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ベートーヴェンを毎日聴く290(2020年10月16日)

『ベートーヴェン/「遠くからの歌」Woo137』を聴いた。

クリスチャン・ルートヴィヒ・ライシッヒの詩に作曲した歌曲。「遠くからの歌」というタイトルの意味は、遠距離恋愛中の男性が女性へ熱い思いを歌う。

曲中にいろいろな表情が現れ劇的に変化するのがこの作品の面白さ。4つあるスタンザそれぞれの男性の思いが、ベートーヴェンの音楽で生き生きと現れる。

最初のピアノ序奏は最初のスタンザ分のメロディを利用した結構長いもの。なかなか歌が出て来ないが、その軽やかで伸びやかなワルツのリズムは、まだそばにいた恋人との楽しいひと時を回想する。

憧れの涙をまだ流さなかった頃。まだ恋人が近くにいた。私の人生は花輪に囲まれナイチンゲールのいる木立のよう。

しかし、様子が変化する。切迫したような音楽は、何らかの理由で離ればなれになってしまい、現状における不満や苛立つ気持ちである。

今や私の憧れはあの笑顔を見たいということなのだ。私の視線が探しても見つからないのだ。

そして細かく音が刻まれるものに変化する。胸がドキドキするような音楽は徐々に高まっていく。強い思いが溢れる。

あなたが私のそばにいるかのように、私の胸はときめく。さあ、私の愛する人よ、ここにはあなたの青春がある。神が私に与えたすべてのものをあなたに与えよう。今までこんなに誰かを愛したことはないのだ。

そして、元のワルツへ戻るのだが、最初の軽やかで伸びやかというものからは少し変わっている。ピアノ伴奏は細かく音数も多くなるのは「私のお嫁さんになって早くここへ来てくれ」というプロポーズが告げられる。

愛する人よ、花嫁のダンスのために急いでここへ来て。私はバラやミルテの花輪を作った。さあ、私の小さな家を安らぎの神殿に変えてくれ。神殿ではあなたは女神なのだから。

ベートーヴェンは歌曲の人ではなく、その作品はあまりクローズアップされない。わたし自身もじっくり聴いた機会はないのだが、このようにキラリと光る作品があり、それを発見できたことはうれしい。


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