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⑨後輩ちゃん初コンペへ

「年間2億?」

俺だけではなく、後輩ちゃんも驚いていた。
その額が広告出稿費用として大きいことは、後輩ちゃんにも分かるようだ。

「そう。B社からデジタル広告コンペの依頼が来ている。TVCMなどは別の会社がやるみたいなのだが、今回別の予算でデジタルを提案してほしいと言われている」
「なるほどですね」

俺はそう言って、本部長からもらった資料をみる。

そこにはB社の資料で、「新製品」に関する資料がまとめられていた。

B社は化粧品の会社だ。

基本的にはドラックストアなどで販売される通称:ドラコスをメインとして扱う化粧品会社である。

B社の課題はメインユーザーが30代以降の女性であり、
競合と比較して20代の購入比率が少ない点である。

それを打開するために今回の「新製品」を製作したようだ。

「D2Cってことですね」
「そうだ。夏からローンチするみたいなのだが一緒に進める代理店は既に決めておきたいみたいだ。」
「そこでうちと他何社かに声がかかったと」
「そう。営業から見積もり含めた提案サポートの依頼が来ている」
「久山さんではなく、俺が担当したほうがいいですか?」
「久山もサポートで入るが、正直稼働時間はほぼとれないだろう。だからはるの中心でいいく。そして、」

本部長が後輩ちゃんをみた。

「後輩ちゃんがサポートする体制でいこう」
「え?」

後輩ちゃんは動揺を隠せなかった。

「本部長、後輩ちゃんは昨日配属になったばかりで…まだ教育とかなにも…」
「やりながら教えてやれ。その方がすぐ覚えるだろ」
「まぁそうですが…」

俺は後輩ちゃんをちらっと見る。

後輩ちゃんは「頑張ります!」という目をしていた。

いやー頑張りますと言われてもなぁ。
はるのはそう思いながら苦笑いをした。

「とりあえず営業との打ち合わせが今日の午後から入っている。それ出てくれ」
「わかりました」

本部長が部屋を出ていこうとする。

俺はその背中に声を掛けた。

「ちなみに営業って誰なんですか?」
「あ、辰巳らしいよ」
「ええ。辰巳さん! 産休戻ってきてたんですか?」
「みたいだ…まぁうまくやってくれ…」

辰巳。

その名前はマーケティングチームで厄介な名前のトップだった。

俺はその詳細を後輩ちゃんに言おうか悩んだ。

後輩ちゃんは本部長から渡された資料を熟読していた。


続く

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