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[小説]今の気持ちは、 #1

「クエへへへッ クエへへへッ」

3月6日 ある病院の一室から赤ん坊の笑い声が響いた。

高い笑い声が室内に響いた。笑っているのは先生が両手で大事に持ち上げた小さな小さな赤ちゃんだ。母親のさとみは命かげてできてくれたことよりも笑っていることにびっくりして一瞬時が止まったように感じた。視界がボーッとしていたがなんとなく先生たちも驚いた表情がみえた。さとみは直感的に何か赤ちゃんに問題があるのかもしれないと感じた。さとみの一時の安心は不安へと変化していった。十月十日大事に大事にこの日を待ちわびてようやく新しい命を授かった。定期的に検診に行き、母子共に健康な状態だった。何も思い当たる節はない。

先生うちの子大丈夫でしょうか?

先生たちの様子からしてさとみは思ったことをすぐに言った

検査では何も問題なかったですし少し様子をみてみましょう

これといった異常は発見されなかった。ただ、笑っている。時々不吉に思うくらい笑っている。

2週間後、さとみは退院した。さとみは子どもが心配だったが病院の先生が大丈夫大丈夫と強く念を押すように言っていたことで帰宅を決意した。そして手に抱えスヤスヤと眠っている姿を見て少しだけ安心できた。

りなはよく笑う子だね。でもなんかへん、、まだ泣いてないなんて、、

家に帰ってきてからも不自然なタイミングで泣いている。他のママ友に相談をしたいけれど変な噂になることを恐れて誰にも言えずにいた。

それから2ヶ月が経ち、りなにおっぱいをあげているとだんだんと泣き出した。しかしりなはおっぱいを飲むのをやめない。泣きながら飲んでいる。

え、!?どーしたの!?

さとみはりなが泣かないことが常に気がかりだったがまさか今このタイミングで泣いてることに驚いた。いつものようにおっぱいをあげているときに泣いているのがなぜだかわからない。なぜ今なのか、そしてなぜ泣きわめいたりはせずおっぱいを飲み続けているのか。さとみは今までのりなの行動、出来事から考えていった。

よく笑っているけどいつも不自然なタイミングだった。オムツを替えるタイミングや、夜中、 お腹が空いているとき、、、普通の赤ちゃんなら泣いているところでりなはずっと笑っていた。でも今はおっぱいをあげているときに泣いてる、、

そのときさとみの考えていることが整理され、ハッと気づいた。

もしかしてりなは泣きたい感情のときは笑って、笑いたい感情のときは泣いてるのかもしれない、、

このことに気づいたさとみはその日に病院と夫のこういちに連絡した。

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