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南ドイツ一人旅⑤お城に臨むハイキング
今回の旅の最大の目的は、ホーエンツォレルン城。
お城見学だけではなく、このお城周辺をハイキングする事も目的の一つだ。
この辺りにはたくさんのハイキングルートがあり、選ぶだけでワクワクする。
調べていくうちに、私が見たいと思っていた景色は、Zeller Hornという山からの眺めだと分かった。
お城の周りをぐるりと一周するハイキングルートはとても魅力的だが、それではお城見学の時間が足りない。
是非お城見学もしたいので、ルート作りはなかなか難しかった。
そして、お城見学の前にハイキングすべきか、それとも後にすべきか。
迷った末、ハイキングをしてからお城見学をする事にした。
だんだんお城に近づいているという高揚感も良いし、朝のハイキングのほうが断然気持ちが良い。
選んだのは、Onstmettingenからスタートしお城までのルート。
最近はハイキングの際に、Komootというアプリを使っている。
ほぼYamapと同じ仕組みで、たくさんのルートが登録されていて、情報盛り沢山だ。
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スタート地点は、既に標高800m。
ここからお城まで約9km、標高差は±300mほど、難易度中級のルートを設定した。
予定時間は、休憩も含め約3時間。
まずは住宅街からスタート。
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すぐにハイキングルートに入る。
見渡す限り、どこにも誰もいない。
この景色を独り占めなんて、なんと贅沢な事だろう!
青空と野原の緑、リュウキンカの黄色のコントラストが綺麗過ぎて、思わず写真を一枚。
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リュウキンカの花言葉は「必ず来る幸せ」。
幸せを運ぶ花に、思わず頬が緩む。
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少し歩くと、遠くに第一目標地点のRaichbergの塔が見えてきた。
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この地点は、この辺りで一番高く956m。
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塔は無人だが、1ユーロを払うと上まで登る事ができる。
ここは、辺りを見渡せる絶好の場所だ。
各方面の案内が記載されており、目的のお城までは、直線距離で3km。
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塔からは、お城の先端だけちょっぴり見えた。
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そして、お城に行くには少し遠回りになるが、ここから東に行くと、Albtrauf アルプの急斜面の特徴的な場所を見る事ができる。
それが、Hangender Stein 直訳すると、吊り岩。
今にも崖から落ちそうな位置にある巨石。
そして、遠くに見える真っ直ぐな稜線。
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この岩が、谷底に向かって飛び出す様に出ている場所。
パンフレット等には、この岩の端に人が立っている写真があったが、私は怖すぎて足がすくんでしまった。
あと1メートル程だが、とうとう端まで行く事はできなかった。
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ここからは、いよいよZeller Hornへ。
岩場が多く、切り立った岩の裂け目もある。
かなりの深さなので、ドキドキする。
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眺めの良い展望台には、ベンチも。
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途中、お城が見えるポイントが突然現れ、胸が躍る。
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iPhoneの望遠でも、この解析度。
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そしてようやく、Zeller Hornに到着。
ここは標高912mで、とても見晴らしが良い。
カルスト地形の典型的な奇石、巨石。
ここはかつて海の底だったと思うと、自然の中にいる自分、そして遥か昔からの時間の中にいる自分が、まるで砂の一粒のような気がしてくる。
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まるで、山の上にポンとお城を乗せたかのような様子は、まさに天空の城。
この景色を見たかったのだ!と興奮が止まらない。
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南ドイツには、黒い森と呼ばれる一帯があり、その広さはなんと6000㎢。
茨城県や大分県と、ほぼ同じ大きさの面積の森だ。
森はバーデン・ヴュルテンブルク州の、フランス国境沿いに広がっている。
黒い森。
緑ではなくて、黒?
私は最初にこの地名を知った時に、湧き上がる疑問を隠しきれなかった。
私が今こうして見渡している景色の先には、この黒い森が存在している。
そこはきっと、緑より更に深い緑。
まるで黒に近い緑が、山を覆っているのだろう。
この森で、ヘンゼルとグレーテルは迷子になり、お菓子の家を見つけるのだ。
そう、この森はグリム童話の舞台でもある。
日本へ一時帰国したばかりの友達から、お土産に頂いたキットカット。
友達と一緒にハイキングする気分で、リュックに詰め込んでいた。
この風景を届けたくなり、写真を一枚。
山の上から友達に、風景の写真とメッセージを送る。
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ここまでで、全行程の約3分の2を終えた事になる。
眺めの良いベンチで身体を休め、キットカットで力を付け、最後の行程に進む。
全体的にほぼ快適なルートだが、Zeller Hornからの急な下り道は、険しかった。
湧水が流れている道は、ぬかるんでいて何度も滑りそうになる。
崖に沿った細い道が、延々と続く。
気を抜くと、すぐにでも怪我をしてしまいそうだった。
一人ハイキングも好きだが、怪我は怖い。
しかも、辺りに人がいなかったので、怪我をしても助けを求めることができない。
写真を撮る余裕もない程、ハラハラして下り道を降り切った私だった。
怪我をしなければ、それで良い。
元気に戻って来れれば、それだけで良い。
筋肉の緊張という身体的な疲れ。
そして、足元に集中する精神的な疲れ。
日常生活にない負荷をかけ続ける。
ハラハラ、ドキドキする心の動き。
そして、景色の美しさを感じる喜び。
色々な事を考えながら歩き始めるが、ハイキングが終わる頃には、頭の中が空っぽになっている。
太陽と緑、新鮮な空気が、私を変えてくれるかのようだ。
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森を抜け、整備された道路に出る。
目の前に、ようやくお城が見えてきた。
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お城直下から見上げると、どーんとした迫力に圧倒される。
前日に見たリヒテンシュタイン城は女性らしいしなやかさがあるのに対し、ホーエンツォルレン城は、いかつい男性のイメージだ。
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こちらが最後の塔。
強固な造りで、お城を守っている。
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この二つ彫像の真ん中に見える細い塔は、Raichbergの塔。
あそこから山を下り、また登り、ここまで歩いてきたと思うと、自分を褒めてあげたくなる。
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Raichberg塔の近くには、Zeller Hornも見える。
望遠鏡で見渡すと、多くの人々を確認できた。
私も先ほどあのベンチに腰掛けて、キットカットを食べて休憩していたのだ。
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門を抜けると、大きな中庭に出る。
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お城の内部も、とても立派で豪華だった。
長くなってしまうので、内部の見学については別の記事にて。
ハイキングの最後は、いつも甘いものを食べる。
むしろ、甘いものを食べることまでをワンセットとして、ルートを組む事もある。
お城にはカフェとレストランがあるので、今回の最終目的地は、このカフェになった。
黒い森のさくらんぼケーキを食べたかったが、残念ながら売り切れだったので、代わりにラズベリーケーキを頂いた。
甘いものが欲しくて、すぐに食べてしまったので、手元にあるのは食べかけの写真だが、記念に残しておく。
程良く疲れた身体に、甘さと酸っぱさが沁み渡る。
この後のお城見学や帰路も含め、この日は18km程度歩いた。
距離はそれほどでなくても、あの険しい道を思い返すと、なかなか頑張った一日だ。
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ケーキを食べているうちに、私のハイキング目的地が一つ増えた。
私はまだ、黒い森でハイキングをした事がない。
未来の自分の姿を想像し、フッと笑った。
私はいつか黒い森の中を歩き、そして黒い森のさくらんぼケーキを頬張るのだろう。
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庭の紫陽花が、綺麗に咲き始めました。
紫陽花は、好きな花の一つです。
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