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今週の読書録(2024.6.29)


愚か者の石

「愚か者の石」は、河崎秋子さんの直木賞受賞(『ともぐい』新潮社刊)後、第一作。
「締め殺しの樹」と同様に開拓期の北海道を舞台にした作品です。

今作の主人公は囚人。
本人曰く、冤罪と捉える思想犯の刑期は10年ごえ。
慣れない北の地で環境も価値観も全てがくつがえる日々を送る中で、変わるもの変わらないもの。

決して明るくない世界観であるにも関わらず、ページを繰る手がとまらない。

生きることは、まだ許されている。

明治18年初夏、瀬戸内巽は国事犯として徒刑13年の判決を受け、北海道の樺戸集治監に収監された。同房の山本大二郎は、女の話や食い物の話など囚人の欲望を膨らませる、夢のような法螺ばかり吹く男だった。明治19年春、巽は硫黄採掘に従事するため相棒の大二郎とともに道東・標茶の釧路集治監へ移送されることになった。その道中で一行は四月の吹雪に遭遇する。生き延びたのは看守の中田、大二郎、巽の三人だけだった。無数の同胞を葬りながら続いた硫黄山での苦役は二年におよんだ。目を悪くしたこともあり、樺戸に戻ってきてから精彩を欠いていた大二郎は、明治22年1月末、収監されていた屏禁室の火事とともに、姿を消す。明治30年に仮放免となった巽は、大二郎の行方を、再会した看守の中田と探すことになる。山本大二郎は、かつて幼子二人を殺めていた。

「なあ兄さん。
石炭の山で泣いたら
黒い涙が出るのなら、
ここの硫黄の山で涙流したら、
黄色い涙が出るのかねえ」

【編集担当からのおすすめ情報】
直木賞受賞(『ともぐい』新潮社刊)後、第一作!

「地獄に光が差したとして、仮初めであってもお前はそれに手を伸ばすのか」――河崎秋子

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古本食堂 新装開店

原田ひ香さんの「古本食堂」シリーズ第二弾。
前作に引き続き主人公二人による神保町の古書店を舞台にした作品。
今回も本と食を中心としたストーリーで、本好きには嬉しい内容。

美希喜ちゃんの親戚はキャラが濃い人物が多め。
新登場の親戚3姉妹は別作品の主人公にもなれそうな存在感が漂っています。

珊瑚さんの残る人生の過ごし方、美希喜ちゃんの展望、続編も今から楽しみです。

さみしい時もうれしい時も本はいつだって、寄りそってくれる。
大ロングセラー『古本食堂』が満を持して、新装開店。
美味しいごはんとあなたの物語がここに!

珊瑚(70代)は急逝した兄の跡を継いで、神保町で小さな古書店を営んでいる。
親戚の美希喜(20代)が右腕だ。
作家志望の悩める青年や、老母のために昭和に発行された婦人雑誌を探している中年女性など、いろいろなお客さんがやって来る。
てんぷら、うなぎ、カレー……神保町の美味しい食と思いやり深い人々、人生を楽しく豊かにしてくれる本の魅力が沢山つまった極上の物語。

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愛と死

武者小路実篤の『愛と死』。
比較的新しい書籍を読むことが続いていた中で、「古本食堂」の影響を受け名作にも手を伸ばしてみました。

「古本食堂」の中では泣ける作品と紹介されていたものの、個人的には?でしたが、近代日本の純愛小説ということで若い頃に手にしていたならばまた印象が違っていたのかも?
最近ではありがちな展開ではあるものの、当時の恋愛観や相思相愛の二人には、純愛とは縁遠くなった今読むと思うところがあります。

愛とはどういうものか、この小説を通じて初めて、はっきり教えられた――。
「書きながらずいぶん泣いた」と著者本人が後に洩らした、至高の愛。
戦争文学・国策文学が氾濫した昭和初期、一気に書き上げられた青春小説。
愛とは残酷なものなのか、それとも素晴らしいものなのか。

友人野々村の妹夏子は、逆立ちと宙がえりが得意な、活発で、美しい容貌の持主。小説家の村岡は、野々村の誕生会の余興の席で窮地を救ってもらって以来、彼女に強く惹かれ、二人は彼の巴里(パリ)への洋行後に結婚を誓う仲となった。ところが、村岡が無事洋行を終えて帰国する船中に届いたのは、あろうことか、夏子急死という悲報であった……。
至純で崇高な愛の感情を謳う、不朽の恋愛小説である。巻末に用語、時代背景などについての詳細な注解、および年譜を付す。

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函館グルメ開発課の草壁君

森崎緩さんの『函館グルメ開発課の草壁君 お弁当は鮭のおにぎらず』は、大好物のお仕事+グルメ小説ジャンル。
冒頭の印象では缶詰アレンジ系の料理かと思いきや、中盤以降では北海道の食材をいかしながらお弁当作りに励む。

新入社員かつプライベートの住環境も変わったばかりの主人公。
仕事や環境に慣れるだけで精一杯では?という心配もよそに、日々お弁当を中心とした料理にいそしみます。
自宅でも再現できそうなお手軽レシピに興味津々です。

どうやら登場人物である小料理屋の播上さんを主人公とした作品もあるようです。
「函館グルメ開発室の草壁君」シリーズとして、今後も続くのかしら?
関連作品も楽しみな一冊です。

先輩社員の中濱さんに助けられながら、生真面目な新入社員の草壁君が作る、サンマの『さ』巻き、鮭のおにぎらず、ホッケのカレームニエル、旬のブリ……函館の食材をちりばめた「お弁当」×「恋愛」×「お仕事」ストーリー!

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