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シン・ゴジラの巨災対のようなチームになりたい

個人的に死ぬほど好きな映画の一つがシン・ゴジラです。

全編通して好きなのですが、その中でも好きなのが「巨大不明生物特設災害対策本部」、通称「巨災対」が仕事をしているシーンです。

「巨災対」は、私にとって理想のベンチャーの姿です。

※ネタバレ含むのでご注意ください

 

1.Missionを同じにした諦めないチーム

巨災対は「ゴジラをどうにかする」というMissionを達成するために組成したチームです。

チームと集団の違いは、同じ目的を持っているかどうか。

チームは同じ目的を持ち、
集団は同じ目的を持ちません。

チームが爆発的な力を発揮出来るのは、チームの全員がMissionを成し遂げることに合意しているからです。

巨災対がMission実現に本気なことが分かるシーンがあります。

それはゴジラによって東京都心部が壊滅的な被害を受け、巨災対のメンバーが立川の避難所に集まるシーン。

東京都心は大きなダメージを受け、政治機能も断絶しているなかで、巨災対のメンバーはそれでもゴジラをなんとかするために仕事を続けます。

「いや、自分はべつにゴジラはどうでもいいんですけどねw」という「集団」であれば、Missionは達成出来なかったと思います。

 

2.知性とEQ(感情指数)の高いプロ達

巨災対は登場シーンの前からイケてます。

泉「巨災対だろ。君がその事務局長を拝命したと聞いている。出世してるな。いい事だ。」
矢口「そのチームの人選を泉に頼みたい。霞ヶ関には顔が広いだろ。」
泉「了解した。首をナナメに振らない連中を集めて渡すよ。
矢口「ああ。骨太を頼む

シン・ゴジラ

この「首をナナメに振らない」「骨太」という言葉が、まさにその後の巨災対のことを表しています。

巨災対が出来る前に登場していた専門家達は「全く初めてのことで、なにも分かりません・・・」というだけで、何も試行錯誤をしない。

しかし巨災対は、分からない中でも、自分の仮説をどんどん出していき、手を動かし、分析し、チームで検証を進め、真実ににじり寄っていきます。

「どうしたら課題を解決出来るか」というスタンスを、捨てないのです。そしてアウトプットを出し続ける。

まさに「首をナナメに振らない」「骨太」という言葉、そのものです。
コメンテーターではないのです。

ちなみに、巨災対メンバーの紹介シーンも最高です。

森「そもそも出世に無縁な霞ヶ関のはぐれ者、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、学会の異端児、そういった人間の集まりだ。気にせず好きにやってくれ」

シン・ゴジラ

ベンチャーというのは、まだ世の中にないサービスを生み出し、発展させ、世の中を変えようとする変わり者の集団です。

いわば、アウトサイダーと言えます。

ちょっと前に「The Third Door」という本が注目を集めました。

「正面入り口(ファーストドア)は長い行列ができていて99%の人は深く考えずにそこに並ぶ。VIP専用入り口(セカンドドア)も当然用意されているが、ここはセレブや名家に生まれた人だけが利用できる。そしていつだってそこにあるのに誰も教えてくれないもう一つの入り口を、サードドアと例える。そこをこじ開けるためには行列から飛び出さないといけない。裏道を抜けて、何百回もノックをしないといけない。著者がこの旅で出会う人々は、みなサードドアをこじ開けた人だ。」

The Third Door

ベンチャーに集まる人というのは、まさにこの「The Third Door」を開けようとする人たちです。


3.フラットに正面から課題解決のためにディスカッション出来るチーム

私は陰でコソコソ誰かの悪口を言ったり、問題に正面から向き合わない傷を舐め合う集団が好きではありません。

すぐ感情的になる人も好きでありません。

最近では一般的になってきた「心理的安全性」という言葉ですが、巨災対の中ではまさに心理的安全性を実現し、フラットに正面から解決のためにディスカッションしています。

おそらく秘訣は、「知性とEQ(感情指数)が高いプロが集まったこと」「Missionが同じチームであること」そして、矢口巨災対事務局長の最初のMTGでの一言だと思います。

矢口「矢口巨災対事務局長の矢口だ。本対策室の中ではどう動いても人事査定に影響はない。なので役職年次省庁間の縦割りを気にせず、ここでは自由に発言してほしい。」

シン・ゴジラ

矢口巨災対事務局長はその後も、ディスカッションの中では早々に結論は言わず、傾聴に集中しています。

会議のオーナーである矢口巨災対事務局長が発言してしまうと、それを「答え」だと思って、会議に参加する人が思考をやめてしまいます。

なので、矢口巨災対事務局長は、会議の雰囲気を守ることや、効果的な質問をチームに投げかけることに集中しています。

マネージャーの力量は、どれだけ効果的な質問を投げかけられるか、とも言えます。

そういう意味で、もう一人、高いマネジメント能力を発揮しているのが「森厚生労働省医政局研究開発振興課長」です。

森「という事だ。まあ便宜上私が仕切るがー」→マネージャーは役割でしかないことの提示 & 謙虚

シン・ゴジラ

森「そもそも出世に無縁な霞ヶ関のはぐれ者、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、学会の異端児、そういった人間の集まりだ。気にせず好きにやってくれ」→愛嬌&フラットに正面からディスカッション出来る雰囲気の情勢

シン・ゴジラ

森「森で推定された基本スペックは、これだ。各省で確認してくれ。
竹尾「これだけですか?」
森「それだけだ。その先を調べるのが我々の仕事だ。」→当事者意識の高さ
森「他に何か基礎情報があれば共有しておきたい。」→正面からの情報の共有を奨励

シン・ゴジラ

間「確認された形状を簡単に整理してみた。第1形態、第2形態、そして第3形態だ。今後も変態を遂げると思われる」
志村「まだ次があるのか。」
安田「あと先日採取した体液のサンプルは、うちの理研で分析中です。」
尾頭「サンプルがあるなら、うちにも回してください。外郭施設に手伝わせます。」
安田「それが残りのサンプルは全部米国が持ってっちゃいました。」
袖原「現場の残液は腐敗臭がひどいという名目で、全て焼却処分されたそうだ。」
小松原「ああ、それ。裏で米国の圧力があったらしいよ。」
尾頭「分かりました。分析は理研に任せます。」
森「他、行動生物学的にも何かないか?→別視点での質問問いかけ
安田「行動パターンと云っても奴はただ移動してるだけです。なので思考も特定できません。」
間「知能レベルは不明だが我々とのコミュニケーションは無理だろうな。」
立川「素朴な疑問なんだが、あれのエネルギー源は何なんだ?」
安田「確かに身体の活動だけではなく、基礎代謝だけでも、かなりのエネルギー量が必要です。消化器官による酸素変換では消費量や動作効率が説明できませんね。」
尾頭「あれだけのエネルギー、、、まさか核分裂?」

シン・ゴジラ

森「しかし米国の情報供与等があったものの、ここに来てあれだな。色々と、手詰まりになってきた感があるな。」→率直な現状認式
安田「ですね。理研の報告はインパクトありましたからね。まさかゴジラに、人類の8倍もの遺伝子情報があるとは。」
根岸「シークエンスの作業だけで何年かかるか分からない情報量ですよ。」
尾頭「これでゴジラがこの星で最も進化した生物だという事実が確定しました。」
間「ゴジラは世代交代ではなく、一個体のまま劇的な進化を続けている。まさに人知を超えた完全生物だ。」
袖原「とはいえゴジラは生き物だ。ならば必ず倒せる。」
間「だといいんだが。」
森「それを探るのも、我々巨災対の仕事だ。→当事者意識の高さ、醸成
森「体内情報だけでなく、行動にも何かヒントはないか?→別視点での質問問いかけ
安田「とはいえ、歩くだけですよ。」
立川「そういえば先の上陸時、なぜ急に東京湾に戻ったんだ?」
間「そうか。冷えてないんだ・・・ゴジラは恐らく体内に原子炉のようなシステムを有していて、背びれなどから常時放熱をしている。だが、それは余熱調整の補助で、メーンは血液流を冷却機能としてる可能性が非常に高い!」
安田「だから最初の形状変態時は体温調整がまだうまく働かず、一時的に退化し海中に戻ったと推測できます。」
根岸「そこから考えられる唯一の対処方法が、体内冷却システムの強制停止です。」
尾頭「停止されるとゴジラは生命維持のため、自ら反応炉をスクラム状態にせざるを得ないと思われます。その過程で急速な冷却を必要とするので、死に至るかは不明ですがら少なくとも活動の凍結は可能です。」
・・・・
森「これを矢口プランとして、総理への提案をお願いします。」→愛嬌力高い
矢口「わかった。名前はともかく、進めてくれ。」

シン・ゴジラ

よく誤解されてますが、心理的安全性はぬるま湯ではありません。人格否定や個人攻撃無しに、課題解決に向けて、事実や解決方法の仮説をとことん議論出来るチームの雰囲気のことを言うのだと思います。

心理的安全性は、無能だと思われる恐怖からの脱却、耳の痛い仮説も含めてなんでも議論出来る風土と言えます。

   

4.心理的安全性を守れる素直さと組織の高速学習

実は巨災対の最初のシーンで、心理的安全性が脅かされるシーンがあります。

立川「素朴な疑問なんだが、あれのエネルギー源は何なんだ?」
安田「確かに、身体の活動だけではなく、基礎代謝だけでもかなりのエネルギー量が必要です。消化器官による酸素変換では消費量や動作効率が説明できませんね。」
尾頭「あれだけのエネルギー、、、まさか核分裂?」
安田「フッ、冗談ポイです尾頭さん。あり得ませんよ。

シン・ゴジラ

「フッ、冗談ポイです」とは、方言で「冗談はやめてくださいよ」という意味。

こういう誰かの仮説を馬鹿にする発言は、チームに「無能だと思われる恐怖」を生み出し、チームを無気力にしてしまいます。

しかしこの発言をした安田文部科学省研究振興局基礎研究振興課長は、その後、ちゃんと心理的安全性をリカバリーします。

根岸「上から止められてるので公表を差し控えていますが、都内各地の放射線モニター空間線量に軽微な上昇が認められます。」
矢口「どこから漏れていると考えられますか?原発ですか?」
根岸「いえ。全国全ての原子力施設での放射性物質のリークは確認されておりません。」
矢口「じゃあ、発生源は何なんだ・・・」
安田 パソコンカタカタ・・・・→データと自ら向き合う。
安田「ああっ!わああああっ!ああ……こんなんアリかよ!!」→事実に素直
安田 走り回る→愛嬌力高い
矢口「えっ?」
尾頭「このサーベイデータ、あの巨大不明生物の移動ルートと完全に一致しています。」
安田「見て下さい。ほら。」
矢口「尾頭さんの言うことが正しかったということか。」
安田「ごめんなさい(´·ω·`)」→事実にめっちゃ素直

シン・ゴジラ

この、安田文部科学省研究振興局基礎研究振興課長のめちゃくちゃ事実に素直で愛嬌のある「ごめんなさい(´·ω·`)」で、その後、巨災対は心理的安全性を取り戻し、高速学習を進めていきます。

データを元に、チームで仮説を検証していくのも、巨災対の強みです。だからこそ、組織で高速学習を回せます。
 

私は陰でコソコソ誰かの悪口を言ったり、問題に正面から向き合わない傷を舐め合う集団が好きではありません。

すぐ感情的になる人も好きでありません。

それは、その行為が心理的安全性を無くし、チームに無気力感をもたらし、いつまでも課題が解決されなくなるからです。

知性とEQ(感情指数)が高いプロが集まり、心理的安全性を守れる素直さと、組織の高速学習を回せるチームが理想です。
 

5.チームメンバーのことを考えながらも冷徹な決断ができ、それでも人が付いてくるリーダーシップ

巨災対を率いる矢口巨災対事務局長は、シン・ゴジラの主人公ですが、まさにベンチャーのリーダーにふさわしい人物です。

なぜなら、どの選択肢にも大きなデメリットがあるシーンで、決断を先延ばしせず、冷徹さを持って決断し、チームを前に進めていくからです。

現実の中では、どの選択肢にもデメリットがある場合があります。

そして、決断をしないと前に進めない。

弱いリーダーは「何もしない」ことを選びがちです。嫌われたくないからです。しかし、それではMissionを実現出来ません。

そのため、仲間に負担を強いることになり、誹謗中傷され、失敗した時には更に後ろ指を刺されることになろうが、前に進むために決断することが必要なこともあります。

冷徹さを持ち合わせて決断し、チームを前に進めていくことが必要なことがあるのです。

それでも人が付いてくるのは、それまで矢口巨災対事務局長が自分の為ではなくMissionのために全力を尽くし、メンバーのことを信頼して来たからです。

袖原「サンプル回収作業、完了です。」
尾頭「早速、筑波のBSL4対応施設に回します。」
矢口「分かった。残りのサンプルは官民を問わず、P3レベルに対応可能な研究所に送ってくれ。」
尾頭「しかし、国の最重要機密指定物です。ヤバいですよ。」
矢口「いいんだ。少しでも多角的なゴジラの情報が欲しい。」→デメリットがある中での決断

シン・ゴジラ

無線「目標、キルポイント1へ移動中。」
通信小隊長「第3波、全滅!根岸新たな汚染区域が拡大しています。」
丹波「副本部長。積線量が予定値を超えます。」
矢口「今止めたら、全てが無駄になります。このまま攻撃を続行してください。」→デメリットがある中での決断

シン・ゴジラ

志村「副本部長。今一度、前線部隊への同行は考え直していただけませんか。」
矢口「作戦には政治的な判断が必要な状況が予想される。即座にそれが出来る者が必要だ。」
泉「とはいえ、危険すぎる。為政者は後方指揮でいいだろ。10年後には総理じゃなかったのか。」
矢口「僕が10年後に総理になるより、10年先にもこの国を残す方が重要だ。この国には有能な若い人材が、官民に残っている。君もいるし、次のリーダーは問題ないよ。君のキャラには助けられた。礼を云う。」→自分のためではなくMission達成のためのチームへの貢献。献身性。

シン・ゴジラ

矢口「先の悲劇から生き残り、チームの半数以上の者たちがここにいる事を、感謝する。残念ながらここに来ることができなかった者たちの想いと共に、諸君には頑張ってほしい。欠員は随時、補填していく。家族や友人、同僚を失った悲しみが消えることはない。だがそれを乗り越えることはできる。今は国民の為、対策と凍結プランの完遂に力を注いでほしい。頼む。」

シン・ゴジラ

矢口「今回のヤシオリ作戦遂行に際し、放射線流の直撃や急性被曝の危険性があります。ここにいる者の生命の保証は出来ません。だが、どうか実行してほしい・・・!我が国の最大の力はこの現場にあり、自衛隊はこの国を守る力が与えられている、最後の砦です。日本の未来を、君たちに託します。」

シン・ゴジラ

本当に、理想のマネージャーです。


6.自律的で、何としてもやりきるチーム

巨災対がすごいのは、誰一人として指示待ちの人間がおらず、どんどん自分たちで仕事を前に進めていくことです。

そして、図々しいほどに、お互いの力を引き出し合います。

自分の仕事を丸投げするのではなく、一人一人のRole & Responsibilityを理解し、「協働」していくのです。

矢口「国連はすぐにでも核弾頭を使いたいだろうが、人道的配慮で都民の避難を優先するだろう。その間に凍結プランを確立させるしかない。」
森「ですね。ま、サンプル実験で適応可能な生成物は確定できましたが、量産はこれからです。」
安田「ゴジラの推定血液量から計算して、凝固剤は最低672キロリットル必要です。」
町田「全国でプラントの確保は進めているんだが……」
小松原「間に合いますか?」
矢口「必ず間に合わせるんだ!諦めず、最後までこの国を見捨てずにやろう。」
町田「全国の民間化学会社に、可能な限りの製造ラインを確保できるよう、審議官から次官にお願いします!」
安田「そちらの研究員に資料を渡しますから、明日中に生成過程の簡略案を出すように、局長から頼んで下さい。」
尾頭「サンプルをバラまいていたお陰で、各種照合が進みます。確かに、知恵は多い方がいいですね。」
津秋「血液凝固剤の現地輸送は、警察と国交省でロジを詰めておいてくれ。」
竹尾「それは僕がやるから。圧送業界への音頭取りを経済産業省でやってほしい。」
庭野「タンク車を最終的に政府で引き取ってくれるなら、上海の業者が3台提供してくれるそうです。」
町田「サイズは問わない。最低でもあと5台ホイールローダーの調達を頼む。」
・・・
森「しかし、そんな細胞膜を持っていたら、血液凝固促進剤も体内で無力化される可能性が高い。矢口プランが成り立たんぞ。」
竹尾「有り得る話だ。で、どうする?」
尾頭「他に代案はありません。矢口プランの確度を上げるだけです。」
森「まずはこの分子構造を解析して、回避手段を考えるしかないな。解析の準備は?」
安田「ウチの主導で、日本中のスパコンを並列化して解析する予定でいますが、それでも結果が出るまで何日かかるか。」
志村「核が落とされるまで、あと10日しかないのに。」
安田「なので、コネの多い局長代理から世界中に声かけてもらっています。」

シン・ゴジラ

自律的で、何としてもやりきるチームと言えます。

 

シン・ゴジラが好きすぎて、かなり長文になってしまいました。

Housmartも、巨災対のようなチームでありたいと思っています。

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