものの情景

着物にまつわるエッセイ集。
着物と文学、芸能、器、食、美しい日本語で綴られる文章と装丁。

特に「小豆キャンディーのこと」で著者が受けた真夏のおもてなしと小豆キャンディーの描写は、情景が浮かび、どこかから風鈴の音が聞こえてくるようです。

自然な光の中に佇む女優たちの着こなし。柔らかな語り口で綴られるきものの情景。月刊誌「ミセス」連載12年の集大成として『折にふれて きものの四季』に続く待望の書籍化。文筆家と写真家のふたりが創り上げた世界がここに。
【着る人】(五十音順)
蒼井優、安藤サクラ、大出真里子、香椎由宇、門脇麦、北浦愛、忽那汐里、坂井真紀、仙道敦子、中嶋朋子、成海璃子、美村里江、蓮佛美沙子

若葉荘の暮らし

紙の書籍ではないものの、「WEBきらら」で連載していた畑野智美さんの『若葉荘の暮らし』が2月号で完結しました。

老支度には早いけれど、年齢を重ね、時代や環境が変わる中で、生きていく上で大切なものや価値観について振り返る。
昨今の社会情勢を扱いながらも重たくなり過ぎない作品です。

秋頃に書籍化を予定しているようなので、まとめて読み返すのが今から楽しみです。


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