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アサシンクリードシャドウズの話3 情報を扱うということ

もうこれだけ書けばシャドウズについては発売まで書かなくてもいいか、と前回の記事で思った

のですが、ですがですよ皆さま。
まさかのここにきて『アサシンクリードリシャドウズの発売中止を求める署名』が盛り上がってるという事実。
さすがにもうちょい書くかと調べれば出てくる出てくるアホみたいな情報ソース。
この濁り方は、どろソースを越える濃厚さで胸焼けすらしてくるレベル。
(どろソースは好き。大阪行ったときはお好み焼きにいつもかける)

というわけで前回から少し進展したアサクリシャドウズ炎上周りのお話とそれに付随した濁ったソースについて自論交えつつ書いていきます。


アサクリシャドウズの発売中止を求める署名

https://www.change.org/p/アサシンクリードシャドウズの発売中止を求めます

アサクリヴァルハラが6万本くらいしか国内で売れてないのに、どうして署名が7万も越えてるのかっていう。
買ってない人もノリで投票してるのか、謎は深まるばかり。
どんなトンデモゲーが来るのか楽しみにしてる私としては、日本だけ発売中止とかなったら目も当てられない。
そもそもこの署名での主張である

このゲームは日本の侍を主題にしており、侍が武士階級の上位階級であり、「御家人」あるいは貴人に仕える者であるべきという事実を無視しています。

https://www.change.org/p/アサシンクリードシャドウズの発売中止を求めます

っていうのがもう認識違い。
戦国時代の侍は、それまで連綿と続く天皇由来の偉い人用傍仕え武装集団ではなく、あくまで「戦闘要員」として見做されていたってのは、日本で最初に自爆した商人出身の松永久秀や同じく商人出自の小西行長なんか見ればわかるのではないか。

戦国時代は戦以外にも権力者に取り入り、何がしかの手柄さえあげれば武士・侍として取り立てられる時代であった。
弥助に関して言えば、信長に気に入られ近侍・小姓として取り立てられた時点で武士あるいは侍であると言える。
室町以前、あるいは江戸時代以降の多くの人が知ってる「侍とは」という感覚とごっちゃにしては意味がないというか。

上記記事でも少しまとめたが、現代人の感覚で戦国時代の『侍』の定義は難しいと思う。

色んな視点が見れた

https://note.com/aseek_osaka/n/nf034c1d42301

まず前提として認識すべきなのは、日本と欧米は「たいへん離れている」ということだ。調べればわかることだが、TempleとShrineの認識は我々日本国民と欧米人は、明らかに違う。
また、海外や地理に興味のない日本人に、ノートルダム大聖堂とサグラダファミリアとロンドン塔の区別をしろといわれれば、何人かは間違えるだろう。
そして、今回はましてや現代ではない、過去のことだ。
歴史の大家といわれる小説家の先生たちでさえ時代考証校閲をうけるのだから、時差12時間の遠国にいる外人たちに、他国の精査を求めすぎるのは酷だ。

https://note.com/aseek_osaka/n/nf034c1d42301

ここの内容は目から鱗でした。
インターネット社会とはいえ、距離の問題は失念しており、確かによく考えたら畳み一つとっても「そんなん知らねーよ」と言われてもおかしくない。
もちろん入念に調べて欲しいという気持ちはあるものの、既に現存して無いものは調べようもないし不可能な物だってある。

悲しきまとめ

そんななかでこの方のnoteを読んだ際に、炎上騒動のまとめ紹介の一部としてピクシブ百科事典の記事がありました。

https://dic.pixiv.net/a/シャドウズポリコレ炎上騒動

これ読んでて笑いを通り越して呆れてたんですが、これが事実として世に出回ってるのかと思うと頭を抱えた。
上記記事がソースとして世に出回ってることもあり得る。
(というかここまでまとめられてることを考えれば、既に出回ってるものをまとめてのであろうか)


全て訂正して回ってくとそれだけで記事が終わってしまうので、気になったところを何点か紹介しようと思う。

1 ファミ通の記事

UBIの開発陣は弥助を「私たちの侍」と称し「日本人ではない私たちの目になれる人物を探していた」とインタビューで答えていた。
上記に関しては、私の最初の投稿でも触れたが

なぜこれを紹介したかというと、今回の発言「日本人ではない私たちの目」というのが、上記日本奥地紀行のバード女史にあたるのではないかということ。
明治時代どころか戦国時代まで至れば当時日本は西洋史から見ると不思議の国だったと思います。
黄金の家が山ん中に唐突に立ってたり、かと思えば池の上に黄金の家があったり、ちょんまげしてたり、チビの癖に態度デカかったり。
そういった日本固有の不思議な価値観というものは、日本で生まれ育ったものから見たら当然のものと思い特段不思議とは感じにくいです。
弥助という日本ではない外の世界で生まれ育った目から見た、不思議の国を現代の我々ゲーマーにも同じように体感してほしかったのではないかと思ったのです。

日本で生まれ育った人物ではなく、日本ではない外の世界で育った人の目から見た不思議の国を体験してほしい。
ということなのではないだろうか。
イザベラバード視点的な。
従来のアサクリでいっても主人公は架空の人物で、今回弥助は実在の人物でありながら出自以外ほぼ謎だったことから準架空の人物として抜擢されたのではないかなと。

このインタビューに関しては受け取り方次第の問題なので、ここではこれくらいで置いておく。

2 雑すぎる歴史考証の項

桜と青田と芒と鶴が同時に登場し、四季の統一感が皆無。

https://dic.pixiv.net/a/シャドウズポリコレ炎上騒動

宣伝用トレーラーで演出として混ぜるのは一般的ではないかと

安土城の天守の畳が正方形(江戸時代に薩摩藩から琉球王国に伝えられて、現地で独自に発展した「琉球畳」と呼ばれる畳)。天井や障子も妙にクソでかい。

家臣たちは全員胡座ではなく正座(正座を推奨したのはやはり江戸時代の徳川家光)。縁石にも普通に乗り上げている。
信長は板張りに座らせる。森蘭丸も信長と同じ壇上にいる。上座もへったくれもない。

https://dic.pixiv.net/a/シャドウズポリコレ炎上騒動

結構調べたんですが、むしろ戦国時代以前の書院造の詳細がそもそもそんなに残ってなくて、実際はどうだったかがむしろ分からない。
多分おかしいと言ってるのは資料残ってる江戸以降での話では?
ここは変と言えば変だし、もしかしたらそうだったかもしれないで考えればおかしくない。

奈緒江の刀を背中に差し込んでいる。

https://dic.pixiv.net/a/シャドウズポリコレ炎上騒動

奈緒江に関しては完全に架空の人物。
ハットリくんも背中に差してるよ。

神社の境内で線香を焚く。日本文化において神社は神道の施設、寺院は仏教の施設であり、神社で線香を焚くのはもっての他。外国人には違いが分からなくて仕方ないのもあるが、UBIが日本文化を調べると言った以上、今回においては擁護できない所ではある。

https://dic.pixiv.net/a/シャドウズポリコレ炎上騒動

仏教が日本に馴染みだした平安後期以降~明治以前には『神仏習合』という考え方がありました。
平安時代に大乗仏教の考えが日本に乗り込んだとき、有力豪族の間で「仏教は日本古来の神の考え方に合わぬ!」という勢力と「新しいものとして受け入れようぜ!」勢力が対立しました。
物部氏を率いる「排仏派」対立する蘇我氏を率いる「崇仏派」が戦いに発展。
戦いは蘇我氏率いる「受け入れようぜ」派閥の崇仏派が勝利し仏教の導入が本格化した。って義務教育でやりましたね。

仏教での仏は八百万の神の一部(あるいは同一視)され、例えば仏教の大日如来は国つ神の天照大神と同一に扱われ、神社に仏像が置かれたりしたそうです。
神棚に仏像置いてたのであれば、線香炊いててもおかしくないのでは?
上記引用先の言葉を皮肉るのであれば、擁護できました

甲冑姿のまま町中を歩く弥助と、それを尊敬の眼差しで見る子供。当時の感覚でもそんな奴がいたら怖がられたよ。

https://dic.pixiv.net/a/シャドウズポリコレ炎上騒動

ゲームの演出上、普段着が甲冑なだけでは。

コレクターエディションの特典フィギュアで弥助の幟に豊臣家の家紋(この地点で秀吉は羽柴性。豊臣の性を与えられたのは関白を賜ってから)を付けている。

https://dic.pixiv.net/a/シャドウズポリコレ炎上騒動

これに関しては物語進めたら最後は秀吉から豊臣姓もらうとか?さすがにないか。凄いネタバレ。
ゲームやって見ないと判断付かないのかなと。だって弥助家紋残ってないですし。

海外向けに作中に弥助が着用する甲冑のレプリカを作るも胴体部分に付いている織田家の家紋が上下逆。ちなみに家紋には著作物に該当する。

https://dic.pixiv.net/a/シャドウズポリコレ炎上騒動

二代目四代目とかの偶数の代にて家紋を逆さまにする風習があるとか以前家紋の本で見かけたことがあります。
これもゲーム内で説明がある可能性もありますし、制作者が参考にした家紋がそのルールに則ってなにか意図ある形でそうしたのかもしれません。
制作者に聞かなきゃそこは分からないかと。

歴史以前に根本的な日本の環境すら理解できていないのだが、ゲームディレクターは「織田信長のような実在した歴史上の人物や当時の出来事を忠実に描いているので、封建時代の日本を舞台にゲームを楽しみながら、この素晴らしい時代について学ぶことができます」と豪語(参考)している。

https://dic.pixiv.net/a/シャドウズポリコレ炎上騒動

上記参考記事はこちら

侍や忍といった設定はゲーマーにとって馴染みのあるものですが、このゲームではその設定をどのように差別化しているのでしょうか?
Benoit: 戦国時代末期は、日本史における大きな転換期です。『アサシン クリード』シリーズは、その歴史描写と緻密な世界再現で知られていますが、『アサシン クリード シャドウズ』でもそのこだわりを発揮できます。
本作は、織田信長のような実在した歴史上の人物や当時の出来事を忠実に描いているので、封建時代の日本を舞台にゲームを楽しみながら、この素晴らしい時代について学ぶことができます。
プレイヤーの皆さんは日本が誇り、日本史上にも活躍の記録が存在する「侍」と「忍」を体験することができるのです。

https://news.xbox.com/ja-jp/2024/05/16/assassins-creed-shadows-interview/

この記事について私も読みましたが、「忠実に描いている」という点が炎上要因の一つとなっています。
描いているかどうかは前述にて私も一部反論しましたが、それはそれとしてこれを読んだあと思いませんでしたか?原文どうなってるんだろう?と。

回答者(おそらく出題者も)は海外の方なので、インタビュー内容は当然英語であろうことは想像に難くない。
ではその内容は?ということで探しました。

そしたらすぐ見つかりました。

This is a familiar setting for gamers – how does this game differentiate its take on the setting?
Benoit: We’re at the end of Sengoku era, in a turning point of Japan history. Assassin’s Creed is well known for its depiction of the history and accurate recreation of the world and it’s what players can expect with Assassin’s Creed Shadows.
We’re showing real historical figures, such as Oda Nobunaga and a lot of events that happened during that time, so you’re not only playing in feudal Japan, but learning about this fantastic time period.
Also, we’re giving the opportunity to the players to live not just one, but the two best fantasies of Japan: the Samurai and Shinobi.

https://news.xbox.com/en-us/2024/05/15/assassins-creed-shadows-interview/

とあります。
こちらを翻訳すると以下となります。

ゲーマーにはおなじみの設定だが、本作はどのように差別化を図っているのだろうか?
ブノワ:私たちは戦国時代の終わり、日本の歴史の転換点にいます。アサシンクリードは歴史の描写と世界の正確な再現でよく知られており、プレイヤーはアサシンクリードシャドウでそれを期待することができます。
織田信長などの実在の歴史上の人物や、その時代に起こった多くの出来事が登場するので、封建時代の日本をプレイするだけでなく、この素晴らしい時代について学ぶことができます。
また、私たちはプレイヤーたちに、日本の2大ファンタジーである「侍」と「忍び」を体験する機会を提供しています。

『忠実に描く』って無かったね。
そこの部分は翻訳家の匙加減であったということが分かったはずですし、これでそろそろ皆さん安心できたのではないか。

情報ソースの厳密性

ソースを調べて発言しろとは言うものの、信頼性の低いソースも多い。
これは今回のnoteで少しはご理解いただけたのではないかと思う。
その情報は本当に信頼性の高いものであるのか、発信者は誰か、その内容は翻訳や切り抜きで原文はどうなってるのか。
これらを調べるのは確かに途方もない労力が必要となる。
しかし正確な情報を収集し、正しい情報を発信するのは情報発信者である者の責務であると思う。

現代はインターネット社会であり、かつての多くの人がただ情報を一方的に受け取る側という時代ではなく、誰もが情報発信者であるという認識をもってほしい。
そのあなたの発言一言が世界に誤解を生む要因になりうるのだから。

私も気を付けます。
指摘などあれば責任をもって記事修正します。

( ^ω^)えー手慰みの記事で6000文字越え・・・


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