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⑧はるさん

「弱った」

思わず心の声が出るような展開だ。

俺は加奈を妊娠させた。
加奈はただのセフレだ(おれは彼女だと思っているが世間的にはセフレだ)
それを昨日新卒でうちに配属になった女の子にバレてしまった。

その新卒女子と今から1on1だ。

新卒女子は「先に部屋向かっていますね」と言って、席を立った。

前の席で久山も気まずそうな顔で見ている。

まぁ全部悪いのは俺だ。
そう思って、後輩ちゃんが待つ会議室にいった。

会議室に入ると後輩ちゃんがその日まとめた議事録を整理している。
俺はその前の席に座った。

「あ、はるのさん…議事録で質問があり…」
「お、おう。どうした?」
「この言葉の意味が分からなくて…」
「あ、これはね…」

そんな感じ。
普通の会話で1on1が始まったが、
浮気がばれているような気分がして気持ち悪かった。

俺は我慢できず切り出した。

「あのさ、さっきのチャットなんだけど…」
「あ、はい…」
「えっと…驚いた?」
「そうですね。」

言葉を探したが、後輩ちゃんが続けた。

「でも…なんか社会人だなって思っています」
「え?」
「私大学生の時、体育会フットサル部だったんです。それで恋愛とかあまりなくて…なんかそういうのあるのすごいなって。」

謎に目をキラキラさせた後輩ちゃんが面白かった。
心なしか頬を赤くしている。あほなのか?結果オーライなのだろうか。

「ちなみにその人彼女ではないってことです…?」
「うーん。どうなんだろ??
「あれですよね…?そのセフレというか。」
「まぁそうね。」

なぜか後輩ちゃんは目を輝かせたままだった。
俺は何を教えているんだろう。まぁ一旦いいのか。

「後輩ちゃんは彼氏とかいるの?」
「今いないんです。遊んでみたいです…わたし」
「何を言ってんだ(笑)」
「いやなんかその合コンとかもなくて…いつか行ってみたいなと思っているんです」
「まあその内に行くようになるから大丈夫だよ」
「そうですかね…」

後輩ちゃんは続ける。

「はるさん…」
「ん?」
「はるさんって呼んでいいですか?」
「え、いいけど」
「はるのって元カレにいて嫌なんですよね。そいつクズだったんで。」
「俺もクズだけどな」
「いやいや。はるさんはこれからの行動次第ですよ」

俺と後輩ちゃんは笑っている。
昨日リクルートスーツだった後輩ちゃん。
今日はオフィスカジュアルな恰好をしている。
後輩ちゃんは少しだけ昨日より可愛く見えた。

そんな時だった。
コンコン。とノックの音が聞こえる。

ドアを開けると本部長の姿があった。

「はるの、後輩ちゃんちょっとだけいいか?」

続く

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