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春海
2020年11月7日 09:27
三章 私は小さい頃から、落ち着いた子だったらしい。泣くことが少なくて、手のつかない子どもだった。かといって、いつもかわいく笑っていたわけではなかった。 笑顔を手に入れたのは、小学校に入ってからだった。一緒に過ごす周りの人たちが奇妙な仮面を被ったように笑っているのを見て、私は彼らに同情した。かわいそうに、上手く生きるのには、あんな徒労を犯さなければならないことを知っているのだ。 私
2020年11月4日 10:50
一章 人は変わる。 しばらく会わなかった友人を偶然、街で見かけたとき、別人のように見えた。注意して見なければ、あれが友人だと判別できなかったぐらいに。 親戚もそうだ。私には五つ下の従兄弟がいる。最初は喋れない赤ちゃんだったのが、数年ごとに会う度に当然、背が伸びて、喋れるようになって、彼自身が持つ性質を現し始める。 時間の経過とともに、人はそれまで認識していたその人自身の姿かたち