いつもの最寄り駅まで②
次に音を支配したのはthe pillowsだった。
今日のシャッフルは向暑はるの気分に合っている。
今日はじめましての信号は目の前で赤になったけど、気分がいいのでのんびり待つことにする。
信号の奥には2つ目の公園があって、四季それぞれに違った色と景色を見せてくれる。
先日雪が降った時は、金髪で短パンのまるでギャルと言わんばかりの女性が自撮りをしていた。
2シーズン遅れたのか、それとも早まったのか、と思うくらいには見合っていなかった。
今日はどこかのおじいちゃんがベンチに座っている。
信号を渡れば左に曲がり、あとは一直線に進むだけである。
途中に十字路があるが、右側には古き商店街があり、さらにその先に、朝一で挨拶をしたランドマークがさっきよりも堂々と建っている。
商店街はシャッターが閉まっている店が多いが、これは朝早いからなのか、それともこのご時世だからなのかは分からない。
左側には3つ目の公園があり、通勤路の中では一番の敷地面積がある。
ベンチに座っているカップルもいれば、ブランコで黄昏ている人もいる。
もちろん無邪気な子供もいる。
そんなことを横目に向暑はるはただ真っ直ぐ進むのである。
今日2つ目の信号が見えてきた。
国道を渡るために設置されたであろう信号で、四車線の道を横切ることもあって、青信号の時間は長いし、点滅の間だけで渡れたりもする。
今日は余裕があったので”白い線だけを踏む”というミッションを課して歩いた。
いつの間にか周りには車と社会人とその他が多くなり、時々イヤホンの隙間から”社会の音”が聞こえてくる。
その音をこの道は364日聞いているのだろう。
1日だけはそれが、靴で走る音と歓声に変わるという。
その頃は毎年実家にいるので詳しくはよく知らない。
気づけば目の前に駅が見えてきた。
鉄道橋を渡って、線路を横切る。
真下にはこれから乗る電車が既に到着していた。
スーツの胸ポッケから定期を取り出し、スマートに改札を抜ける。
ピッ
こうして今日も社会人に生まれ変わる。