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今週の読書録

今週の4冊は、世間の価値観との差や生きづらさを感じる瞬間に手に取りたくなる作品。


星を編む

凪良ゆうさんの『星を編む』は、発売を心待ちにしていた一冊。
今年本屋大賞を受賞した『汝、星のごとく』の続編ということであるが、時系列としては「春に翔ぶ」→「汝、星のごとく」→「星を編む」、「波を渡る」の順。
前作の主人公の一人である櫂は、回想の中で登場するのみ。

人の思いが次の世代に受け継がれていく様子、生きた証。
選ばなかった選択肢を振り返る瞬間は誰しも経験するもの。

大切な人を失った際にも続く人生。
スピンオフ作品としても単独でも読み応えのある作品。

☆2023年本屋大賞受賞作 シリーズ最新作☆
第20回本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』続編

花火のように煌めいて、
届かぬ星を見上げて、
海のように見守って、
いつでもそこには愛があった。

ああ、そうか。
わたしたちは幸せだった
のかもしれないね。

『汝、星のごとく』で語りきれなかった愛の物語
「春に翔ぶ」--瀬戸内の島で出会った櫂と暁海。二人を支える教師・北原が秘めた過去。彼が病院で話しかけられた教え子の菜々が抱えていた問題とは?
「星を編む」--才能という名の星を輝かせるために、魂を燃やす編集者たちの物語。漫画原作者・作家となった櫂を担当した編集者二人が繋いだもの。
「波を渡る」--花火のように煌めく時間を経て、愛の果てにも暁海の人生は続いていく。『汝、星のごとく』の先に描かれる、繋がる未来と新たな愛の形。

Amazon紹介より

赤神諒さんの『誾』は、立花誾千代が主人公。
悪妻ともいわれる女城主・誾千代。
しかし、長生きした立花宗茂視点で語られる後年の振り返りでは、誾千代の美しさや気高さを思い出されることが多い。
一体、誾千代とはどのような人物だったのか?

関ヶ原の敗将のうち、唯一旧領を回復した立花宗茂。
東の本多、西の立花と並び評されるほどの武芸に優れ、後年は、徳川家光の御伽衆として側近に取り立てられた稀有な存在。
再婚することなく、子も残さず、若くして亡くなった誾千代以外の妻をもたなかったといわれている。

戸次(立花)道雪の後年に生まれた一人娘にして、武芸に秀でた美女と伝わる誾千代。
不仲であったというのは真実か?
豊後の戦国大名・大友一族をテーマにした作品を複数手がける赤神諒さんが描く誾千代と宗茂の関係が興味深い。

普通になれないことに悩み、親の期待通りにできぬことに苦しむ。
いつの世にも変わらぬ一人の人間としての姿、愛の形。
不仲説を新たな解釈で描いた『誾』は、歴史小説好き以外にも楽しめる作品。

大友宗麟の家臣で西国最強の将、戸次道雪のひとり娘、立花誾千代は、幼い頃から男勝りで武芸に秀でていた。父の跡を継いで女城主となり、目指すは最強の女武将だったが、幼馴染の高橋紹運の嫡男、統虎に懇願され、妻として生きる覚悟を決める。だが、立花家を継いだ統虎とは子を生さぬゆえ、不仲がささやかれていた。実は統虎は、愛しても無駄だと知りながら、それでも妻をひたむきに愛し、誾千代も必死にそれに応えようとしていたのだーー。自分が女であることに揺らぐ、西国一強く美しい女城主の生涯を描く、歴史小説の新境地。

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歌われなかった海賊へ

『同志少女を敵を打て』で本屋大賞を受賞した逢坂冬馬さんの『歌われなかった海賊へ』。
今回の舞台は大戦下のドイツ。

型にはまった正しさが求められる時代、同性愛は犯罪で治療が必要な病気。
一見するとエリート、犯罪者の子、生きにくさを感じる少年少女の選択の行方は。
人との出会いで人生が変わる。
選べなかった時代に、心の赴くままに生きた人たちの物語です。

1944年、ナチ体制下のドイツ。父を処刑されて居場所をなくした少年ヴェルナーは、体制に抵抗しヒトラー・ユーゲントに戦いを挑むエーデルヴァイス海賊団の少年少女に出会う。やがて市内に敷設された線路の先で「究極の悪」を目撃した、彼らのとった行動とは?──本屋大賞受賞第一作。

Amazon紹介より

あの光

ごみ屋敷、汚部屋。
ハウスクリーニングサービスで働く主人公は日々、片づけらえれない部屋をきれいにすることに向き合っていた。
やりがいを感じていた仕事だったはずが、経営者が変わり、経営方針も変わったことで、徐々に精彩を欠いていく。

「起業すればよいのに」
ある程度仕事ができる人であれば、一度は言われたことがあるかもしれないセリフ。
自分でも「このままでよいのかな…」というときには、考えてしまう瞬間がある。
香月夕花さんの『あの光』で描かれるのは、そんな主人公。

途中まで順調であったはずが、小さなひずみが生じた瞬間崩れていく。
地位も名誉も人もあっけなく失った先に何が残るのか?

ハウスクリーニングサービスで働く高岡紅は、丁寧な仕事と気配りで指名が入るほど信頼を得ていたが、待遇の悪さや部下の対応に腐心する日々に疑問を抱いていた。
そんな折、十代から水商売で身を立てた母・奈津子から独立を促され起業を決意。
仕事は軌道に乗り、親しい顧客の勧めで「開運お掃除サービス」を新たな事業として立ち上げる。
そんな紅のブログがインフルエンサーの目に留まり、書籍出版とセミナー開催の運びに。
経験を活かした実践術と母親譲りの弁舌で聞くものを魅了し、一躍時の人になるも、ある日、紅のメソッドを曲解した教え子の行動がSNSで批判されているという知らせを受ける。
窮地に追い込まれた紅は起死回生を図るのだが……。自己啓発と承認欲求の闇を撃つ問題作。

Amazon紹介より


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