イタリアの成人教育機関「CPIA」訪問(2018年)
イタリアの学習社会に興味を持ったきっかけはこの本だった。
ただ、この本は2010年刊行で、その後の動向が気になっていたので、外務省や在日イタリア大使館を通じて連絡を取り、イタリア視察を計画した。
イタリアはEU圏でも移民の多い国で、特に南部には沢山の人がアプローチしてくる。中には言葉がわからない者も多く、その人達は就労に苦労することになる。そこでCPIA(チーピーイーアー、Centro Provinciale per l’Istruzione degli Adulti )では、イタリアはほぼ国費(教科書代だけ受講生が負担)で、義務教育(高校生程度)までの成人教育を、それを受けられてこなかった人々に提供している。
CPIAは、教育・大学・研究省によって設立された州立学校である。この学校は、イタリア人および外国人市民に成人教育サービスおよび活動を提供しており、すべての市民の個人的、文化的、社会的、経済的成長を促進する要素と考えられている。
その中でもボローニャ州は特に成功している州として挙げられる。イタリアにおける教育課題は、南北問題と言われる。北部の教育課題と南部の教育課題は異なっている。南部の方が教育問題、移民問題、貧困問題が深刻だ。
ボローニャのあるエミリア=ロマーニャ州は世界最古の大学があるだけあって、教育・文化・福祉に意識の高い州である。まずは、2018年3月、在ミラノ領事館のご協力のもと、ボーローニャ州のCPIAで、マネージャーのEmilio Porcaro氏に話を聞いた。
CPIAでは、教員免許を持つ者が派遣されてくるので、特別成人教育の専門家が働いているわけではない。16歳以上であればイタリア人でも外国人でも通うことができる(外国籍の場合は滞在許可証を持っていることが条件となる)。受講希望者は教員と1対1で面談をし、受講カリキュラムを決めることとなる。言語(イタリア語)を教える授業の中で歴史や文化をきっちり中心に据えて移民の方にも教えておられたのは印象的だった。
CPIAは、2018年訪問時で3年ほど前から全州化したと聴いたので、2015年頃から全州の法整備が始まったと考えられる。
ボローニャを後にし、ローマ教育庁(日本の文部科学省のようなもの)Ufficio VI Dipartimento per il sistema educativo di istruzione e formazione Direzione Generale per gli ordinamenti scolastici e la valutazione del sistema nazionale d’istruzione(成人教育の部署)に訪問し、Emilio Porcaro博士にお会いした。CPIAは全州実施の前にテストケースとして数州で先行実施し評価を行ったとローマ教育庁の方はおっしゃっていた。法整備の文書の中で、就労・職業のための教育、ということの他に、人間としてあるべきための教養を学ぶ、文化芸術を学ぶというようなことが触れられていた。これは、非常に興味深く思ったことの1つである。
CPIA全州での情報共有と、全国的な教育評価は今後の課題ということで、今は州単位で活動がなされているとのことだった。
特に教育がうまく言っているというヴェローナ(イタリア北部)とシチリア(イタリア南部)のCPIAを2019年春に訪問することになる。この件は別の記事に記載することにする。