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アサシンクリード シャドウズにおけるポリコレ問題の話1

『1』とはしたが、2があるかどうかは正直分からないが発売後2の話を書きそうなので、あえて1とさせていただく。

本件、日本だけではなくRedditなどを見るに世界中で問題として燃え上がっている。
私の基本スタンスというか主義として「やってもいないゲームを批判しない」なので、あえてこの問題に発売前の段階から触れようとは思わなかったのだが、Xあるいは5chまたは周りの友人たちからも話題として挙がっているので何も発言しないのもなんだかなと思い筆をとることにした。

炎上理由

1 人種と地域の問題

まず炎上内容として挙げられたなかで最も批准が多かったのが
『今までのアサシンクリードであれば舞台の人種と主人公の人種は同一だったのに、今作は合っていない。』
というものだ。

日本が舞台なのに弥助という史実には登場するものの、謎に包まれたアフリカ系移民を主人公としてわざわざ出す理由がない(ブラックウォッシュ)とこういうことだそうな。

この時点で色々思うことはあるのだが、まずは以下のリストを見て欲しい。
これは今までのアサシンクリードのシリーズの舞台と主人公の属性をまとめたものである。

  • アサシンクリード1:アラブが舞台 主人公はアラブ人(?)のアサシン

  • アサシンクリード2:イタリアが舞台 主人公はイタリア人のアサシン

  • アサシンクリード3:アメリカが舞台 主人公は英系移民とネイティブアメリカンのアサシン

  • アサシンクリード4:カリブ海が舞台 主人公はイングランド人の私掠船船長

  • アサシンクリードローグ:主にアメリカが舞台 主人公はアイルランド系アメリカ人の元アサシン

  • アサシンクリードユニティ:フランスが舞台 主人公はフランス人のアサシン

  • アサシンクリードシンジケート:イギリスが舞台 主人公はイギリス人の姉弟アサシン

  • アサシンクリードオリジンズ:エジプトが舞台 主人公はエジプト人のメジャイ

  • アサシンクリードオデッセイ:ギリシャが舞台 主人公はスパルタ人の傭兵

  • アサシンクリードヴァルハラ:イングランド四王国が舞台 主人公はノルド人のヴァイキング

  • アサシンクリードミラージュ:アラブが舞台 主人公はアラブ人のアサシン

とメインストリームは上記となっている。
上記以外にもストーリーを分厚くするためのサイドストーリーとして、『レディリバティ』や『クロニクルシリーズ』などがある。

こう並べて見ると共通点としては『主人公は史実の人物ではない』が挙げられる。
日本での炎上を広めている方々も上記をポイントの一つとして批判を行っている。

https://x.com/Goliback1234v/status/1791975793599692867

そして上記のものとは別に(いや付随してか?)もう一つ燃え上がるのに大きな燃料があった。

2 ファミ通のインタビュー

ファミ通の制作者インタビューで下記の記載があった。

「弥助については、まず”私たちの侍”、つまり日本人ではない私たちの目になれる人物を探していましたが、」
*現在はこの記述は修正されています。

上記の記載をもとに世界中の炎上が加速したようです。
これはUBI制作チームがもともと「日本人ではない侍が欲しかった」と言っている文化の盗用を目下行っているということの証左だということだそうです。
つまり『日本人を主人公にしたゲームを作りたくないと同義である。』と一部ユーザーは批難しているのである。

私の考え

まず前提

私個人の感想を言う。

奈緒江のことも忘れないで!

まず主人公の片割れである奈緒江さんについても既に発表されている。
奈緒江さんは(おそらく)日本で産まれ育った生粋の日本人で架空の人物。
発売前のため彼女が弥助に対してどれだけ登場割合が低いか高いか分からん中で、弥助のみをフィーチャーして「日本舞台なのに主人公が日本人じゃない」とかいうのはおかしいと思う。

長いシリーズであるだけに毎度の約束事があるのは分かるが、それに縛られて確定したルール付けを行うのは物を作るうえで勿体ない気がする。
奈緒江の存在は黒人の弥助出すためのカモフラージュで、誤魔化すためにあえて出した」なんて意見も見かけたが、やってもいないゲームを何故現時点で評価できるのか。
UBIの中の人でしか分からない判断を今すべきではないんじゃないか。

出自の問題

過去のアサクリ2の派生作品であるリベレーションズはイスタンブール(現トルコ、当時東ローマ・ビザンツ帝国)はイタリア人主人公だが、1の主人公アルタイルの系譜でアルタイルの故郷を追体験するってことだから問題ないとした意見もあった。

1の舞台エルサレムで2の舞台イスタンブールなんで、めっちゃ距離あるっていう。
アルタイルの書庫はイスタンブールにあったんだっけ、あれキブロス島?やばいそのへんの記憶は薄れかかってる。

左上がリベレーションズの舞台で右下が1の舞台

そも当時のビザンツ帝国(2の舞台)とエルサレム王国を破ったサラディンが創設したアイユーブ朝(1の舞台)は別。
確かにリベレーションズ内でアルタイルの過去を体感するシーンはあったが、ゲーム全体としてエツィオがアルタイルの追体験をするのは数か所で1つのアクセント程度だった覚えがあります。

また4の舞台カリブ海ですが上で挙げた通り、主人公はイングランド船長なので、当時の舞台の現地人ではありません。
当時カリブ海は多くはスペインの植民地となっていましたが、現地民全員を奴隷として本国に輸送しているわけでは当然ありません。
現地にも当然多くの現地民はおり、カリブ海沿岸に元々住んでいたインディアンのアラワク族やマヤ人などもいました。
彼らを主人公にしていない=舞台の主人公が現地人のみではないのはシャドウズに限った話ではないかと思います。

ファミ通での発言

「弥助については、まず”私たちの侍”、つまり日本人ではない私たちの目になれる人物を探していましたが、」
こちらの真意ですが、もちろん批判する方々の言う通り『日本人を主人公にしたゲームを作りたくないと同義』という意見によって生まれた可能性も否定は出来ません。
ですが私個人は別の見方をしました。

私の大好きな書籍に実在のイギリス人女性冒険家のイザベラ・バード著書に『日本奥地紀行』という本があります。

これは当時文化の先端だった欧州の女性冒険家が、封建時代の終わりから新しい世の中に変わりつつある明治時代直後の情景を実際に見て、横浜から日光街道を通り栃木へ、そのまま新潟秋田青森を経由して当時の日本人からしても謎の大地であった蝦夷(北海道)へ旅をする日本旅行記です。

自分の知ってる明治維新期の価値観変わりまくりの一冊。

ちなみに日本奥地紀行を原作とした漫画版もあります。

今ではダンジョン飯でお馴染みのハルタです。

なぜこれを紹介したかというと、今回の発言「日本人ではない私たちの目」というのが、上記日本奥地紀行のバード女史にあたるのではないかということ。
明治時代どころか戦国時代まで至れば当時日本は西洋史から見ると不思議の国だったと思います。
黄金の家が山ん中に唐突に立ってたり、かと思えば池の上に黄金の家があったり、ちょんまげしてたり、チビの癖に態度デカかったり。
そういった日本固有の不思議な価値観というものは、日本で生まれ育ったものから見たら当然のものと思い特段不思議とは感じにくいです。
弥助という日本ではない外の世界で生まれ育った目から見た、不思議の国を現代の我々ゲーマーにも同じように体感してほしかったのではないかと思ったのです。

早い話が出自どころか後年に至っても謎に包まれたちょうどいいツッコミ役が弥助だったのかなと。

ポリコレvs反ポリコレ

今回炎上した要因は、ゲーム業界(エンタメ業界全般)でここ10年に渡って問題とされる「ポリコレ問題」です。
ポリコレとはポリティカルコレクトネス(political correctness)の略称です。
社会の制度や表現を差別・偏見のないものに変えて、人種・性別・年齢・などによる少数派の意見や社会的弱者を守るための運動のことです。
肌のカラー問題、LGBTQ問題などがこれにあたり、近年論争が過激化しています。

映画やドラマなどでも度々話題に上がります。
元来男性だったキャラが女性に変わったり、白人系だった女性が黒人女性に変わったりで、問題になるのを見かけた方も多いのではないでしょうか?
近年だとディズニー映画のリトルマーメイドが黒人女性になったのも話題になりました。

同様にゲーム業界でも期待作のAAA(大規模)ゲームでは規模も大きいため話題に上がることが多いです。

そして最近ではゲーム業界だけでなくエンタメ業界全般に広がるポリコレの流れを嫌う『反ポリコレ』を掲げる方も多く増えています。
それは原作が大好きで改変されるのを嫌った方だったり、自由な作風を好むのにポリコレ運動によって縛られた窮屈な作品にされてしまうことを嫌う方だったりと、単にミソジニー(女性嫌悪)やミサンドリー(男性嫌悪)を理由としたものだったりと様々な理由でポリコレを嫌っている様です。

*ゲームに限って言えば、女性ゲーマーより男性ゲーマーの方が圧倒的に多いので、ミサンドリーでポリコレ運動になることは少ないかも。

ゲーム業界ではポリコレ運動に対して反ポリコレ運動として『Sweet Baby Inc detected』という運動がPCゲームのプラットフォームであるSteamで持ち上がりました。
これは多様性を謳う脚本・執筆などを手掛けるSweet Baby Inc.社を利用したゲームはどれかというのを列挙しリスト化するという運動です。
リスト化しリストに該当する企業のゲームは遊ばないようにする、という自己ルール確立の為の運動で反ポリコレ運動の象徴ともいえるものです。

詳しくはGameSparkの記事が詳しかったので載せときます。

今回のアサシンクリードシャドウズはこのSweet Baby Inc.の排斥運動の流れを汲む反ポリコレ運動を中心としたものです。

孫の手

私はこの流れがものすごく苦手で「日本人の矜持を反ポリコレ象徴の叩き棒として使おう」って意志が見え隠れしているからです。
「自分が気に入らないから」「自分が好みでないから」など自分自身の目で見て耳で聞いて脳で判断したものであるなら、それがどんな意見であっても一定の支持はするようにしています。
ですが「自分の意見の代弁として他者の意見を使う」ってのは、1ミリも応援出来ません。
今回の件で意見を言ってる全ての人がそうだとは決して思いませんが、そういう方も日本ならびに海外にいるのを見ています。

後書き

まずは発売してから、プレイしてから、出来ればクリアまで遊んでから改めて文句を言いたい。
ヤマウチ・タカはどう絡んでくるのか、伊賀忍vsアサシンの対決はあるのか、近畿地方のオープンワールドて山ばっかじゃないのか、気になるところは数多くある。

最後に書いてた時に思い出したブルーハーツの青空という曲の歌詞で終わりにします。

生まれた所や皮膚や目の色で いったいこの僕の何がわかるというのだろう

1988年の曲。
マーシー未来に生きすぎ。

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