見出し画像

3/4

来週には満開とキャスターは笑った。

でもその1週間後の今日は、外には出ずに終わりそうだ。

寝る前に充電していたカメラのバッテリーも、今日は休むと言わんばかりに充電中の光がまだ点滅している。

虚しい1日の始まりだ。

布団から出ることを後回しにして、頭上に転がるスマホを開いた。

目覚ましの音楽はまだ鳴っている。

確かこの曲は、向暑はるが高校生の時に一つ上の先輩たちがコピーしていた。

今日みたいな風と日差しが心地よい日だった。

地元の大きなスキー場の一角で、学生も大人も混ざり合った対バンが開かれた。

結局賞を掻っ攫って行ったのは大人たちだったけど、この曲を大自然の中でコピーした先輩たちは、向暑はるの中で特別なものとなった。

あのトビウオのような高揚感は、あの時のあの空間でしか味わえないのだろう。

音楽を止めた。

今日は布団から飛び起きたりはしない。

Twitterを開いて、インスタグラムを開く、そしてまたTwitterを開く。

あ、これさっき開いたわ。

こんなことが向暑はるの日常ではしょっちゅうある。

YouTubeを開いて適当におすすめされた動画を見る。

ガハハ

と笑ったりするけど、その後に残る静けさに途端に虚しくなったのでアプリを閉じた。

そしてまたTwitterを開く。

また開いてしまった。

LINEを見ると、友人から一通届いていた。

横浜のおすすめのディナー教えて。

どうやら彼女とデートらしい。

適当に数件選んで、URLを送った。

さすが。と、ありがとう。

どうやら満足してくれたみたいなので、こちらもコンサルがうまく行った気分で嬉しくなる。

大切な人が喜んでくれたり感謝してくれるのは、普段心の満たされない部分を補ってくれるようで気持ちが楽になる。

ガハハ

と無邪気に笑うスタンプを返した。

途端にまた虚しくなる。

やはり自分自身が幸せになることが、この気持ちに到達する一番の近道だと思っている。

今日はベットの上で無気力に沈んでいる分、明日はトビウオのように説明不可能なバネ力で飛び出したい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?