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はる
2019年11月24日 20:44
どこからかヒーヒーと泣き苦しむ声がかすかに聴えて来たのだ。佐伯は暗がりに眼をひからせた。道端に白い仔犬が倒れているのだった。赤い血が不気味などす黒さにどろっと固まって点点と続いていた。自動車に轢かれたのだなと佐伯は胸を痛くした。犬の声はしのび泣くように蚊細かったが、時どきウーウーと濁った声を絞り上げていた。だらんと伸びて、血まみれの腸がはみだしていた。ピクピク動くたびに、ぶらんとした首がそこらじゅ
2019年11月22日 19:11
「『私は美しい存在でなければならない。』 この妄念はずっと、今に至るまで終始私を苦しめつづけたわ。まるで自分の意思をこえた何か悪魔的な存在が常に私を駆り立て続けては私の精神を支配してしまっていたようだった。 女学生時代だったかしら、私は自分が特別な存在だと思うようになったの。『白皙の美男』なんていうけれど、私は白皙の美少女だったわ。肌理の細かいあの肌。弾力があって光を反射して輝いているあの肌。肌