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【小説】今の気持ちは、

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ごく普通の一般家庭に生まれたりなは不思議な感情を持っていた。泣きたいときに笑い、笑いたいときに泣いている。感情は思うようにコントロールすることはできるのか #1〜
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#オリジナル小説

【小説】 今の気持ちは、 #7

【小説】 今の気持ちは、 #7

ー6月ー

りなは志望校に合格し、入学した。

親しい友達もできた。入学から気の合う女友達4人グループで、悪目立ちするわけでもなく勉強もほどほどに高校生活を楽しんでいた。放課後は4人で買い物やファミレスに行ったり、カラオケなど楽しんだ。

そして家に帰るとりなは1人噛みしめるかのように泣いていた。みんなといることが本当に楽しかった。でもりなはみんなとその瞬間を楽しんではいない、楽しいを演じていた。

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【小説】今の気持ちは、 #6

【小説】今の気持ちは、 #6

病室のベットに運ばれたさとみは2時間後ゆっくりと目を覚ました。

病室の先生は日々の疲れが溜まり身体に無理がかかっていていたと説明された。

よかった、

りなは少しだけ安心したがすぐに考えた。さとみが日頃から自分のことを気にかけていたことはわかっていた。今まで私に対する不安や心配で倒れてしまったのではないかと思い、りなは自分のせいだと思っていた。

少し遅れて仕事を早退してきたこういちが

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【小説】今の気持ちは、 #5

【小説】今の気持ちは、 #5

りなは中学生になり、学校に通うようになった。入学当時は不安だった。小学校をまともに行ってなかった自分が急に学校にきて、どんな目でみられるのか、勉強についていけるだろう。何か言われたりしないだろうか、もしかしたらいじめられるんじゃないかと不安にだった。

しかしいざ学校が始まるとほとんど問題なくスムーズに学校に馴染めた。

りなは絵が好きだったこともあり美術部に入った。運動部のようにチームで頑張ると

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【小説】今の気持ちは、 #4

【小説】今の気持ちは、 #4

りなは6年生になった。身体は大きく成長した。顔つきがだいぶはっきりし目元は母親のさとみにそっくりに。背も大きくなり6年生の平均身長よりも高く、胸元が多少膨らんで普通の女の子と同じように成長していった。

もちろん身体だけではなく心も大きく成長していった。そしてりなは自分が人とは違う感情を持っていることに6年生になるころには気づいていた。みんなと同じように楽しんだり泣いたりすることを、同じ気持ちであ

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【小説】今の気持ちは、 #3

【小説】今の気持ちは、 #3

りなは小学生になり、少しずつ物心がついてきた。周りの友達と同じように学校で過ごしていたがだんだんと自分が人と違うということに気がづいてきた。

同じクラスの子がりなを泣き虫扱いしだした。

学校の先生たちはりなの事情を把握しているがそれを生徒たち理解しているが全員に理解されるのはなかなか難しい。男の子はりなをからかっていた。
ある日の休み時間、りなが泣きながら走る姿をみて

また泣き虫りなが泣

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【小説】 今の気持ちは、 #2

【小説】 今の気持ちは、 #2

3年後

りなが生まれて3年が過ぎ、保育園に通っていた

3年が経ち、保育園に通い同じ園児と一緒に過ごしているがりなの不思議な感情は続いていた。

あれから病院を何件も行ったが、これといった原因、治療法は見つかっていない。時間が経てばある程度良くなるとどの医者も同じようなことを言っていた。さとみはその言葉を疑心暗鬼だったが無理やり信じた。遊んでいるときは泣きながら遊んでいて、転んだときは楽しそうな

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[小説]今の気持ちは、 #1

[小説]今の気持ちは、 #1

「クエへへへッ クエへへへッ」

3月6日 ある病院の一室から赤ん坊の笑い声が響いた。

高い笑い声が室内に響いた。笑っているのは先生が両手で大事に持ち上げた小さな小さな赤ちゃんだ。母親のさとみは命かげてできてくれたことよりも笑っていることにびっくりして一瞬時が止まったように感じた。視界がボーッとしていたがなんとなく先生たちも驚いた表情がみえた。さとみは直感的に何か赤ちゃんに問題があるのかもしれな

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