【新人王候補】戸郷翔征を徹底分析してみた
まえがき
今回の記事では高卒2年目ながら開幕ローテ入りが有力視され、新人王も期待される戸郷翔征のオープン戦を昨季と比較しながら様々な角度で分析していく。
1.オープン戦の基本投球成績
ここでは基本的な指標を見ながら簡単にオープン戦の振り返りをしたい。
先発として2登板(8.2回)をしたオープン戦だが防御率9.35,whip1.96と優良な成績だとはとても言えない結果に終わった。これはソフトバンク戦で4回持たず10失点した事に起因する。
ここまで良い所ナシの様にも見えるが好材料も勿論ある。挙げられるのは奪三振率の高さだろう。10.80という数値は昨季最多奪三振に輝いた戸郷翔征の師匠山口俊よりも高い数値だ。
ソフトバンク戦の大炎上で全体的に指標が悪化してしまったが、持ち前の奪三振能力の高さは発揮できており、与四球がヤクルト戦くらいに(5回1四球)収まってくれば支配的な投球も十分可能な選手であると言えるだろう。
2.球種別・コース別投球成績
戸郷は主に4つの球種(ストレート,スプリット,カッター,スライダー)を投げ分けており、ここでは球種別・コース別成績を確認していく。
①ストレート
まずは投球の根幹となるストレートだが、平均球速は147.62kmとチームトップクラスの数字を残している。本人は160kmを一つの目標にしており、シーズンに入れば更に上がっていくだろう。
だがそんな魅力たっぷりで武器になりそうなストレートも球威は勿論あると思うが空振り率は並であり、投球の軸として使っていく為にはゾーンに投げる力技だけで無くコースにしっかり投げ分ける技術が必要だろう。
ここでストレートが投球の軸として使えているか確認する為にストレートの投球チャートを確認して欲しい。
好投したヤクルト戦は時折甘い球があるもののコースに投げ分けるピッチングでストレートの被安打は1つに抑えているし、ストレートが投球の軸になっていると言えるだろう。
だが大炎上したソフトバンク戦はど真ん中に3球もストレートを投じてしまって、その内2球は安打(いずれも失点)になってしまったりとストレートだけで6安打を喫してしまった。やはりしっかり制球が出来ないと痛打を浴びてしまう。
この様な事から戸郷はストレートを制球する技術は持ち合わせているもののまだ安定はしていない事が分かるし、投球を見る際は軸となるストレートの制球に注目して見ると良いかもしれない。
②スプリット(フォーク)
続いては昨オフに山口俊から伝授されたスプリットを見ていく。
昨季はストレートとカッターが主体だったと話す戸郷はスプリットを改良して割合を増やす事に成功した。実際ヤクルト戦ではスプリットを連投した後ストレートで三振を奪うなど投球にも更に幅が出てきている。空振り率やコンタクト率は高い水準を保っているし、左打者から見れば”逃げていく”様に落ちていくスプリットはシーズンに入っても大きな武器になるだろう。
ここからはスプリットの制球や配球を確認する為に投球チャートを確認したい。
低めに集まっていて制球力がかなり高く、ベース盤から左打者の外角に落とした球はボールゾーンでもストライクが取れていて、ストライクゾーンだとしても低めに集まれば殆どヒットにされていない事が分かる。
上記の様に現時点でも十分な武器になっているスプリットだが、最終的な理想は状況別で落ち幅を変えられる球、具体的にはカウント稼ぎにもウィニングショットにも使える球にする事だろう。
③カッター
3つ目は昨季ウィニングショットとして空振り率40%越えを記録したカッターを見ていく。
まず目に入るのが投球割合の減少だが、前述の通りスプリットを利用する機会が増えた事が理由であり決して後ろ向きな理由で減少した訳ではない。事実としてカッターの空振り率やコンタクト率は依然として高い水準を維持している。
ここからは前の2つと同様に投球チャートで制球や配球を確認していきたい。
分かる事は右打者から見れば”逃げていく”、左打者から見ればバックフットに来るコースに多く投げ込まれている事だろう。ソフトバンク戦では甲斐拓也にこのコースのボールを4球投げる事で空振り三振を奪っていて一定の効果がある攻めだと言える。またカッターの被安打が0だという事もこの球種の脅威性を如実に表しているだろう。
加えて戸郷は現時点でも十分通用しているカッターの引き出しを更に増やそうとしている。
記事の内容を読むと「(感触は)悪くはない。打者が振っても分からないくらいの軌道だと面白いと思う」と話しており、従来のカッターに比べ速球に近いスピードで小さく変化するボールを解禁するようだ。この球が実用化すれば投球のバリエーションがかなり増えるだろう。ランナーが出た際に投げれば併殺が狙えるし、従来のカッターでは投げ込んでいなかったコースに左打者ならバックドア、右打者ならフロントドア気味に投げる事でこれまた武器になるだろう。
④スライダー
最後はスライダーを見ていくが、上3つに比べて割合もクオリティも落ちているのであまり実戦的なボールだとは言い難い。
これまで同様に投球チャートで制球や配球を確認していく。
見切られていたり真ん中に集まってきた球が多く、前の3つに比べてクオリティ不足な面が目立つ。1軍でこの精度の球を投げ続ければ高確率で痛打を浴びてしまうだろう。
3.左右別投球成績
ここからは左右別投球成績を確認していく。
まずは対左から見ていくが、昨季に比べて被OPSはかなり改善しており進化の形跡が見える。この理由として一つ考えられる事は先程の章で述べたスプリットの改良だろう。左打者は150㎞の直球、喰い込んでくるカッター、逃げていくスプリットを上手く対処しなければいけない為ハードルがかなり高い。
だが一方で対右は被OPSが大幅に悪化している。ソフトバンク戦ではバレンティンや松田といった強打者にカッターを見切られ四球を出したり、甘く入ってきたストレートを叩かれHRにされてしまった。勝負が出来ず四球を4つも出したり、球が甘く入って何度も痛打されるのは本当に勿体ない。その点新球のカッターには期待が膨らむ。前述の様にしっかり使い分ければ右打者にも大きな脅威になるだろう。
4.まとめ
戸郷は出力に変化球のクオリティにプロ意識に全てが高卒2年目だとは思えないくらい高く、森下や岡野といった素晴らしいルーキーが居る中でも十分に新人王争いをしてくれると思っている。まだ若いので無理だけはさせて欲しくないが澤村以来の新人王に輝く事を心から期待している。
今回の記事はいつもの記事に比べて長くなってしまった中、最後まで読んで頂き本当に有難うございます。何か気づいた事などありましたら、TwitterのDMやリプライでご気軽にご連絡下さい。
今回の記事を書く契機になった・参考にしたnote
中日ファンブロガー ロバートさんが岡野祐一郎投手について書かれたnote
広島ファンブロガー Yumaさんが森下暢仁投手について書かれたnote
aozoraさんがまとめられた巨人投手陣のピッチング成績に関するnote
参照したサイト
スポーツナビ (https://baseball.yahoo.co.jp/npb/player/1900039/top)
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