今週の読書録(2024.5.14)
時の睡蓮を摘みに
美しい装丁にひかれて手に取った一冊。
アガサ・クリスティー賞大賞受賞作である葉山博子さんの「時の睡蓮を摘みに」は、大戦前後のベトナムを舞台にした作品。
早川書房のページでは、冒頭部分の試し読みも公開されています。
文字を追うごとに色彩や風景が思い浮かぶよう。
現代でもかなり強いタイプに分類されそうな主人公は、当時の価値観では異質の存在。
日本の閉鎖的な価値観から逃れるようにフランス統治下のベトナムに渡り、高等教育を受ける。
成人してから身に着けたなじみの薄い言語を使用した学習の困難さを乗り越え、好きな分野を追求する姿勢。
自身の考えを言語化して臆せず表明する主人公と周囲の男性陣。
途中、語り手の視点が幾度か入れ替わるため困惑することもありましたが、次回作も楽しみな作家さんが増えました。
定食屋「雑」
「定食屋『雑』」は原田ひ香さんの作品の中でも食に関する方のストーリー。
人生の岐路に立つ主人公が下町の定食屋で食を通じて、価値観の違いに戸惑いながらも進んでいく。
育った環境が違えば、食に対する考え方やこだわりが異なるのも当然。
縁あって結婚した二人も歩み寄れないこともある。
食への向き合い方の相違から別れることになった主人公。
立ち直るきっかけもまた「食」。
最後は原田さん作品らしい希望と救いがある内容なので、読了感も悪くありませんでした。
令和ブルガリアヨーグルト
「〇〇ブルガリアヨーグルト」と聞くと頭の中で再生されるあるCM。
明治ブルガリアヨーグルト誕生50周年に際し、明治が取材に全面協力したという本作。
宮木あや子さんのお仕事小説の中でも異色の擬人化作品です。
メインキャラクターの片方は何と乳酸菌?!
「吾輩は乳酸菌である。名前はブルガリア菌20388株。」という、どこぞの文豪の代表作のごとき文章から始まるカオスな作風。
最近、「推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~」というタイトルで映像化もされたようです。
ブルガリアや乳酸菌の歴史も小ネタとしてはさみつつ、お仕事小説の要素や時事ネタもからめた内容でした。
この記事が参加している募集
サポートして頂けると嬉しいです。あなたの応援が励みになります♪